思い込みの危険

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■概要
人数:5人
時間:10分

■ジャンル
アニメ、ドラマ、現代、シリアス

■キャスト
美月(みづき)
悠斗(ゆうと)
男の子
警察官1~2

■台本

〇商店街

スーツ姿(私服警官)の悠斗(36)と美月(25)が店の人に聞き込みをしている。

美月が店主と話をし、その後ろで悠斗が欠伸をしている。

美月「ありがとうございました」

頭を下げて、店を出る美月。

頭をぼりぼりと掻きながら、面倒くさそうにしながら店を出る悠斗。

前を歩く悠斗に、小走りで着いてくる美月。

美月「……ちょっと、岩崎先輩、もっとまじめに聞き込みしてくださいよ」

悠斗「あん? お前がちゃんとやってんだからいいだろ」

美月「いや、岩崎先輩もちゃんと聞き込みしてくださいって言ってるんです」

悠斗「あのなぁ。どうせ、この辺から得られる情報なんて同じようなもんだろ。そんな証言、何個集めても意味ね―よ」

スーパーから真面目そうな男の子(14)が出てくる。

男の子は少し緊張した表情。

悠斗「……(男の子の方をじっと見て)」

美月「またそんなこと言って……。もしかしたら、有力な情報も得られるかもしれないじゃないですか」

悠斗「そう言って、もう、15件目だぞ」

美月「とにかく、この辺で聞き込みしろって命令なんですから、ちゃんとやってくださいよ」

男の子がその話を聞いて、ビクッとする。

そして、小走りで行こうとするのを、後ろの襟を掴んで阻止する悠斗。

男の子「わわっ!」

美月「岩崎さん……?」

悠斗「(男の子に)俺たち、刑事なんだけど、ちょっといいか?」

男の子「……(青ざめた表情をする)」

悠斗「お前、万引きしただろ?」

美月「そ、そんなわけないじゃないですか。こんな真面目そうな子が」

悠斗「お前は黙ってろ。(男の子に)自分から出すか? それとも、俺に調べられたいか? どっちだ?」

男の子「……」

男の子が黙って、ポケットからお菓子数点を出す。

美月「……え?」

悠斗「よし、ちょっと、あっちで話そうか。お前は聞き込み続けてろ」

美月「ちょ、ちょっと、岩崎先輩!」

悠斗が男の子を連れて行ってしまう。

美月「……」

〇牛丼屋

牛丼をがっつく悠斗の横で、手を付けない美月。

悠斗「どうした? 食欲ないのか?」

美月「あんな真面目そうな子なのに、どうして万引きなんか……」

悠斗「あのなあ。真面目そうだとか、こいつは犯罪なんかおかしそうにないとか、そういう思い込みは危険だ」

美月「思い込みは危険……ですか?」

悠斗「なんにでも疑ってかかれ。それが刑事の仕事だ」

美月「人間不信になりそうです」

悠斗「なら、交番勤務に戻るんだな」

悠斗が再び、牛丼をがっつく。

〇街の外れ

町の地図を見ながら歩いている悠斗。

その横を歩く美月。

悠斗が見ている地図には数か所、丸がされている。

悠斗「……次は、ここへんだと思うんだけどな」

美月「……岩崎先輩。また、指示と違うことして、また減俸になりますよ」

悠斗「そのときは、金貸してくれ」

美月「貸しているお金を返してくれたら考えます」

悠斗「なら、いい」

美月「返してくださいよ!」

ピタリと立ち止まり、廃ビルを見上げる。

そして、その廃ビルの中に入っていく悠斗。

美月「ちょっと、岩崎先輩!」

美月も慌ててビル内に入る。

〇廃ビル

全ての物は撤去されている。

美月「なにもないですね」

悠斗「ここは滅多に人も通らない」

美月「まあ、町の外れですから」

悠斗「だから、何かしやすい」

美月「まさか……ここに爆弾が?」

悠斗「ま、可能性の話だ」

悠斗が部屋の奥に行く。

美月「あ、あんまり一人で先に進まないでくださ……」

急に悠斗が立ち止まり、その背中にぶつかる美月。

美月「急に止まらないでください」

悠斗「伏せろ!」

美月「え?」

悠斗に抱きかかえられて、押し倒される美月。

同時に、爆発音が響き、目の前が真っ白になる。

〇病院

ベッドの上で寝ている悠斗。

頭や腕には包帯が巻かれている。

そんな悠斗の姿を見下ろしている美月。

美月の方はほぼ無傷。

目を開く悠斗。

美月「岩崎先輩!」

悠斗「おう。おはよう」

美月「もう! 心配させないでください」

悠斗「それより、俺、何日寝てた?」

美月「2日です」

悠斗「……お前に、すぐに向かってもらいたいところがある」

〇街中

汗だくになって辺りを見渡しながら走っている美月。

回想。

〇病室

ベッドの上に上半身だけ起こしている悠斗。

そのひざ元には地図が広げられている。

悠斗「今までのやつの犯行はテストみたいなものだ。それを、2日おきにやってた。で、次が本番だ。おそらく、次はここだ」

悠斗がある場所を指を指す。

回想終わり。

〇街中

尚も、辺りを見渡しながら、不審物がないかを調べる美月。

そこに警察官数名が駆け寄ってくる。

警察官1「この辺りを調べましたが、何もありませんでした」

警察官2「自分も、見て回ったんですが……」

美月「……そうですか」

警察官1「やっぱり、取り越し苦労だったんじゃ」

警察官2「自分もそう思います」

美月「すみません。もう一回、お願いできますか? きっと、不審物があるはずなんです……」

そう、美月が言った時、美月があるものを見つける。

それは『危険物ではありません』と書かれた箱だった。

近づく美月。

警察官1と2も一緒についてくる。

そして、箱の前に立つ3人。

警察官1「危険物じゃないって書いてますけど?」

警察官2「なにか、作業用の箱じゃないですか?」

美月「……」

回想

悠斗「なんにでも疑ってかかれ。それが刑事の仕事だ」

回想終わり。

美月が屈んで箱を開ける。

すると中には爆弾があった。

美月「っ! すぐに、周りの人を遠ざけてください!」

警察官2「は、はい!」

美月もスマホを取り出して電話を掛け始める。

美月「あ、本部ですか? 爆弾、見つけました!」

〇街中

街中で聞き込みをしている美月と悠斗。

悠斗はまだところどころ、包帯を巻いている。

美月「ありがとうございました」

美月が頭を下げる。

悠斗は相変わらず、面倒くさそうに美月の後ろに立っているだけ。

美月「……岩崎先輩も手伝ってくださいよ」

悠斗「まだ、身体が本調子じゃねーんだよ」

美月「また言い訳して」

悠斗「にしても、今回は大手柄だったな。おかげで誰一人、けが人を出さなかった」

美月「岩崎先輩のおかげですよ」

悠斗「お前も、人を疑うことを覚えたか」

美月「ちょっと、人聞きの割ることを言わないでくださいよ」

すると、目の前で人のよさそうなおばあさんがヨタヨタと歩いて、女性にぶつかる。

おばあさん「ああ、ごめんなさいね」

女性「いえ、大丈夫でしたか?」

悠斗「(その様子を見ている)」

おばあさん「大丈夫です。ありがとうね」

おばあさんがぺこりと頭を下げて歩き出す。

美月「だいたい、先輩は……」

悠斗が歩き出し、おばあさんに声をかける。

悠斗「おばあちゃん、ちょっといいかな?」

おばあさん「はい?」

美月も駆け寄ってくる。

美月「岩崎先輩、どうしたんですか?」

悠斗「おばあちゃん、さっき、あの女の人から取った財布出して」

美月「いや、こんなか弱いおばあさんが、スリなんて……」

おばあさんがおずおずと財布を出す。

美月「……え?」

悠斗「(美月に)まだまだだな」

美月「……人間不信になりそう」

終わり。

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