最高の入れ替わり

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■概要
人数：５人
時間：１０分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
聡（さとし）
湊本　天音（みなもと　あまね）
皆川（みながわ）
女子１～３
高木（たかぎ）
男子１

■台本

聡（Ｎ）「入れ替わり。かなり前に結構流行ったジャンルだ。王道なのは男と女が入れ替わる、ドタバタコメディ。最終的には入れ替わった男女が良い雰囲気になって終わるところまでが、王道展開というものだ。確かに、こういう展開はいいと思う。普段、女子と交流がない俺でも、彼女ができる可能性がある。……でも、考えてみて欲しい。どうせ入れ替わるなら、もっといい相手がいるだろう」

休み時間の教室内。

教室内は賑わっている。

皆川「あはは。でね、沢村が……」

女子たちが話しているところに、聡がやってくる。

聡「ねえ、これ、皆川さんのでしょ？　落ちてたよ」

皆川「え？　あ、ありがと」

聡「そういえば、皆川さん、髪切ったでしょ？」

皆川「へ？　あー、うん」

聡「さっぱりして、いいと思うよ」

皆川「……ありがと」

聡「って、いきなり、変なこと言ってごめん。じゃあね」

聡が歩き去る。

皆川「……うーん。聡くんってさ、性格的なポイントが高いんだけどさー」

女子１「わかる。地味だよね」

皆川「そうそう。なんだかんだ言って、良い人で終わるタイプだよね」

女子２「わかる。良い人なんだけど、彼女ができないタイプだね、あれは」

皆川「あれが、高木くんだったらなぁ……」

女子１「イチコロだよね」

女子２「ああー、一度でいいから、高木くんに話しかけられたい！」

聡「……」

聡（Ｎ）「俺だって、色々と努力してきた。繊細な気配り、清潔感、適度な距離感。それは、俺が努力して身に着けたものだ。……だが、どんなに努力しても、結局は、良い人止まり。つまりは顔だ。この地味な顔だと、どんなに頑張っても報われることはない」

席に座る聡。

聡「はあ……」

天音「どうしたの、聡くん、ため息なんてついて」

聡「え？　ああ、なんでもないよ。ごめんね。不快にさせたかな？」

天音「ううん。そんなことないけど。体調悪いのかなって」

聡「ありがとう。でも、大丈夫だよ」

天音「それならいいんだけど」

聡（Ｎ）「湊本天音さん。一年の頃から、ずっと片思いしている子だ。今年、ようやく一緒のクラスになって、さらに、隣の席になるという大チャンスなのに、未だに、こんな日常会話をするくらいまでしかいかない。もちろん、休みの日に誘うなんてことはできない。断られるのが目に見えているからだ。……俺の顔が高木くらいイケメンなら、もう天音さんと付き合ってるんだろうな……」

場面転換。

チャイムの音。

男子「おーい、高木―！　早くしろって」

高木「わかってるって、ちょっと待てよ」

女子２「あ、高木くん、帰るの？　一緒に帰らない？」

高木「あー、ごめん。また今度な」

女子２「もう……」

その様子を見ている聡。

聡「……黙ってても女子に声をかけられるんだもんなぁ。勝ち組だよな」

ため息を付きつつ、階段を降りていく聡。

男子「たーかーぎー！　早くしないと売り切れるぞ！」

男子が聡の横をすり抜け、階段を駆け下りていく。

高木「わーってるって」

高木も階段を駆け下りようとする。

が、ツルっと滑る。

高木「うわっ！　うわあああああ！」

高木が階段を落ちていく。

聡「へ？　……うわあああああ！」

聡と高木がぶつかり、階段の下まで落ちていく。

※以降、聡と高木の声が入れ替わる。

聡「いてて……」

高木「ううー。頭いてえ」

男子「おい、高木、大丈夫か？」

聡「高木はあっち。俺は聡だよ」

男子「何言ってんだよ、頭でも打ったのか？」

聡「確かに打ったけど……」

男子「それより、ほら、早く行くぞ」

男子が聡の腕を掴んで歩き出す。

聡「お、おい……ちょっと、放してくれって」

場面転換。

聡のナレーションは聡の声。

聡（Ｎ）「信じられない話かもしれないが、なんと俺は高木と体が入れ替わったのだ」

聡「やったー！　よし、よし、よし！　最高だ！」

聡（Ｎ）「そう。俺の考える最高の入れ替わりは、イケメンと入れ替わることだ。一気に、人生の勝ち組。努力なんかしなく立って、女子の方から言い寄ってくる。そして、高木の顔なら、天音さんだって、なびくはずだ！」

場面転換。

学校の裏庭。

天音「えっと、高木くん。話って何かな？」

聡「昼休みにごめん。どうしても、伝えたいことがあって……」

天音「べ、別に構いませんけど……」

聡「おほん！（咳払い）　あのさ、天音さん」

天音「は、はい……」

聡「俺と、付き合ってくれないかな？」

天音「え？」

聡「一年生の頃から、ずっと見てたんだ」

天音「……」

聡「どうかな？」

天音「えっと……」

聡「ん？」

天音「ごめんなさい」

聡「……え？」

天音「私、高木くんとはお付き合いできません」

聡「ど、どうして？」

天音「その……好きな人がいるので」

聡「好きな人？」

天音「誰にも言わないでくださいね」

聡「あ、ああ」

天音「実は、私、聡くんのことが好きなんです」

聡「え？　ちょっと待ってくれ！　あ、あんな地味な奴がいいっていうの？」

天音「地味なんかじゃありませんよ。優しくて、素朴な感じが素敵だなって思います」

聡「……」

天音「それじゃ、失礼します」

天音が行ってしまう。

聡「そ、そんな……」

聡（Ｎ）「最低な入れ替わりだ。……やっぱり、入れ替わりなんていいことなかった」

終わり。

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