発想の裏側

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■概要
人数:3人
時間:10分

■ジャンル
アニメ、ドラマ、現代、シリアス

■キャスト
裕翔(ゆうと)
浩介(こうすけ)
記者

■台本

〇編集社・一室

裕翔がインタビューを受けている。

記者「高橋教授、今回の研究は世界でもかなり注目されているようですね」

裕翔「そうみたいですね。ただ、実用化にはもう少し時間がかかるとは思います」

記者「それにしても、雲の粒子を飛んでいる最中に取り込み、エネルギーにするなんてすごい発想ですよね。さすが、天才と言われる高橋教授ならではないでしょうか」

裕翔「……天才。確かに、私のことをそう言う人もいますが、私は天才なんかではないです」

記者「そうなんですか?」

裕翔「天才というのは、普通の人では考え付かない発想が出来る人だと思うんです」

記者「……それが今回の研究ではないんですか? エネルギーに雲を利用するなんて、誰も考えつかなかったのでは?」

裕翔「雲をエネルギーにする。確かに、天才の発想だと思います。ですが、私ではこの発想はできなかったんですよ」

記者「というと?」

裕翔「あれは中学の時の頃だったんですが……」

回想。

〇学校・教室

裕翔が中学1年生の頃。

休み時間。裕翔が机で勉強をしている。

そこに浩介がやってくる。

浩介「よお、高橋。宿題見せてくれ」

裕翔「……なんで?」

浩介「やってないから」

裕翔「俺が聞きたいのは、なんで、俺が見せないといけないのかってことなんだけど」

浩介「え? だって、宿題やってないと、怒られるじゃん」

裕翔「……俺はやってあるから怒られないけど」

浩介「だから、俺が怒られるだろ」

裕翔「……俺に関係ないじゃん」

浩平「ちょちょちょ。待って待って。え? 見せてくれないってことか?」

裕翔「見せるメリットがないからな」

浩平「メリットはあるぞ。俺に感謝される」

裕翔「別に感謝なんかいらないよ」

浩平「うーん……」

裕翔「なんだよ?」

浩平「お前は既に宿題をやってある。だろ?」

裕翔「ああ」

浩平「お前的には、俺に宿題を見せることになんのデメリットがあるんだ?」

裕翔「……」

浩平「ノーデメリットで、俺の感謝を得られる。お前にとって、プラスにならないか?」

裕翔「……屁理屈だな。っていいたいけど、面白い考えだ。いいよ、見せてあげるよ」

浩平「お、サンキュー」

裕翔が机の中からノートを出して浩平に渡す。

〇通学路(夕)

裕翔と浩平が並んで歩いている。

浩平「あ、裕翔。こっちこっち」

裕翔「なんで、名前で……まあ、いいや。それより、なんでそっちに行くんだ? 遠回りだろ」

浩平「ふっふっふ。それがそうでもないんだな。まあ、騙されたと思って、ついて来いよ」

裕翔「……」

〇路地裏

裕翔と浩平の前には高い段差がある。

(行き止まりになっている)

裕翔「……騙された」

浩平「いやいや。待て待て。いいか? ここを乗り越えれば、すげー近道になるだろ?」

裕翔「確かにそうだが、乗り越えれないなら意味ないだろ」

浩平「乗り越えられないならな」

浩平「はあああああ!」

助走を付けて壁を走る浩平。

だが、滑って落ちる。

裕翔「……」

浩平「なんだよ、その顔」

裕翔「結局、ダメじゃん」

浩平「諦めたらな」

浩平が立ちあがって、再びトライするが、やはり滑って落ちる。

浩平「まだまだ!」

〇同(夜)

辺りが暗くなっている。

浩平「はあ、はあ、はあ……。今日はもう限界」

裕翔「……あのさ、結局ダメだったし、近道にもならなかっただろ」

浩平「それが?」

裕翔「無駄な時間だったってことだよ。最初から、いつものルートを通ればいいだけだろ」

浩平「うーん」

裕翔「なんだよ?」

浩平「けどさ、上手くいったら近道になるってことだろ? 挑戦する意味はあるだろ」

裕翔「そうか? それに使う時間が無駄だろ」

浩平「できないことができることになるかもしれないんだぞ? 無駄なんてことはないだろ」

裕翔「どうせ、できないし、そこまでして近道を通る必要はないだろ」

浩平「けど、通れるようになったら、みんな、のためにならないか?」

裕翔「そのための労力を考えたら、費用対効果が悪すぎる」

浩平「……お前さ、将来科学者になりたいんだろ?」

裕翔「それがなんだよ?」

浩平「科学ってさ、人が不便に思ってるものを便利にするために、膨大な時間を使うもんじゃないのか?」

裕翔「……っ!」

〇路地裏(夕)

段差の壁を登り続けようとする浩平。

だが、失敗する。

それを見ている裕翔。

浩平「はあ、はあ、はあ……」

裕翔「やっぱり、その方法だとやるだけ無駄だ」

浩平「そんなの……わかんないだろ」

裕翔「仮に、お前が成功しても他の奴が越えられないなら意味がない」

浩平「ああ……。確かに」

裕翔「ってことで、これだ」

裕翔が棒を差し出す。

浩平「なんだ?」

裕翔「棒高跳びみたく使うんだ」

浩平「おお! なるほど」

浩平が棒を持って棒高跳びみたいに使うが、まったく棒がしならないので、失敗して転ぶ。

浩平「いってぇ」

裕翔「やっぱりダメか」

浩平「やっぱりってなんだよ、やっぱりって」

裕翔「失敗するとは思ったが、念のためだ」

浩平「お前な……」

裕翔「じゃあ、次は……」

〇路地裏(夕)

浩平が吸盤をついた手袋を履いている。

浩平「うおおおおお!」

壁の前でジャンプして、手袋の吸盤を壁に付ける。

しかし、手袋が脱げて、落下する浩平。

裕翔「ダメか……」

浩平「……これは俺でも、ダメって思ってた」

裕翔「だよな」

浩平「てかさ」

裕翔「ん?」

浩平「ちょっと待ってろ」

浩平が奥の方へ入っていく。

裕翔「……」

少しすると浩平がデカい板を持ってくる。

裕翔「……」

浩平「これを……こうしてっと」

浩平が板を段差の壁に立てかける。

そして、その板を伝って、壁を乗り越えることができる。

裕翔「……あ」

浩平「こうすりゃよかったんだよな」

裕翔「ぷっ!」

浩平「あはははは」

2人が笑う。

〇河原

裕翔と浩平が並んで座っている。

浩平「みんな、あの道を使うようになったな」

裕翔「ああ。にしてもさ」

浩平「ん?」

裕翔「お前って、頭がいいのか、悪いのかわからんやつだな」

浩平「俺はバカだよ。だってさ」

浩平が上を指差す。

裕翔がその指の先を見ると、飛行機が飛んでいて、飛行機雲が出来ている。

浩平「俺、飛行機雲って、雲で出来た飛行機だって思ってたんだよ」

裕翔「嘘だろ?」

浩平「マジマジ。しかも、つい最近まで」

浩平が苦笑いする。

だが、裕翔は真面目な顔をしている。

浩平「裕翔?」

裕翔「面白い発想だな」

浩平「へ?」

裕翔「雲で出来た飛行機か……」

浩平「おいおい。なに真面目に考えてるんだよ」

回想終わり。

〇編集社・一室

記者「え? ということは、中学生の頃の友人の発想からアイディアを得たと?」

裕翔「はい。実はそうなんです」

記者「はあ……。それはまた、凄いですね」

裕翔「私だけでは絶対に、出て来ない発想です。だから、今でも時々、彼に会って話すことにしてるんですよ」

そのとき、外から飛行機が通る音が聞こえる。

窓から外を見ると、飛行機雲を出しながら飛行機が飛んでいるのが見える。

終わり。

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