雪だるま

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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
漫画原作・ドラマ、現代、シリアス

■キャスト
レオ 16歳
ライアン 16歳
青年1~2 17歳
不良 17歳

■台本

〇路地裏
冬で、辺りには雪が積もっている。
そんな中、レオが青年たちに殴られている。

青年1「おら!」
レオ「うっ!」
青年2「おらおら!」
レオ「がはっ!」

レオが雪の上に倒れる。
雪がレオの血で赤く染まっていく。

レオ「……」
青年1「けっ! 思い知ったか!」

青年2が倒れたレオのポケットを漁る。

青年2「お、あったあった」

青年2の手にはレオの財布がある。

青年2「じゃ、これは貰ってくぜ」

青年たちが歩き去っていく。

レオが仰向けになり、空を仰ぐ。
空からは雪がチラチラと振っている。

レオ(N)「僕はどうしようもなく弱い。自分に降りかかる火の粉さえ、払うことができない」

レオの服の上に雪が積もっていく。

レオ(N)「こんなどうしようもない僕が、生きている意味はあるのだろうか……」

そこに足音が聞こえてくる。
レオの視界に、すっとライアンが入ってくる。

ライアン「よお、レオ。派手にやられたな」

ライアンがニカッと笑い、持っているレオの財布を見せる。

レオ(N)「そんな僕を、ライアンはいつも助けてくれる」

〇道
雪をザクザクと音を立てながら歩く、レオとライアン。

レオ「今日、課題の提出日だけど、ちゃんとやった?」
ライアン「……ん? なんだっけ? それ」
レオ「(ため息)教授から言われたでしょ。レポート出せって」
ライアン「……あれ? そうだっけ?」
レオ「そんなことだろうと思ったよ」

レオが背負っているカバンの中から、数枚の紙を出してライアンに渡す。

レオ「はい、これ」
ライアン「マジで! さすがレオ。サンキュー」
レオ「言っておくけど、雑に書いてるから、良を貰えると思わないでよ。せいぜい、可だからね」
ライアン「おう。未提出で落第するよか、十分だ」
レオ「これで、この前の借りは返したからね」
ライアン「借り?」
レオ「財布の件」
ライアン「ああ。あれか。んなの気にしなくていいのによぉ」
レオ「僕は気にするの」
ライアン「へいへい」

〇教室内
顔をボコボコにされている生徒1と生徒2がすすり泣いている。
そんな2人と向かい合っているライアン。

ライアン「……誰にやられた?」
レオ「どうせ、ノースの連中でしょ?」

生徒1が頷く。

ライアン「……なんで、ノースの奴らがうちに手を出すんだ?」
レオ「(ため息)あのさぁ。この前、殴った相手のこと、もう忘れたの?」
ライアン「え? なんだっけ?」
レオ「僕の財布の件!」
ライアン「……ああ! あいつらか。確かに、ノースの制服だった……気がする」
レオ「あれ、下部組織だけど、上の直系の組織だよ」
ライアン「組織って、大げさだな」
レオ「そんなことないよ。あいつらは組織として犯罪をやってるんだ。十分、この辺りじゃ脅威になってるよ」
ライアン「マジかー」
レオ「……結構、有名な話なんだけどね」
ライアン「ま、なんにしても、うちの連中が狩られてるのはいただけないな」

ライアンがゴキゴキと拳を鳴らす。

レオ「……」

〇ノースの学校前
看板にノースと書かれている。
校門から学校を見上げるライアン。

ライアン「……よし」

進もうとするライアンの腕が捉まれる。
ライアンが振り向くと、そこにレオが立っている。

ライアン「レオ……」
レオ「バカなの? 正面から行って勝てるわけないでしょ」
ライアン「じゃあ、どうするんだよ?」
レオ「こういうのは頭を潰せばいいだけだから」

〇裏庭
レオとライアンが木の陰から覗いている。
その視線の先には不良がたむろっている。

レオ「あの、角刈りがここのトップだよ」
ライアン「へー。あんなやつが」
レオ「ただ、あの取り巻きが……」
ライアン「うおおおおお!」

木の陰から飛び出し、向かっていくライアン。

レオ「あっ! ……たく」

〇同
不良たちが倒れ、ライアンが一人立っている。
多少、やられボロボロになっているライアン。

ライアン「っしゃー。俺の勝ち」

不良の一人の頭を掴み、起き上がらせる。

ライアン「いいか? 今度、うちのやつらに手を出したら……ぐっ!」

ライアンが後ろからバットで殴られ、倒れる。
そこにはバットを持った不良が立っている。

不良「へっ、へへへ……。調子こきやがって! 止めだ!」

不良がバットを振り上げる。

レオ「うおおおお!」

そこにレオが突っ込んでいき、不良を倒す。

不良「な、なんだてめえ!」
レオ「うおああああああ!」

ペチペチと不良を殴るレオ。
だが、逆に不良に殴られ返される。

レオ「うわっ!」

レオが倒れ、不良が追撃する。

倒れた状態で蹴られ、鼻血が噴き出てくるレオ。
そして、同時に涙も出てくる。

レオ(N)「僕はどうしようもなく弱い。こんなんで、ライアンの横にいる資格なんてない」

虚ろな目になるレオ。

ライアン「うおおおおお!」

ライアンの一撃が不良の顔にヒットし、不良が吹っ飛ぶ。

ライアン「ったく、舐めやがって」

〇道
レオを背負って歩ているライアン。

レオ「……ここでいいよ。降ろして」
ライアン「アホか。立ってもいられないくせに」
レオ「……ごめん。いつも助けられてばっかりで」
ライアン「……お前さ、いつも助けられて、なんて言ってるけど、俺だってお前に助けられてるんだぞ?」
レオ「え?」
ライアン「今日だって、あのまま正面から突っ込めばやられてた。お前のおかげで勝てたんだぞ」
レオ「……でも、僕はライアンの横にいるには弱すぎる」
ライアン「バーカ。いいんだよ、それで」
レオ「え?」

ライアンが道端に作ってある雪だるまの前で立ち止まる。

ライアン「見ろよ、この雪だるま」
レオ「……それがなに?」
ライアン「デカい雪玉の上に、小さい雪玉がある」
レオ「当たり前でしょ」
ライアン「だろ? 逆だったら、下の雪玉が割れちまう」
レオ「……」
ライアン「よっと!」

いきなり、ライアンがレオを肩車する。

レオ「ちょっと、ライアン?」
ライアン「お前は頭を使う。俺は拳を使う。そうじゃないとバランスが悪いだろ」
レオ「……」
ライアン「お前が強かったら、俺はいらなくなる。違うか?」
レオ「……そうだね」
ライアン「お前はそのままでいいんだよ」
レオ「……わかった」

ライアンがレオを肩車しながら歩いていく。

終わり。

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