たとえ辛い未来だとしても

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■概要
人数:4人
時間:10分

■ジャンル
アニメ、ドラマ、現代、シリアス

■キャスト
莉子(りこ)
拓海(たくみ)
さくら
占い師

■台本

〇公園・芝生

拓海を莉子が膝枕をしている。

莉子「ねえ、拓海くん……」

拓海「ん?」

莉子「もし、さ。人生をやり直せるとしたら、どこからやり直したい?」

拓海「なんだ、急に?」

莉子「ちょっとね……」

拓海「そうだなぁ。戻れるなら、昨日かな」

莉子「昨日? 随分と近いね。昨日、なんかあったの?」

拓海「……莉子のプリン、間違って食べちゃったんだよ」

莉子「えええー! ちょ、ちょっと! あのプリン、限定もので、なかなか買えないんだけど―!」

拓海「だ、だから、昨日の俺を止めたいなって」

莉子「バカバカバカー!」

拓海「ごめんって!」

莉子「もう、知らない!」

拓海「俺がまた、責任もって買ってくるから」

莉子「……絶対?」

拓海「絶対」

莉子「じゃあ、約束」

莉子が小指を出す。

拓海「ん」

拓海が莉子の小指に自分の小指を絡める。

拓海「でもな、莉子」

莉子「なに?」

拓海「俺の人生は、今のままで大満足なんだよ。だから、やり直しなんて、したくない」

莉子「へー。随分と、自信満々だね」

拓海「莉子に出会えただけで、満足なんだよ、俺の人生は」

莉子「……もう、バカ」

〇結婚式場・ドレス置き場

ウェディングドレスを選んでいる莉子。

シンプルなドレスを見て。

莉子「あー、これなんかいいかな」

そのとき、スマホが鳴る。

スマホをポケットから取り出し、画面を見ずに通話ボタンを押す。

莉子「拓海くん、遅いー!」

一気に莉子の表情が青くなる。

莉子「え? ……拓海くんが?」

〇病院・病室

ベッドに寝かされている拓海。

拓海の顔には白い布がかぶせられている。

その様子を見て、呆然と立ち尽くしている莉子。

さくらが莉子の横に立つ。

さくら「……くも膜下出血だって。なんか、一気に進行したとかって」

莉子「……」

莉子は呆然と立ち尽くすだけ。

〇莉子の部屋

ベッドの上で寝ている莉子。

顔には泣いた痕が残っている。

莉子「……」

目を覚ます莉子。

だが、また、ボロボロと涙が溢れ出してくる。

莉子「……拓海くん」

そのとき、チャイムが鳴る。

しかし、動こうとしない莉子。

ドアの向こうからさくらの声がする。

さくら「莉子? 入るからね」

ガチャガチャと鍵を開ける音と、ドアが開く音。

さくらが部屋に入って来る。

さくら「莉子……。あんた、ちゃんと食べてるの?」

莉子「……」

さくら「もう……」

〇同

テーブルの上にはおかゆが乗っている。

さくら「ゆっくり食べるのよ」

莉子「……」

しかし、莉子の手は動かない。

さくら「ねえ、莉子。あんた、もう3ヶ月もずっとこんな感じじゃない」

莉子「……」

さくら「辛いのはわかる。でもね、莉子がそんなんだと、拓海くん、心配で安心してあの世に行けないよ」

莉子「……行って欲しくない。幽霊でもいい。一緒にいて欲しいよ。また、会いたいよ……」

ポロポロと泣く莉子。

さくら「莉子……」

〇遊園地

さくらが莉子の手を引いて歩いている。

さくら「莉子、次、あれ乗ろ!」

莉子「うん……」

莉子がぎこちなくではあるが笑えるようになっている。

莉子「あっ……」

莉子がある方向を見て、立ち止まる。

さくら「どうしたの?」

莉子「あれ……」

莉子が指差した方向には、『過去への回廊』と書かれた占いの館のような建物がある。

さくら「ああ、あそこって、占いでしょ? 一時期、なんかで話題になったよね?」

莉子「うん。過去に戻れるとか、そういう噂があったんだよね」

さくら「過去に戻れるって……胡散臭い」

莉子「ねえ、あそこ、行ってみていい?」

さくら「……過去になんて戻れるわけないよ」

莉子「わかってる。でも……」

さくら「(ため息)莉子の気が済むなら、行ってみようか」

莉子「ありがとう」

〇過去への回廊・部屋

占い師の前のテーブルの上には水晶が置いてある。

占い師「次の方、どうぞ」

さくらの声「ほら、行っておいで」

莉子の声「うん……」

ドアを開けて莉子が入って来て、占い師の前に、向かい合うように座る。

占い師「……変えたい過去があるんですね?」

莉子「え?」

占い師「過去に戻れると行っても、ほんの数分です。しかも、戻るためには物凄い強い思いがないといけない」

莉子「……」

占い師「過去になんて行けるわけがない。それでも、すがりたいと思ったから、ここに来た。違いますか?」

莉子がポロポロと涙を流す。

莉子「……どうしても、やり直したいことがあるんです」

占い師「……わかりました。この水晶の上に手を掲げてください」

莉子「……」

言われた通り、水晶の上に手を掲げる莉子。

占い師「目を瞑って、戻りたい場所、時間を強く念じてください」

莉子が言う通りにする。

すると、光があふれ出す。

〇街中

道の真ん中で、ハッとする莉子。

莉子「え? あれ?」

莉子がキョロキョロする。

すると、莉子が目を見開いた後、物陰に隠れる。

莉子の視線の先には、中学生のときの莉子が歩いている。

莉子「中学生の時の私。……本当に、戻れたんだ」

中学生の莉子は、上機嫌でカバンを大きく振って歩いている。

カバンにはキャラクターのストラップがついていて、大きく揺れている。

莉子「……そう。あの後、カバンについてたストラップの紐が切れて、飛んで行ったんだ。それを拾った拓海くんと……出会った」

ストラップの紐が切れる。

莉子「このとき、拓海くんに出会わなかったら……こんなに辛い思いもしなかったんだ」

ストラップが地面に落ちる。

莉子「あれを拓海くんに、拾わせなければ……」

ストラップに迫る来る足。

そして、ストラップを拾い上げる手。

拾ったのは中学生の頃の拓海。

拓海「ねえ、ちょっと」

中学生の莉子「はい?」

中学生の莉子が振り返ると、拓海がストラップを渡してくる。

それを物陰から見ている莉子。

ボロボロと涙が溢れてくる。

莉子「拓海くんがいなくなって、凄く寂しかった。こんな思いをするくらいなら、最初から出会わなければよかった。……そう思ったけど」

中学生の莉子と拓海が楽しそうに話している。

莉子「楽しかった思い出も……なかったことにはしたくないよ」

手で顔を覆って、しゃがみ込む莉子。

手の隙間から涙が溢れ出してくる。

〇過去への回廊

ドアから莉子が出てくる。

椅子に座っていたさくらが立ち上がる。

さくら「どうだった?」

莉子はどこか、吹っ切れた顔をしている。

莉子「なにもなかったよ」

さくら「そっか……。まあ、そうだよね」

莉子とさくらが出口に向かって歩き出す。

出口から出ると、太陽の光が差し込んでくる。

莉子「でも……。前に進めそうな気がする」

さくら「……そっか」

歩き出す莉子。

莉子(N)「私はこれからも生きていく。拓海くんとの思い出を胸に」

終わり。

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