効いてないし

〈前の10枚シナリオへ〉  〈次の10枚シナリオへ〉

〈声劇用の台本一覧へ〉

■概要
人数:3人
時間:5分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
徹也(てつや) 小学4年生
光一(こういち) 小学4年生
弘(ひろし) 小学4年生
おじいさん

■台本

学校の帰り道。
徹也と光一と弘が歩いている。
徹也が光一のランドセルを持たされて、ヨロヨロとしている。

徹也「はあ、はあ、はあ……」
光一「おい! 徹也! 早くしろよ、グズ」
弘「あははは。まあ、光一の分のランドセルも持ってるんだから、仕方なくない?」
光一「んなの、あいつが負けるから悪いんだろうが」
弘「……いやいや、光一は負けても、『今度は勝った方が持つこと』って言って、徹也に持たせるじゃん」
光一「ふふ。それは俺の機転の良さの勝ちだろ」
弘「うーん。光一のは後出しじゃんけんだと思うけど」
光一「あん? 俺が遅出ししてるってのかよ?」
弘「……そうじゃなくて」
徹也「はあ、はあ、はあ」
光一「おせーよ! この!」

光一が徹也の足を引っかける。

徹也「うわっ!」

徹也が転ぶ。

光一「あはははは。どんくせーやつ」
弘「いやいやいや。今の足引っかけるのは、ランドセルのせいで見えないでしょ」
光一「いーや。見えなかったとしても、転んだのはこいつがどんくさいからだよ」
弘「あー、まあ、それは……確かに」
徹也「うう……」
光一「お? 泣くのか? あははは。泣け泣け」
徹也「うっ……」
光一「なんだよ、泣かねーのかよ。じゃあ、おら!」

光一が徹也を殴る。

徹也「ああっ! うう……。うわーん」
光一「あははは。泣いた泣いた」
弘「お前、酷いな」
光一「あれだよ。なんだっけ? 泣かぬなら泣かせてみようホトトギス?」
弘「使い方違うだろ……」

場面転換。
河原で膝を抱えて泣いている徹也。

徹也「うう……」
おじいさん「……ふむ。虐めか」
徹也「え? ……おじいさん、誰?」
おじいさん「ははは。気にするでない。ただの通りすがりの爺じゃよ」
徹也「……」
おじいさん「ずーっと見ておったが……。坊主、なぜ、反撃せん?」
徹也「ええ? 反撃なんて無理だよ……」
おじいさん「ああいうやつは、やり返さないと、ドンドン、調子に乗る。ここいらでガツンとやってやるのもいいと思うぞ」
徹也「でも……。やり返したら、また10倍返しにされちゃうし……」
おじいさん「あははははははは」
徹也「おじいさん?」
おじいさん「ああいう、人を攻撃してくるようなやつは、案外打たれ弱いものじゃよ。試しに、言い返してみい」
徹也「……ホントに?」
おじいさん「ああ。儂が保証する」

場面転換。
学校の帰り道。
徹也と光一と弘が歩いている。

光一「よーし、いつも通り、ランドセルをどっちが持つかじゃんけんしようぜ」
徹也「……きょ、今日は止めとく」
光一「なんでだよ!? いいから、やるぞ! おら、手を出せ!」
徹也「たまには自分で持てよ、バカ! 自分のランドセルも持てないくらい、弱いのかよ!」
光一「……」
弘「おお……。徹也が切れた」
徹也「お前、いつも、卑怯なんだよ、カス!」
光一「……」
弘「あらら。光一、思わぬ徹也の反撃に効いちゃったか?」
光一「ぜ、全っ然! 効いてないし……」
弘「ホントか? 涙目になってるぞ」
光一「うっせーよ、ばーかばーか! 覚えてろよー。うわーーん!」

光一が泣きながら走り去っていく。

弘「めちゃめちゃ効いてんじゃん。あいつ、打たれ弱かったんだな……」
徹也「……言いすぎちゃったかな? 明日謝らないと」
弘「……そうしたほうがよさそうだな」

終わり。

〈前の10枚シナリオへ〉  〈次の10枚シナリオへ〉