作られた奇跡

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■概要
人数:3人
時間:10分

■ジャンル
漫画原作・ドラマ、現代、シリアス

■キャスト
春貴(はるき) 大学2年生
彩香(あやか) 大学1年生
未希(みき) 大学2年生

■台本

〇部屋の中・カレンダー
5月16日に丸が付けられている。
その下に『肉フェス・出会い』と書かれている。

〇肉フェス会場
会場は多くの人で賑わっている。
お店でお肉を買う春貴。
空いているテーブルを探して、見つけて座る。
同時に目の前に彩香が座る。
彩香が持っているのも春貴と同じメニュー。

春貴「……あ、すいません。席、変えるね」
彩香「いえ! いいんです。私、一人ですから」
春貴「え? 肉フェスに一人で来てるの?」
彩香「あはは……。やっぱり、女の子一人で来るのって変ですよね……」
春貴「いや、ごめん。そういうつもりで言ったわけじゃないんだ」
彩香「……えっと」

彩香が周りを見る。

春貴「ああ、俺も人のこと言えないんだけど、一人で来てるんだ」
彩香「そうなんですか?」
春貴「いやあ。都合がつく友達がいなくてさ」
彩香「毎年は来てないんですか? 肉フェス」
春貴「うん。今年はたまたま、かな」
彩香「私もです。友達にドタキャンされて、変える前に目に入ったんで、フラッと寄ったんですよ」
春貴「へー。そうなんだ。そんな二人が、同じ席に座るなんて、なんか偶然だね」
彩香「そうですね」
春貴「あ、ごめん。冷めないうちに食べようか」
彩香「はい」

彩香が自分の料理と春貴の料理を見る。

彩香「あ、料理も同じですね」
春貴「ホントだ!?」

〇同
春貴と彩香が並んで、会場内を歩いている。
一緒に色々と店を回っている。

〇駅・改札前
春貴と彩香が向かい合っている。
彩香がぺこりと頭を下げる。

彩香「今日はありがとうございました」
春貴「いやいや。こっちこそ、ありがとう。楽しかったよ」
彩香「私も楽しかったです!」
春貴「……」
彩香「……」

ジッと見つめる二人。
春貴がハッとする。

春貴「あ、そろそろ電車来るよ」
彩香「あ、そうですね。じゃあ、今日はありがとうございました」

彩香が改札を通って行ってしまう。
春貴が彩香の後姿を目で追う。
姿が見えなくなった後、ポケットからスマホを出す。

春貴「(スマホをじっと見て)……」

思い切りため息をつく春貴。

〇大学内
春貴がスマホ(SNS)を操作している。
そこに未希がやってくる。

未希「おーっす。春貴」
春貴「ん? ああ、未希か」
未希「また、SNSでつぶやいてるの? よくもまあ、飽きないわね。そんなにつぶやくことあるの?」
春貴「うるさいな」

スマホをポケットにしまう。

春貴「あれ? 公平は?」
未希「今日は講義ないんだって」
春貴「……あいつ。単位大丈夫なのか?」
未希「さあ?」
春貴「さあ、って……。お前、彼女だろ」
未希「だからって、あいつの単位まで面倒見れないって」
春貴「留年になっても知らんぞ」
未希「本人に言いなよ。それより、昨日はごめんね」
春貴「いいよ、別に」
未希「昨日の映画は全然面白くなかったから、肉フェスの方に行けばよかったわ」
春貴「……(昨日のことを思い出してニコリとする)」
未希「……なんかあったの?」
春貴「いや、べつに。それより、5は面白くなかったのか。俺は違うのを見ようかな」
未希「あー、ずるいー」
春貴「……何がだよ」

〇部屋・カレンダー
5月19日に丸が付いている。
その下に『映画・再会』と書いてある。

〇映画館
チケットを買う春貴。
チケットをテーブルに置いて、スマホで写真を撮る。

〇スマホ画面・SNS画面
春貴のつぶやき。
『今日は話題のマッドミックス見るぞ』
投稿する春貴。

〇映画館
SNSに投稿して満足そうな春貴。
ポップコーン売り場へと向かう春貴。

〇映画館シアター内
映画館の席はまばら。
中央の席に座る春貴。
座って、ポップコーンを食べる。
すると、隣に彩香がやって来て、座る。

春貴「……え?」

彩香が春貴の方を見る。

彩香「え? あれ? 昨日の……」
春貴「……もしかして、偶然?」
彩香「……だと思います」
春貴「凄いな」
彩香「ここまで来ると奇跡ですね」
春貴「奇跡……か」

〇ファミレス
春貴と彩香が話している。
春貴がスマホを出して、連絡先を交換する。

〇街中
春貴と彩香が一緒に歩いている。
楽しそうにしている二人。

〇ショッピングモール
春貴と彩香が一緒に買い物している。

〇春貴の部屋
春貴と未希がゲームをしている。

春貴「……ってわけなんだよ」
未希「……わざわざ、人を呼んでおいて、ノロケ聞かせるってどうよ?」
春貴「いや、ノロケじゃなくてさ。これって運命なのかなって」
未希「ノロケだっつーの」

そのとき、窓からガタンという音がする。
春貴が慌てて立ち上がって、窓を開ける。
人影が立ち去っていくのが見える。

春貴「……なんだよ」
未希「え? なに? どうしたの?」
春貴「いや、最近、誰かに見張られてるような気がしてさ」
未希「……まさか、その彩香ちゃんじゃないの?」
春貴「へ? なんで?」

春貴が窓を閉めて、もとの場所に座る。

春貴「彩香ちゃんが、俺を監視する意味はないだろ」
未希「いやさ、あんたの話聞いてると、そんなに偶然なんてあるのかなってきがするんだよね」
春貴「じゃあ、なんだってんだよ?」
未希「怒らないでよ」
春貴「怒ってねーし。彼女が言ってたんだよ。これって奇跡ですねってさ」
未希「はいはい。わかったわかった。奇跡ってことでいいんじゃない?」
春貴「……俺、告白しようと思うんだけど、どう思う?」
未希「んー。そう言われてもなー」

〇路地裏
彩香が走って来て、物陰に隠れる。
彩香の耳にはイヤホンが嵌められている。
イヤホンからは春貴と未希の声が聞こえてくる。

春貴の声「どうやって告白したらいいかな?」
未希の声「知らないわよ、そんなこと」

彩香がニヤリと笑う。

〇部屋のカレンダー
7月16日に丸が付けられる。
書き込んでいるのは彩香。
続けて『告白』と書き始める。

〇彩香の部屋 回想
5月のカレンダーには何も書かれていない。
彩香が部屋に入って来る。
座って、スマホを出し、SNSを開く。

〇SNSの画面
春貴のアカウントが映し出される。
春貴のつぶやき。
『明日、肉フェス行ってくる。友達には断れたから、一人で行ってくるわ』

〇彩香の部屋
彩香がスマホを見てニヤリと笑う。
立ち上がって、カレンダーの方へ向かう。
5月16日に丸を付ける。

終わり。

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