ライバル関係

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■概要
人数:3人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
イーサン 16歳
ウィリアム 16歳
リリー 16歳

■台本

イーサンとウィリアムが山道を歩く。

イーサン「はあ、はあ、はあ……」
ウィリアム「……へ、へへ。イーサン、息が上がってるぞ?」
イーサン「けっ! お前だって膝ガクガクじゃねーか」
ウィリアム「ふん。先に、頂上に登るのは俺だ!」

ウィリアムが走る。

イーサン「ふん。甘いぞ、ウィリアム。俺の方が先だー!」

イーサンも走り出す。

場面転換。
イーサンとウィリアムが倒れる音。

イーサン「う、ぐ……くそ」
ウィリアム「も、もう少しで頂上なのに……」

そこにリリーがやってくる。

リリー「……なにやってんの、あんたたち」
イーサン「く、リリー」
リリー「バカみたいに走るからよ。それで倒れちゃ意味ないじゃない」
ウィリアム「お前にはわからないんだ。これは登頂するのはもちろん、最初に登頂する勝負なんだよ」
リリー「ふーん」

リリーが歩き出す。

ウィリアム「あ、ちょっと待て! お前、先に行く気か!?」
リリー「え? 当たり前でしょ」
イーサン「いや、待てって!」
リリー「知らないわよ」

スタスタと歩いていくリリー。

イーサン「くそ。俺が最初に着くはずだったのに」
ウィリアム「動けねえ。待て、リリー! 待ってくれー!

場面転換。
イーサンの部屋。

イーサン「……うーん。少し、詰め過ぎか? もう少し軽くして」

ガチャリとドアが開く音。
リリーが入ってくる。

リリー「イーサン、明日の登山の準備はできた?」
イーサン「あー、いや、今、もう少し減らそうと思ってさ」
リリー「え? それだけでも、十分少ないと思うけど……」
イーサン「いや、極限まで切り詰めないと、最後で差が出る」
リリー「差が出るって、もしかして、またウィリアムと勝負する気?」
イーサン「当たり前だ。あいつはライバルだからな。いつか、結着をつけないとならない」
リリー「あのさ。山はね、他人と勝負するところじゃないよ。自分と対話して、楽しめばいいじゃない」
イーサン「お前にはわかんないんだよ。あいつに勝ちたいって気持ちがさ」
リリー「はあ。まあ、好きにしなさい」
イーサン「……」

場面転換。
山のふもと。

イーサン「……よし、用意はいいか?」
ウィリアム「ああ、いいぜ」
イーサン「じゃあ、いくぞ!」
ウィリアム「うおおお!」

2人が走り出す。

リリー「ったく……」

場面転換。
2人が山道を歩いている。

イーサン「はあ、はあ、はあ……」
ウィリアム「……苦しそうだな。少し休んだらどうだ?」
イーサン「ふん。こっちのセリフだ」
ウィリアム「今日こそは勝つからな」
イーサン「言ってろ」

2人が山道を進む。
そのとき、山の上から大きな岩が転がってくる。

イーサン「ん? なんの音だ?」
ウィリアム「イーサン、危ない!」

ウィリアムがイーサンを押し倒す。
倒れこむ2人。
だが、ウィリアムの足が岩によって傷つけられる。

ウィリアム「うわああ!」

岩が下に落下していく。

イーサン「落石か。危なかった。ウィリアム。助かった……って、どうした?」
ウィリアム「はは。ちょっと、岩に引っ掛けられちまった」
イーサン「……大丈夫なのか?」
ウィリアム「ちょっと休んだらすぐに追いつく。先に行けよ」
イーサン「あ、ああ……」

イーサンが歩き出す。

場面転換。

ウィリアム「いてて。こりゃ、あるけねえな。……あーあ。どうやら俺の負けだな。まさか、こんな形で決着がつくなんてな」

そこにイーサンが戻ってくる。

イーサン「やっぱりな」
ウィリアム「イーサン、お前、なんでもどってきたんだよ?」
イーサン「ほら、肩貸せ」
ウィリアム「お、おい……」
イーサン「立てるか?」
ウィリアム「なんとか……」
イーサン「いくぞ」
ウィリアム「……」

寄り添って歩く2人。

場面転換。
山道を歩く2人。

イーサン「はあ、はあ、はあ。キツイな」
ウィリアム「だから、俺を置いてけって」
イーサン「……俺、思うんだけどさ」
ウィリアム「ん?」
イーサン「俺、お前がいるから、頑張れるんだと思う」
ウィリアム「……どういうことだよ?」
イーサン「お前に負けたくないって気持ちが、俺を高めてくれるんだと思う」
ウィリアム「へっ! 臭いこと言ってんじゃねーよ」
イーサン「うるせーな」
ウィリアム「けどさ」
イーサン「ん?」
ウィリアム「俺はお前に負けたくないって、気持ちは、誰にも負けない」
イーサン「ふん……」

場面転換。
2人がよろよろと歩きながら、立ち止まる。

イーサン「つ、ついた……。頂上だ」
ウィリアム「……」
イーサン「……なんか言えよ」
ウィリアム「……綺麗だな」
イーサン「ああ……」

それをこっそりと見ているリリー。

リリー「ふふ。ようやく、一緒に登る楽しさを知ったようね」

場面転換。
イーサンとウィリアムが山道を歩く。

イーサン「うおおお!」
ウィリアム「はああああ!」
イーサン「負けねーからな」
ウィリアム「こっちこそ!」

早足で歩いていくイーサンとウィリアム。

リリー「はあ。結局、そうなるのか」

終わり。

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