格好つけなあいつ

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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
穂乃果(ほのか) 17歳
上原 琉生(うえはら るい) 17歳
奈美(なみ) 17歳
不良1~3 17~19歳
男子生徒 17歳

■台本

穂乃果(N)「どこの学校にも……いや、どこのクラスにでも、一人はいる、格好つけの男子。もちろん、私のクラスにもいる。普通だったら、痛いなぁって思って笑って終わるんだけど……。それが幼馴染というのだから笑えない。上原琉生。それがクラス一番の格好つけ男子の名前だ」

休み時間の教室内。

琉生「でさ、俺は言ったわけよ。その子が困ってるだろって。……相手は3人だったかな? けどさ、相手の人数は関係ないだろ? だって、女の子が困ってるんだからさ」

穂乃果(N)「……琉生。やめなって。わざとらしく声を張り上げても、誰も聞いてないから。もし、聞いてたとしても、そんなウソ、鼻で笑われて終わりだから」

琉生「でもさー、俺、思うんだよ。女の子は顔じゃないって。心っていうの? 純粋だったら、それだけで好きになっちゃうよなー。プロポーションとか二の次だよ。俺はさ」

穂乃果(N)「あー、もう。聞いててこっちが恥ずかしくなるから。あんたたちが、この前、女の子の胸の大きさランキングを楽しそうに話して他の、女子のみんな、知ってるから」

琉生「俺ってさ、なんていうか頼りがいがあるのかな? その助けた女の子に、今度、相談に乗ってーとか言われちゃったよ。まあ、仕方ないから受けてあげるけどね。もちろん、下心なんてないし」

穂乃果(N)「……自分で言い出した時点で、ありありな感じだから。っていうか、それもウソでしょ。あー、もう。やだ。痛々しくて聞いてられない……」

場面転換。
グラウンドの脇を歩く女子たち。
その中に穂乃果と奈美がいる。

奈美「あー、疲れた」
穂乃果「体育の授業っていらないよねー。運動が好きな人だけ、部活でやればいいのに」
奈美「だよねー」
琉生「うおおおおおおおお!」

琉生がボールを蹴りながら全力疾走している。

奈美「あ、男子はサッカーなんだ?」
穂乃果「……」
男子生徒「おい、琉生! 女子が見てるからって、急に張り切るなって!」
琉生「ばっ! ちげーよ! って、うおおおお!」

琉生が派手に転ぶ。

奈美「あ、上原君、転んだ。いたそー」
穂乃果「……あの、馬鹿」

場面転換。
廊下を大量のプリントを持って歩いている穂乃果と奈美。

奈美「うう……。先生、なんで、こんなにプリント刷るかな」
穂乃果「……しかも、気軽に教室まで運んでおいて、だもんね」
奈美「腕が痛いー」

そこに琉生がやってくる。

琉生「プリント、重そうだな。持ってやるよ」
奈美「あ、上原くん」
琉生「ホントは用事があったんだけどさ、困ってる人がいたら、放っておけないだろ?」

穂乃果(N)「そういうのいらないから。どうせ用事があるっていうのもウソでしょ?」

琉生「ほら、貸せよ」
奈美「ありがと」
穂乃果「……私のは?」
琉生「……いや、持てねーし」
奈美「じゃあ、私が半分持ってあげるよ」
穂乃果「ありがとー!」

奈美と穂乃果が歩き出す。

奈美「でさー、今日の化学の授業で……」
琉生「……あれ? もう少し、俺のこと構ってくれない?」
穂乃果「……馬鹿」

場面転換。
街中。
穂乃果が歩いている。

穂乃果「ふふふふーん~」

ドンと人にぶつかる音。

穂乃果「あ、ごめんなさい」
不良1「いてえな」
穂乃果「いや、その、本当にごめんなさい」
不良2「謝って終わりってわけにはいかねーよな」
不良3「ちょっと、こっち来いや」
穂乃果「や、やめてください」
不良1「うるせーな! 大人しく来いよ!」
穂乃果「い、いや……」

そこに琉生が現れる。

琉生「嫌がってるじゃん。やめれば?」
不良1「ああ!? てめえには関係ねーだろうが」
琉生「女の子1人に3人って、恥ずかしくないのか?」
不良2「なんだ、てめえ! 喧嘩売ってんのか?」
琉生「違うって。あんたらが格好悪いって話をしてんの」
不良3「やっぱ、喧嘩売ってんじゃねーか!」

不良たちが殴り掛かってくる。

琉生「おっと! そっちがそうくるなら」

琉生が不良を殴る。

不良2「うがっ!」
不良1「なっ! てめえ、おら!」

場面転換。
不良たちが倒れている。

琉生「いてて」

穂乃果(N)「まさか、琉生が前に言ってたこと、ホントだったなんて……」

穂乃果「……あ、ありがと」
琉生「お前、気をつけろよ。俺が来なかったらどうするつもりだったんだ?」
穂乃果「ご、ごめん」
琉生「ふん」

琉生がスタスタと歩いていく。

穂乃果「ねえ、琉生」
琉生「ん?」
穂乃果「……いつもみたいに格好つけないの? 気にすんなよ、とか、大したことじゃないとか」
琉生「……お前に格好つけてもしゃーねーだろ」

また、スタスタと歩いていく琉生。

穂乃果(N)「ホント、琉生は馬鹿だ。普通にしていれば、格好つけなくても、格好いいのに。でも、それを知ってるのは私だけでいいかな。これからも、あいつには格好つけでいてもらいたい」

終わり。

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