みんなと差を付けろ

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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
美織(みおり) 17歳
明日佳(あすか) 17歳
若葉(わかば) 17歳
成美(なるみ) 17歳
母親 45歳
吉村(よしむら) 17歳
城之内(じょうのうち) 17歳

■台本

美織(N)「世の中は弱肉強食。誰かに気を使ってたら、女の子はすぐに埋もれてしまう。かといって、グイグイと前に出るとみんなからやっかまれて、叩かれる。だから、前に出るときもそこはかとなく、自然に、最大限の注意を払ってやる必要があるのだ」

場面転換。
通学路。
美織、明日佳、成美、若葉が歩いている。

明日佳「いやあ、明日から夏休みって、テンション上がるよねー」
成美「終業式の日が、一番ワクワクする」
若葉「あはは。ある意味、夏休み中より、嬉しいよね」
美織「ねえ、みんなは夏休みは何か予定とかあるの?」
明日佳「うーん。特にないかなー」
成美「ダラダラして過ごしそうかも」
若葉「だよねー」

美織(N)「実はここでも戦いは始まっている。ダラダラするといいながらも、夏休みデビューする子もいるのだ。自然なイメチェンで、夏休み明けに男子の視線を総取りする、なんて珍しくもない」

美織「それならさー、4人で集まって遊ばない? ダラダラして終わっちゃうと勿体なくない?」
若葉「え?」
明日佳「いいねー。遊ぼ、遊ぼ」
成美「お金ないから、お金かからないのがいいなぁ」

美織(N)「おっと、やっぱり、一人、抜け駆けしようとしてたのがいた。遊ぼうって言ったら、若葉が言いよどんだ。イメチェンする気満々だったな。でも、途中で遊ぶってなったら、そのときにバレてしまう。そうなったら、確実に突っ込まれる。あくまで夏休み明けの日までバレないのが肝なのだ」

若葉「あー、そうだねー。海とか行っちゃう?」
美織「いいねー、海。水着持ってたかなー?」
明日佳「そういえばさー、夏祭りなかったっけ?」
成美「あるある。お盆のときに毎年やってるよね」
明日佳「夏祭りに行きたいなー」
成美「祭り、楽しいよね。みんなでワイワイしてさ」
美織「うんうん。あのにぎやかな感じがいいんだよね」
成美「あ、そうだ。男子も呼んじゃう?」
明日佳・若葉・美織「……っ!?」

美織(N)「成美が仕掛けてきた。まさか、ここで男子を呼ぶとか……。女子だけなのと、男子を呼ぶのとでは、全く違うものになる」

若葉「あー、私、吉村くんとかなら呼べるよ」
明日佳「そ、そうなんだ? ……私、城之内くんに声かけてみようかな」
若葉・成美・美織「……っ!?」

美織(N)「明日佳も勝負をかけてきた。まさか、クラス一番の人気者の城之内くんを呼ぶなんて。これはもう、ガチバトルということだ。祭りを楽しむなんて言ってられない。こうなったら、私もしかけるか」

美織「夏祭りっていったら、浴衣だよね。みんなで着ない?」
明日佳・若葉・成美「……っ!?」

美織(N)「これで私服を勝負から外す。私服勝負だと、センスがいい明日佳に総取りされる。だけど、浴衣なら、そこまで差は出せない。あとは普段とのギャップをどれだけ出せるか勝負だ」

若葉「浴衣かー。いいね。確か、家にあったと思う」
成美「うんうん。祭りなら浴衣だよねー」
明日佳「そ、そう……よね。じゃあ、みんなで浴衣にしようか」
美織「男子も一緒のお祭りかー。楽しみだね」

美織(N)「アドバンテージが消えた明日佳が、城之内くんを誘わないという手もあり得る。ここはダメ押しで、プレッシャーをかけておく」

明日佳「ああー、うん。絶対に誘って見せるから期待してて」
若葉「じゃあ、次に会うのはお祭りだね」

美織(N)「うん。いい流れだ。明日から、祭りまでなんとかイメチェンを頑張る。もし、その間に集まるなんて言われたら、台無しだ」

美織「じゃあ、みんな。お祭りでねー!」
明日佳「うん、バイバイ」
成美「それじゃねー」
若葉「気を付けてねー」

歩いていく美織。

美織「……よし、やるぞ」

場面転換。
家の押し入れをガサガサと漁っている美織。

母親「美織、なにやってるの?」
美織「あ、お母さん、あれ、どこ行ったっけ?」
母親「あれ?」
美織「お姉ちゃんが成人式に着てたやつ」
母親「え? どうするの、そんなの?」
美織「ふふふ。あれで勝負をかけるの」
母親「……ふーん」

場面転換。
着付けをしている美織。
母親が手伝っている。

美織「お母さん、早く早く。祭りの集合時間に遅れちゃうよ」
母親「……美織、ホントに着てくの?」
美織「当たり前だよ。これで、みんなと差をつけるんだから」
母親「……まあ、いいけど。後悔しても知らないわよ」
美織「絶対、後悔なんてしないよー」

場面転換。
祭り会場。

城之内「明日佳、浴衣いいじゃん」
明日佳「えー、そう? 城之内くんにそう言って貰えると嬉しいなー」
吉村「若葉も似合ってると思うぞ」
若葉「えへへ。ありがとー」
成美「それにしても、美織、遅いなー」

美織が走ってくる。

美織「ごめーん! お待たせー」
若葉「あ、来た来た、美織……」
明日佳「……え?」
成美「うそ……でしょ」
美織「着るのにちょっと時間かかっちゃった」
吉村「……すごい、気合張ってるな」
城之内「いや、スゲー、ビックリした」
明日佳「いやぁ、美織、ちょっと……やりすぎじゃない?」
美織「それがさー、浴衣、破れてて……。これしかなかったんだよ」
若葉「そ、そうなんだ……」

美織(N)「ふふふふ。みんな、度肝抜かれてるみたいね。作戦大成功! どう見ても、私が一番目立ってる! これで、私の勝ちね」

明日佳「じゃあ、行こうか」
若葉「うん。私、綿アメ食べたーい」
吉村「俺、たこ焼き」

みんなが歩き出す。

城之内「型抜きとかあるかなー?」
明日佳「えー、マニアックだね」
城之内「いや、マジで楽しいんだって。やってみろよ」
明日佳「そう? じゃあ、チャレンジしてみようかな」

美織がみんなから遅れている。

成美「美織―? 早く来なよー」
美織「ちょ、ちょっと待って……。歩きづらくて……」
若葉「もう、着物なんて着てくるからだよー」
美織「いや、でも……」

美織(N)「まさか、こんなに動きずらいなんて……。お母さんが、後悔しても知らないって言ってた理由が分かった」

場面転換。

若葉「あはははは」
城之内「いやいや、それはないだろー!」
明日佳「もう、城之内くんが押すからだよー」
美織「はあ、はあ、はあ……」

美織(N)「しかも、着物は物凄く体力を消費する。祭りを楽しんでる場合じゃない」

みんなの笑い声が遠くなっていく。

美織(N)「結局、私はみんなと祭りを楽しむこともできず、祭りに着物を着てきたっていうちょっとした痛い子認定されてしまった。……どうやら、みんなに大きく差を付けられてしまったみたいだ」

終わり。

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