グラグラの決意

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■概要
人数:2人
時間:10分

■ジャンル
漫画・アニメ、現代、コメディ

■キャスト
光喜(こうき) 18歳
彩星(あやせ) 18歳

■台本

〇光喜の部屋
太っている光喜。
部屋の真ん中で、お菓子を持ってプルプルと震えている。
壁には『ダイエット絶対成功』と書かれた紙が貼ってある。

光喜「くっ! くそ、もう限界だー!」

口を開けて、お菓子を入れようとした瞬間、後ろからスパンと叩かれる。

光喜「いってっ! なにすんだよ! ……あっ」

振り向くと、そこには彩星が仁王立ちしている。

彩星「あーんたねー! やる気あんの?」

ギリギリと光喜の頬をつねり上げる。

光喜「いてて! いや、これはあれだ! チートデイなんだよ!」
彩星「チートデイは2日前にやったでしょ! っていうか、あんたの場合、チートデイじゃない日の方が少ないじゃない!」

がっくりと四つん這いになって落ち込む光喜。

光喜「くそー。くそー。なんでだ! なんで、俺はいつも挫折してしまうんだ……」
彩星「はあ……。何回目よ、ダイエット。今回こそ、痩せてやるって決意したんじゃないの?」
光喜「したんだよ! 今回は絶対に成功させるって誓ったんだ。けど、けどおおお!」

ゴロゴロと転がる光喜。

光喜「世の中、美味いもんが多すぎるんだよぉ!」
彩星「……」
光喜「ああー、もうダメだ。もういっそ、好きなもん好きなだけ食って、死んだ方がマシだよ」
彩星「じゃあさ、いっそ、ダイエットしないって決意すれば」

ピタリと止まる光喜。

光喜「……どういうことだ?」
彩星「あんたの場合、ダイエットしようとして失敗して、リバウンドしての繰り返しでしょ? しそれなら、いっそ、ダイエットを止めればいいのよ」
光喜「ダイエットを止める……」
彩星「そう。今後、一切、ダイエットをしないって決意するの。それならできるんじゃない?」
光喜「それって、我慢する必要がないってことか?」
彩星「そう」
光喜「好きなもんを好きなだけ食っていいってことか?」
彩星「そう」
光喜「最高じゃねーか!」
彩星「でも、これだけは厳守して。もう、絶対にダイエットをしないって」
光喜「ダイエットをしない……」
彩星「いい? 食べたいときに食べたいものを食べたいだけ食べる。それが絶対条件」
光喜「んなの、ブクブクに太るじゃねーかよ!」
彩星「そうよ。あんた、さっき、好きなもんを食べて死んだ方がいいって言ったでしょ? それを実践するの」
光喜「う、うう……」
彩星「できるわね?」
光喜「お、おう……」
彩星「じゃあ、手始めに、そこのお菓子を食べて」
光喜「……」

さっきまで持っていたお菓子の袋を手に取る。
そして、1つだけ手でつまり、口に入れる。
モグモグと食べるが、その表情はどこか暗い。

彩星「ほら、もっとガンガン食べなさいよ」
光喜「……いや、もういいや」
彩星「え? 何言ってるのよ。さっきまで我慢できないって言ってたじゃない」
光喜「急に腹が膨れたんだよ」
彩星「は? そんなんじゃダメだって」
光喜「いいだろ。今、食べたくないんだから、食べなくたって」
彩星「まあ、そうね……。じゃ、私は帰るけど、食べたくなったら、全力で食べるのよ」

彩星が部屋を出ていく。

光喜「……」

もう一枚、お菓子を手に取って、食べようとするが、スッと元に戻してしまう光喜。

〇道路
ジョギングしている光喜。
そして、家の中へと入っていく。

〇光喜の家
玄関から、タオルで汗を拭きながら入って来る光喜。

光喜「ふいー! 今日は頑張ったぞ。ふふ。その分、ちょっと多く食べてもいいよな」

〇同・キッチン
冷蔵庫を開ける光喜。
そこにはシュークリームが入っている。

光喜「ラッキー!」

手に取る光喜。
そのとき、後ろから声がする。

彩星「光喜……」
光喜「ひいっ! ご、ごめん! ちょっと一口食べるだけだったんだよ」
彩星「……何言ってるの?」
光喜「え?」
彩星「もう、ダイエットしないんだから、全部食べなさいよ」
光喜「……」
彩星「あと、なに、ジョギングしてるの? ダイエット止めるんだから、走る必要もないでしょ」
光喜「あ……。そっか。それもそうだよな。……はは。習慣になってたよ」
彩星「まあ、いいけど。でも、明日から走っちゃダメだからね」
光喜「あ、ああ……」
彩星「じゃあ、ほら、そのシュークリーム食べなよ」
光喜「……」

手に取っているシュークリームをじっと見る光喜。

光喜「あー……。先にシャワー浴びてくる」
彩星「あっそ」

〇光喜の部屋(夜)
布団の中で寝転がっている光喜。
腹の音がグーグー鳴っている。

光喜「……」

ムクリと起き上がり、部屋を出て行く。

〇キッチン
冷蔵庫を開ける光喜。
シュークリームを手に取る。
そのままテーブルの方へ歩いていく。
ふと、手鏡が目に入る。
手鏡に、光喜の顔が写っている。
丸々と太った光喜の顔。

光喜「(ジッと手鏡を見て)……」

冷蔵庫の方へ戻り、シュークリームを中に戻す。

〇道路(朝)
ジョギングしている光喜。

〇光喜の家・キッチン
汗だくの光喜がタオルで汗を拭きながらやってくる。
冷蔵庫を開け、コーラに手を伸ばすが、お茶を手に取る。
お茶をコップに注いで飲む。

〇同
着替えた光喜がテーブルの上の食材を食べている。
野菜を中心としたメニュー。

光喜「あ、結構、美味いな」

〇デパート
袋を持って店から出てくる光喜。
袋の中はペットボトルの水。
歩く光喜。
エスカレーターと階段が並んでいる。
階段の方を登っていく光喜。

〇光喜の部屋
彩星が驚いた表情をしている。

彩星「ちょ、ちょっと! 何事なの!?」

そこにはスラリと痩せた光喜が立っている。

光喜「いやぁ。なんていうかさ、二度とダイエットしないって言われると、なんつーか、怖くなっちゃってさ。そしたら、なんか、食べたいものも我慢しちゃって……」
彩星「……ダイエットを止める決意が揺らいだってわけ?」
光喜「まあ、そうかな……」
彩星「ま、結果オーライじゃない? ちゃんと痩せれたじゃない」
光喜「あははは。あんなに痩せれなかったのに」
彩星「よくやったじゃん!」
光喜「へへへ。じゃあ、俺さ」
彩星「ん?」
光喜「今度はこれを維持するって決意したんだ」
彩星「そっか。頑張りなよ」
光喜「おう、任せておけ!」

ナレーション「数ヶ月後」

〇光喜の部屋
彩星が唖然としている。
目の前には見事にリバウンドした光喜の姿が。

光喜「あはは……。維持するって決意が揺らいじゃったみたい……」
彩星「アホかー!」

彩星が光喜をグーで殴り飛ばす。

終わり。

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