黒いアイツ
- 2023.10.15
- 映像系(10分~30分)
■概要
人数:2人
時間:5分
■ジャンル
アニメ・漫画原作、現代、コメディ
■キャスト
有汰(ありた) 15歳
奈津音(なつね) 19歳
■台本
〇有汰(ありた)の部屋
夏。エアコンがゴーっと動いている。
有汰がテレビに向かって、シューティングゲームをしている。
突然、バンとドアが開き、奈津音(なつね)が入って来る。
奈津音「有くん! 出た!」
有汰「うわああ!」
ビクッとして、ゲームオーバーになる。
奈津音「大変だよ!」
有汰「奈津姉ぇ。僕の心臓の方が今、たいへんなことになってるんだけど……」
奈津音「そんなことより聞いてよ」
有汰「……僕の心臓は、そんなことなんだ……」
奈津音「あれが出たんだよ!」
有汰「アレ?」
奈津音「黒いやつだよ!」
〇奈津音の家・リビング
怯える奈津音の横に立つ有汰。
リビングを見渡す有汰。
有汰「……いないじゃん」
奈津音「隠れてるに決まってるでしょ!」
有汰「わざわざ探すのも大変じゃない?」
奈津音「じゃあ、ずっと、アレが部屋の中にいるかもしれないって思いながら過ごせっていうの?」
有汰「自分の部屋に籠れば?」
奈津音「ずっとは無理でしょ! ご飯とかお風呂とかトイレとかどうするのさ!」
有汰「うーん……」
辺りをもう一度見渡すが、それらしきものは見えない。
有汰「……あれでも置けば?」
奈津音「あれって?」
有汰「あるでしょ。おびき寄せて倒すやつ」
奈津音「倒すやつ?」
有汰「買ってないの?」
奈津音「そんなの売ってるんだ? 無いから作った」
有汰「え? 作った? すごいね」
奈津音「簡単だよ。これ」
奈津音が柱に括りつけてあるものを指差す。
有汰「……なにこれ?」
奈津音「バナナにカルピスをかけたのを、ストッキングに入れたの」
有汰「……あれの中身って、そんなのなんだ? 始めて知った」
奈津音「まあ、私も、さっき調べて慌てて作ったんだけどね」
有汰「ふーん」
奈津音「本当は蜂蜜とかの方がよかったんだけど、うちにないからさ」
有汰「え? 蜂蜜でもいいんだ? 知らなかった」
奈津音「……蜂蜜は有名じゃない?」
有汰「そうかな?」
そのとき、カサカサと黒い物体が床を走り抜ける。
有汰「出た!」
奈津音「ぎゃあああああ! え? どこどこ!?」
有汰「ほら、あそこ!(指を指す)」
奈津音「(その方向を見る)……ん? いないじゃん」
有汰「いや、いるって、そこ!(もう一度指を指す)」
奈津音「ん?」
奈津音が履いてるスリッパの片方を脱いで、手に持つ。
そして、そっと近づき、バンとそれを叩き潰す。
奈津音「……ただのゴキブリだけど?」
有汰「へ?」
そのとき、黒い物体がゆっくりと飛んできて、先ほどのバナナが入ったストッキングに止まる。
奈津音「ぎゃあああああああ! 出た! 出た! それ!」
有汰「え?」
飛んできたのはカブトムシ。
有汰「あれ、ただのカブトムシだよ?」
奈津音「だから、最初から言ってるでしょ! 黒いあいつが出たって!」
有汰「……」
有汰が近づいて、カブトムシを手に取る。
奈津音「あんた、よく、手で持てるね」
有汰「……躊躇なく、ゴキブリを叩き潰せる奈津姉ぇの方が凄いと思うけど」
奈津音「と、とにかく、それ、外に捨ててきて」
有汰「……ゴキブリが平気で、カブトムシがダメなんだ? ……相変わらず奈津姉ぇは変わってるなぁ」
終わり。