風邪移し

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■概要
人数:3人
時間:5分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
美珠々(みすず)小学2年生
奏汰(かなた) 小学2年生
奏汰の母 

■台本

ピンポーンというインターフォンの音。

ちょっとして、ガチャリとドアが開く。

奏汰の母「おはよう、美珠々ちゃん」

美珠々「おはようございます」

奏汰の母「奏汰、まだ寝てるから、今日もお願いできる?」

美珠々「はい!」

場面転換。

バンと勢いよくドアが開く。

美珠々が部屋に入って来て、布団を剥ぎ取る。

美珠々「奏汰、起きなさい!」

奏汰「う、うーん……。うわっ! 美珠々ちゃん!」

美珠々「起きた?」

奏汰「も、もう! ちゃんと自分で起きるから、起こしにこなくていいって、言ってるでしょ!」

美珠々「そんなこと言って、この前遅刻したじゃない」

奏汰「うっ! もう大丈夫だもん」

美珠々「はいはい。それより、早く着替えないと。着る服、決まってるの? 選んであげよっか?」

奏汰「いいよ、別に! それより、早く出てって!」

美珠々「なによ。今更、恥ずかしがることないじゃない。前まで一緒にお風呂だって入ってたんだからさ」

奏汰「それは3歳のときでしょ! いいから、早く出てって!」

美珠々「もう! わかったわよ」

場面転換。

玄関で靴を履いている奏汰。

美珠々「今日、体育あるんだから、体操着持った?」

奏汰「持ってる」

美珠々「リコーダーは? 今日、使うって言ってたよ」

奏汰「学校に置いてある」

美珠々「……それって練習してないってことじゃない」

奏汰「いいんだよ。僕は、リコーダー得意だし」

美珠々「まあいいわ。国語の宿題は? やった?」

奏汰「……え? 出てたっけ?」

美珠々「はあ……。またボーっとしてたんでしょ? いいわ。学校についたら、写させてあげるから」

奏汰「うう……。ありがと」

奏汰の母「うふふふ。美珠々ちゃんがいれば、本当に安心ね。お嫁さんになってくれると、もっと安心なんだけど」

奏汰「ちょっと、お母さん!」

美珠々「あははは。考えておきまーす。ほら、奏汰、行くよ」

奏汰「う、うん……」

場面転換。

奏汰と美珠々が並んで歩く。

奏汰「ねえ、美珠々ちゃん」

美珠々「なに?」

奏汰「なんで、こんなに世話を焼いてくれるの?」

美珠々「え? うーん。えーっと……。あ、お姉さんだから、かな」

奏汰「……お姉さん?」

美珠々「ほら、私、奏汰より年上でしょ? だから、お姉さん」

奏汰「いやいや、3ヶ月早いだけでしょ」

美珠々「それでも、上には変わらないでしょ」

奏汰「そ、そうだけど……」

美珠々「とにかく、奏汰は見てて危なっかしいから見てられないんだよね」

奏汰「ぼ、僕だって、ちゃんとやれるよ」

美珠々「いいよ、無理しなくたって」

奏汰「できるよ!」

美珠々「……奏汰」

奏汰「明日から、迎えに来ないで! 僕、ちゃんとできるって、見せてあげるから!」

美珠々「……ホントに?」

奏汰「うん!」

美珠々「わかった。じゃあ、明日は迎えに行かないからね」

場面転換。

教室内。生徒たちがガヤガヤしている。

美珠々「……」

チャイムが鳴り始める。

美珠々「もう、バカ! 迎えに行かなきゃ、これだもん!」

場面転換。

走って来る美珠々。

奏汰の家のインターフォンを押す。

ガチャリとドアが開く音。

奏汰の母「あら、美珠々ちゃん、いらっしゃい」

美珠々「奏汰いる!?」

奏汰の母「ええ。今、部屋で寝て……」

美珠々「お邪魔します!」

美珠々が家の中に入っていく。

場面転換。

バンとドアが開く音。

美珠々「奏汰!」

奏汰「……あ、美珠々ちゃん」

美珠々「あんたねえ、遅刻どころか、サボりってどういうこと!? やっぱり、私が迎えに行かないとダメじゃない」

奏汰「いやいや。サボりじゃないよ。風邪だってば。ごほごほ」

美珠々「え? そうなの?」

奏汰「先生、ホームルームでそう言ってなかった?」

美珠々「あー、そういわれれば……言ってたような、言ってないような」

奏汰「……」

美珠々「と、とにかく、サボりじゃないなら、まあ、許してあげる」

奏汰「ははは……。ありがと」

美珠々「でも、普段から気を抜いてるから、風邪なんか引くんだよ!」

奏汰「風邪ひいてるときに、お説教しないでよ」

美珠々「そうね。治ったらにしてあげる」

奏汰「……治ったら、されるんだ」

美珠々「で、明日は来れそう?」

奏汰「ごほごほ。うーん。難しいかも」

美珠々「そんなに酷い風邪なの?」

奏汰「うん。熱も37度5分あるんだ」

美珠々「あらら。大変そうね。うーん。じゃあ、こうしよう」

美珠々が奏汰にキスをする。

奏汰「んーー! んーーー!(キスで口をふさがれて)」

美珠々が口を外す。

美珠々「こんなものかな?」

奏汰「なななななにしてるのーーーー!?」

美珠々「風邪、貰ってあげたの」

奏汰「……へ?」

美珠々「ほら、風邪は移したら治るっていうでしょ? だから、半分、貰ってあげたの。感謝しなさいよね」

奏汰「……」

美珠々「私は奏汰と違って、規則正しい生活してるから、風邪なんか、ちっとも効かないわ」

奏汰「……」

美珠々「じゃあ、明日の朝、迎えに来るからね。バイバイ」

部屋を出て行く美珠々。

奏汰「……」

場面転換。

美珠々が走って来る。

立ち止まって、家のインターフォンを押す。

すると、ドアが開く。

奏汰の母「あら、美珠々ちゃん、おはよう」

美珠々「おはようございます! 奏汰、起きてますか?」

奏汰の母「あー、それがね」

美珠々「……?」

奏汰の母「昨日から、すごい熱が上がっちゃったのよ」

美珠々「ええええ! なんでぇ!?」

終わり。

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