俺じゃないぞ!

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■概要
人数:3人
時間:5分

■ジャンル
ドラマ・舞台、現代、コメディ

■キャスト
英明(ひであき)
幹弘(みきひろ)
一彦(かずひこ)

■台本

〇一彦の部屋
部屋の中に英明、幹弘、一彦の3人がいる。
部屋の中には棚があり、多くのフィギュアが飾ってある。
雑談している3人。
ふと、話題が途切れる。

一彦「ああ、ごめん。喉乾いたよね? なんか持ってくるよ」
幹弘「すまんな」

一彦が立ち上がって部屋を出て行く。
幹弘も立ち上がり、フィギュアの戸棚を見ている。

英明「ふわー(欠伸)」
幹弘「なんだ? 寝不足か?」
英明「昨日は気づいてたら朝になってた……」
幹弘「よくもまあ、ゲームにそんなに夢中になれるな」
英明「いや、あれは絶対ハマるって。今度、貸してやるよ」
幹弘「いいよ、別に。ゲームするくらいなら、素振りしてた方がいいから」
英明「俺からしたら、野球のどこが面白いのかが疑問だ。夏に練習とか、ただの罰ゲームだろ」
幹弘「ゲーム好きなんだろ?」
英明「体を動かすゲームはごめんだね」
幹弘「ゲームなんて、大人になってもやれるんだからさ。部活は学生までだぞ?」
英明「お前は、俺の親父か? ……にしても、眠いな。コーヒーってリクエストしとけばよかった」
幹弘「飲み物もらえるだけでも、感謝しろよ。リクエストするってどうなんだ?」
英明「まあ、な……」
幹弘「(棚のフィギュアを見ながら)お?」

幹弘がフィギュアの一つを手に取って、英明に渡す。

幹弘「これ、お前がハマってるゲームのキャラクターのだろ?」
英明「(受け取って)ああ」

ジロジロと見る、英明。

英明「……いや、これ、テレビ版のだ」
幹弘「……同じキャラクターなら、どっちでもいいだろ」
英明「甘いな。この部分はテレビ版のオリジナルで……」
幹弘「ああ、説明しなくていい。興味ないし」
英明「(ムッとして)なんだよ。説明させろよ」

幹弘がまた、棚に目を戻す。
英明がフィギュアを手に取りながら、ウトウトする。

幹弘「なあ?」
英明「(ハッとして)ん?」
幹弘「今度の、班決めなんだけどさ……」

英明が手元のフィギュアを見る。
すると首が取れている。

英明「っ!?」
幹弘「どうした?」

幹弘が振り向く。
咄嗟に取れた首を乗っける英明。

英明「ああ、いや、何でもない。それより、これ、棚に戻してくれ」

英明がそっと、フィギュアを幹弘に渡す。

幹弘が手に取り、棚に戻そうとすると、ポロっと首が落ちる。

幹弘「……」
英明「あー、おまっ! フィギュア、壊すなよ!」
幹弘「お、おい! 違うって! お前だろ? なんか渡し方変だったし」
英明「っ! ちげーよ! お、俺は折ってないぞ」
幹弘「俺だって折ってねー!」
英明「お前だ!」
幹弘「いや、お前だ!」

二人がフィギュアを押し付け合う。

英明「往生際が悪いぞ!」
幹弘「お前こそ!」

睨み合う二人。

英明「……なあ、バレないように、棚に戻しておけばいいんじゃないか?」
幹弘「……それって、友達としてどうなんだ?」
英明「なら、お前が、自分が壊したって白状しろよ」
幹弘「……そっと戻しておくか」
英明「……そうしようぜ」

二人がそーっと、フィギュアを棚に戻し、首が落ちないように、バランスよく置く。
が、そのとき、ドアが開く。

一彦「ごめん、お待たせ」
英明「うおっ!」

ビックリして、手が震え、フィギュアの首がポロリと落ちる。

幹弘「あっ……」
一彦「……」
英明「いや、これはこいつが……」
幹弘「お前……」
一彦「あー、やっぱ、ダメかー」
英明「へ?」
一彦「昨日、従妹が、首折っちゃってさー。慌てて接着剤でとめたんだけど、ダメみたいだね」
英明「……」
幹弘「……」
一彦「……どうしたの二人とも?」
英明・幹弘「早く言えー!」
一彦「へ?」

終わり。

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