料理の腕
- 2023.07.21
- 映像系(10分~30分)
■概要
人数:4人
時間:5分
■ジャンル
漫画原作・ドラマ、現代、コメディ
■キャスト
江梨子(えりこ) 47歳
勝弘(かつひろ) 高校2年生
羽矢(はや) 高校2年生
生徒 ※自由
■台本
〇料理教室
江梨子が生徒たちに料理を教えている。
江梨子「いいですか。味付けは薄味を意識してください。少し少ないかな? って思うくらいの量を淹れてください。なので、ここで教わった味付けも、実際に作るときはやや少なめのイメージで味付けにするんです」
生徒「先生、どうしてですか? うちは濃いめの方が好きなんですけ」
江梨子「あ、薄味で仕上げるわけではありません。あくまで最初の味を付けるときです。料理は味見が大事です。最初に薄く仕上げ、味見をしながらちょうどいい感じに仕上げるんです。薄いの濃くするのは簡単ですが、濃くしたものを薄くするのは難しいですよね?」
生徒「あー、たしかに……」
〇学校の屋上
勝弘と羽矢がお弁当を食べている。
勝弘「ん! 美味い! 羽矢、また料理、上手くなったんじゃないか?」
羽矢「えへへ? そうかな?」
勝弘「いや、冗談抜きで。店とか出せるんじゃねーの?」
羽矢「あはは。大げさだって」
勝弘「そんなことないって。……いやー、それにしても、俺は幸せ者だな。こうして、毎日羽矢の弁当を食えるんだから」
羽矢「ほめ過ぎだよー」
勝弘「いや、食事は大事なことだよ。だってさ、毎日食うもんなんだぜ? それこそ、死ぬまでさ。だから、羽矢が料理上手になってくれて、ホントに嬉しいよ」
羽矢「……え? それって……?」
遠回しの告白と受け取り、羽矢が顔を真っ赤にする。
勝弘「え?」
勝弘も遠回しの告白になっていることに気づき、顔を真っ赤にする。
勝弘「いや、その……あの……」
羽矢「……」
顔を真っ赤にして、うつむく二人。
〇勝弘の家・リビング
テーブルに並んだ料理を食べている勝弘。
江梨子が料理を他の皿に取り分けて、ラップをしていく。
勝弘「(料理を食べて)んー」
江梨子「ん? どうしたの?」
勝弘がもう一口食べて。
勝弘「なんだかなー」
江梨子「え? なになに? どうしたの?」
勝弘「母さんの料理ってさー。なんつーか、あんま美味しくないよな」
江梨子「……ちょっと。料理の講師やってる母親に言う言葉なの?」
勝弘「だって。ホントなんだからしゃーないじゃん」
江梨子「子供に言われるとショックよね、その言葉」
勝弘「つーかさ。母さん、料理の腕、落ちたんじゃない?」
江梨子「失礼ね! 日々、研究は怠ってません」
勝弘「ホントに? それじゃ、羽矢の方が才能があるってことか」
江梨子「え? なに? 羽矢ちゃんがどうかしたの?」
勝弘「いやさ、いつも羽矢に弁当作ってもらってるだけど、あいつの弁当、すげー美味いんだよ」
江梨子「へー」
勝弘「もう、母さんの料理じゃ太刀打ちできないくらい」
江梨子「そうなんだ?」
勝弘「いや、ホント、美味いんだって」
江梨子「知ってるけど」
勝弘「いやいや。母さんが思ってる10倍は上手いから」
江梨子「うんうん」
勝弘「あのさ、母さんは羽矢に料理習ってみたら?」
江梨子「あははは。そうね。考えてみようかしら」
勝弘「……なんで、母さんが上機嫌になるんだよ?」
江梨子「え? 上機嫌になってた?」
勝弘「……気持ち悪いくらいに」
江梨子「あら、失礼ね」
〇同・リビング
机に向かって、料理の献立を考えている江梨子。
そこにチャイムが鳴る。
江梨子が立ち上がり、リビングを出て行く。
江梨子「はーい」
〇同・玄関
ガチャリとドアを開けると羽矢が立っている。
江梨子「いらっしゃい、羽矢ちゃん」
羽矢「あの、勝弘くんは……?」
江梨子「今、部活にいってるわよ」
羽矢「そうですか」
江梨子「それじゃ、あがって」
羽矢「お邪魔します」
〇同・キッチン
料理を教わっている羽矢。
江梨子「そうそう。上手いわ」
羽矢「えへへ。そうですか?」
江梨子「うんうん。教室の生徒の中でも、羽矢ちゃんほど筋のある子はいないわよ」
羽矢「嬉しいです。勝弘くんにも、料理が上手くなったって褒められたんですよ。おばさんに習った料理を早速、お弁当にしたんです」
江梨子「あら、そう」
羽矢「私、おばさんに料理を教わってよかったです」
江梨子「うふふ。これからもいっぱいお料理教えてあげるわね」
羽矢「はい! お願いします!」
終わり。