風邪移し
- 2023.09.12
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:3人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
美珠々(みすず)小学2年生
奏汰(かなた) 小学2年生
奏汰の母
■台本
ピンポーンというインターフォンの音。
ちょっとして、ガチャリとドアが開く。
奏汰の母「おはよう、美珠々ちゃん」
美珠々「おはようございます」
奏汰の母「奏汰、まだ寝てるから、今日もお願いできる?」
美珠々「はい!」
場面転換。
バンと勢いよくドアが開く。
美珠々が部屋に入って来て、布団を剥ぎ取る。
美珠々「奏汰、起きなさい!」
奏汰「う、うーん……。うわっ! 美珠々ちゃん!」
美珠々「起きた?」
奏汰「も、もう! ちゃんと自分で起きるから、起こしにこなくていいって、言ってるでしょ!」
美珠々「そんなこと言って、この前遅刻したじゃない」
奏汰「うっ! もう大丈夫だもん」
美珠々「はいはい。それより、早く着替えないと。着る服、決まってるの? 選んであげよっか?」
奏汰「いいよ、別に! それより、早く出てって!」
美珠々「なによ。今更、恥ずかしがることないじゃない。前まで一緒にお風呂だって入ってたんだからさ」
奏汰「それは3歳のときでしょ! いいから、早く出てって!」
美珠々「もう! わかったわよ」
場面転換。
玄関で靴を履いている奏汰。
美珠々「今日、体育あるんだから、体操着持った?」
奏汰「持ってる」
美珠々「リコーダーは? 今日、使うって言ってたよ」
奏汰「学校に置いてある」
美珠々「……それって練習してないってことじゃない」
奏汰「いいんだよ。僕は、リコーダー得意だし」
美珠々「まあいいわ。国語の宿題は? やった?」
奏汰「……え? 出てたっけ?」
美珠々「はあ……。またボーっとしてたんでしょ? いいわ。学校についたら、写させてあげるから」
奏汰「うう……。ありがと」
奏汰の母「うふふふ。美珠々ちゃんがいれば、本当に安心ね。お嫁さんになってくれると、もっと安心なんだけど」
奏汰「ちょっと、お母さん!」
美珠々「あははは。考えておきまーす。ほら、奏汰、行くよ」
奏汰「う、うん……」
場面転換。
奏汰と美珠々が並んで歩く。
奏汰「ねえ、美珠々ちゃん」
美珠々「なに?」
奏汰「なんで、こんなに世話を焼いてくれるの?」
美珠々「え? うーん。えーっと……。あ、お姉さんだから、かな」
奏汰「……お姉さん?」
美珠々「ほら、私、奏汰より年上でしょ? だから、お姉さん」
奏汰「いやいや、3ヶ月早いだけでしょ」
美珠々「それでも、上には変わらないでしょ」
奏汰「そ、そうだけど……」
美珠々「とにかく、奏汰は見てて危なっかしいから見てられないんだよね」
奏汰「ぼ、僕だって、ちゃんとやれるよ」
美珠々「いいよ、無理しなくたって」
奏汰「できるよ!」
美珠々「……奏汰」
奏汰「明日から、迎えに来ないで! 僕、ちゃんとできるって、見せてあげるから!」
美珠々「……ホントに?」
奏汰「うん!」
美珠々「わかった。じゃあ、明日は迎えに行かないからね」
場面転換。
教室内。生徒たちがガヤガヤしている。
美珠々「……」
チャイムが鳴り始める。
美珠々「もう、バカ! 迎えに行かなきゃ、これだもん!」
場面転換。
走って来る美珠々。
奏汰の家のインターフォンを押す。
ガチャリとドアが開く音。
奏汰の母「あら、美珠々ちゃん、いらっしゃい」
美珠々「奏汰いる!?」
奏汰の母「ええ。今、部屋で寝て……」
美珠々「お邪魔します!」
美珠々が家の中に入っていく。
場面転換。
バンとドアが開く音。
美珠々「奏汰!」
奏汰「……あ、美珠々ちゃん」
美珠々「あんたねえ、遅刻どころか、サボりってどういうこと!? やっぱり、私が迎えに行かないとダメじゃない」
奏汰「いやいや。サボりじゃないよ。風邪だってば。ごほごほ」
美珠々「え? そうなの?」
奏汰「先生、ホームルームでそう言ってなかった?」
美珠々「あー、そういわれれば……言ってたような、言ってないような」
奏汰「……」
美珠々「と、とにかく、サボりじゃないなら、まあ、許してあげる」
奏汰「ははは……。ありがと」
美珠々「でも、普段から気を抜いてるから、風邪なんか引くんだよ!」
奏汰「風邪ひいてるときに、お説教しないでよ」
美珠々「そうね。治ったらにしてあげる」
奏汰「……治ったら、されるんだ」
美珠々「で、明日は来れそう?」
奏汰「ごほごほ。うーん。難しいかも」
美珠々「そんなに酷い風邪なの?」
奏汰「うん。熱も37度5分あるんだ」
美珠々「あらら。大変そうね。うーん。じゃあ、こうしよう」
美珠々が奏汰にキスをする。
奏汰「んーー! んーーー!(キスで口をふさがれて)」
美珠々が口を外す。
美珠々「こんなものかな?」
奏汰「なななななにしてるのーーーー!?」
美珠々「風邪、貰ってあげたの」
奏汰「……へ?」
美珠々「ほら、風邪は移したら治るっていうでしょ? だから、半分、貰ってあげたの。感謝しなさいよね」
奏汰「……」
美珠々「私は奏汰と違って、規則正しい生活してるから、風邪なんか、ちっとも効かないわ」
奏汰「……」
美珠々「じゃあ、明日の朝、迎えに来るからね。バイバイ」
部屋を出て行く美珠々。
奏汰「……」
場面転換。
美珠々が走って来る。
立ち止まって、家のインターフォンを押す。
すると、ドアが開く。
奏汰の母「あら、美珠々ちゃん、おはよう」
美珠々「おはようございます! 奏汰、起きてますか?」
奏汰の母「あー、それがね」
美珠々「……?」
奏汰の母「昨日から、すごい熱が上がっちゃったのよ」
美珠々「ええええ! なんでぇ!?」
終わり。