眠れない

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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
綾斗(あやと) 17歳
花梨(かりん) 17歳
院長  53歳
直人(なおと) 5歳
男の子1~2 6~8歳
女の子1~2 6~8歳

■台本

大部屋の寝室。

綾斗「……」

男の子1「あはははは! 待て待てー」

男の子2「ちょっと、やめてよー!」

女の子1「なにやってんのよ! うるさいわよ!」

直人「うわーん!」

女の子2「うわ! 直人泣いちゃった! お兄ちゃん、ちょっと来てー」

綾斗「……はあ。眠れるわけねえ」

場面転換。

教室内。

学校のチャイムの音。

綾斗「……もう、限界だ」

そこに花梨がやってくる。

花梨「あれ? 綾斗、お昼ご飯は? もしかして忘れたとか?」

綾斗「いや、今日は飯よりも、少しでも寝たいんだ」

花梨「ふーん」

ガラガラと椅子を引きずってきて、座る音。

花梨「寝不足か何か?」

綾斗「ガキどもがうるさくて、眠れないんだよ」

花梨「そんなのいつものことじゃん」

パンの袋を開けて食べ始める花梨。

綾斗「最近、また一人入ってきてさ、そいつがうるさいのなんのって」

花梨「へー。また一人引き取ったの? あんたのところの孤児院もよくやるねー」

綾斗「ったく。院長は人が良すぎるんだっての」

花梨「そのうるさい子を別の部屋で寝かせれば? 大人しくなるんじゃない?」

綾斗「いや、うちは10歳以上の女以外は全員一緒の部屋って決まりがあるからな。一人だけ特別扱いすることはできん」

花梨「うーん。特別扱いっていうか、罰って感じなんだけどね」

綾斗「それに、そいつは事故で家族が亡くなったらしくてさ。しかも兄弟が多かったんだってよ」

花梨「……なるほど。で?」

綾斗「みんなといると、兄弟たちと一緒みたいで嬉しいんだってよ」

花梨「……綾斗も院長と変わらないんじゃない?」

綾斗「なんでだよ?」

花梨「人がいいっていうのかな。そんな感じ」

綾斗「けっ! 冗談じゃねー。注意するのが面倒なだけだっつーの」

花梨「それで、寝不足と?」

綾斗「ああ」

花梨「よく、授業中寝ないで頑張れるね。私なら速攻寝るけど」

綾斗「家じゃ落ち着いて勉強ができんからな。授業を聞き逃すわけにはいかんだろ」

花梨「へー。真面目なことで」

綾斗「赤点を取りたくねーだけだ」

花梨「そういえばさ、あんた、もうすぐ誕生日でしょ?」

綾斗「ん? あー、そうだったっけか」

花梨「あんたねぇ。自分の誕生日くらい覚えなさいよ」

綾斗「うるせーな。うちにはたくさんガキがいるから、覚えるの大変なんだよ」

花梨「だからって、自分のを後回しにしてどーすんのよ」

綾斗「……で? 俺の誕生日だからってどうしたんだ?」

花梨「なにか、プレゼントしてあげるわよ。顔馴染みとして」

綾斗「いらねーよ。俺にくれるくらいなら、来月誕生日の卓也の分に回してやれ」

花梨「……なんで、私が会ったこともない卓也って子の誕生日プレゼントを買わないとならないのよ」

綾斗「とにかく、いらん。俺に使うくらいなら、自分の物でも買え」

花梨「……ったく。いつも、自分のことは後回しにするんだから」

そのときチャイムが鳴る。

綾斗「げっ! お前と話してて寝れなかったじゃねーか」

花梨「あははは。ごめんごめん」

立ち上がって立ち去る花梨。

綾斗「……ったく」

場面転換。

孤児院内。

院長「あらあら、花梨ちゃん、いらっしゃい」

花梨「ご無沙汰してます」

院長が花梨の前に紅茶を出して、向かいの椅子に座る。

院長「綾斗くんは学校でどう? 浮いた存在になってないかしら?」

花梨「まあ、多少はやる気がなくて、クラスメイトと距離ができてる感じですけど、致命傷ではないですね」

院長「……はあ。やっぱり。あの子は自分のことはすぐ後回しするからね」

花梨「はい。学校行事も、極力体力を使わないようにしてますね」

院長「子供たちは綾斗くんがそこまで世話をしなくても勝手に育つものなのにねぇ。ちょっと過保護よね」

花梨「そうですね。ところで、もうすぐ綾斗の誕生日なんですけど……」

院長「パーティー開くって言ったら、いらないって言い出してねぇ。どうしようかなって思ってるのよ」

花梨「パーティーもプレゼントも拒否してるんですよね。自分に使うくらいなら他の子にって」

院長「そうなのよね」

花梨「なので、ちょっと秘策がありまして」

院長「なになに?」

場面転換。

静かな部屋の中。

綾斗「……おい、なんなんだ、これは?」

花梨「あんた、今日、誕生日でしょ? 誕生日プレゼントよ」

綾斗「……プレゼントってなんだよ? なんもないぞ?」

花梨「それは、ずばり、睡眠よ」

綾斗「え?」

花梨「今日はこの部屋で寝なさい」

綾斗「おいおい、ガキどもどうすんだよ?」

花梨「今夜は私が面倒見てあげる」

綾斗「……」

花梨「たまには、静かにぐっすり寝なさい」

綾斗「……そっか。ありがとな」

花梨「それじゃ、おやすみなさい」

バタンとドアが閉まる音。

綾斗「……」

シーンと静かな部屋。

綾斗「……」

シーンと静かな部屋。

綾斗「……」

シーンと静かな部屋。

綾斗「逆に静かすぎて眠れない!」

終わり。

 

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