お触り厳禁
- 2023.10.16
- 映像系(10分~30分)
■概要
人数:4人
時間:10分
■ジャンル
ドラマ・舞台、現代、コメディ
■キャスト
正輝(まさき)
神田 孝雄(かんだ たかお)
ミヤビ
店長
■台本
〇町・道路(夜)
スーツ姿の孝雄(36)と正輝(28)が酔って、フラフラと歩いている。
正輝「神田さん、明日って何か予定あるんですか?」
孝雄「ん? そうだな。明日は朝から飲もうと思ってるんだ」
正輝「……たった今、飲んで、そのセリフが出るなんてすごいですね。肝臓大丈夫なんですか?」
孝雄「平気だ。健康診断の結果は見ないことにしてるから」
正輝「それ、全然、大丈夫じゃないですよ」
孝雄「俺は医者に酒か命を選べと言われれば、酒を選ぶ」
正輝「……死んだら、酒は飲めないですよ」
孝雄「うっ!」
正輝「明日、暇なら、もう一軒行きません?」
孝雄「お? いい店知ってるのか? いい酒、置いてるんだろうな?」
正輝「……さっきの会話の流れから、そんなわけないじゃないですか」
孝雄「なんだよ。酒がないなら、付き合わんぞ」
正輝「まあまあ。お酒を忘れるくらい楽しみましょうよ」
孝雄「酒がなくて、なにを楽しめって言うんだよ」
正輝「それはもちろん、お、ん、な、です!」
孝雄「ほう?」
正輝「キャバクラとガールズバーの間のようなお店なんですけど、どうですか?」
孝雄「いいね。いい酒が飲めそうだ」
正輝「……だから、飲まない方がいいですって」
〇店内
ガチャリとドアが開く。
正輝と孝雄が店に入って来る。
店長「いらっしゃいませ。お二人ですか?」
正輝「は、はい」
店長「では、こちらへどうぞ」
店長に連れられて、2人が席に向かう。
ちょっとしたボックス席に案内される。
店長「こちらへどうぞ」
正輝「はい」
正輝と孝雄が席に座る。
店長「こちらのお店は初めてですか?」
正輝「はい」
孝雄「おい、初めてかよ。てっきり常連なのかと思ったぞ」
正輝「ネットで見て、行きたいって思ってたんですよ」
孝雄「……まあ、いいけど」
店長「では、こちらが当店のメニューになります」
店長がメニュー表を孝雄たちに渡す。
店長「お料理を持ってきた女の子へ声をかけるのは自由です。ただ、それ以外の女の子に声をかけたりするのはお止めください」
孝雄「あー。なるほど……」
メニューを見ながら孝雄が頷く。
店長「あと、最後に一点だけ、ご注意を。ここは『そういう』お店ではありませんので、節度を守って、お楽しみください」
店長がぺこりと頭を下げて、行ってしまう。
正輝「変わったお店ですね。女の子を付けてくれないなんて」
孝雄「いや、付くよ。周りを見てみろよ」
正輝「え?」
正輝が周りを見渡すと、席には客と女の子が楽しそうに話しているのが見える。
正輝「どういうことなんでしょう?」
孝雄「あの人が言ってただろ。料理を運んできた女の子は口説いて良いって」
正輝「……なんか、まどろっこしいですね。指名させてくれればいいのに」
孝雄「今どきの店って感じだな」
正輝「というと?」
孝雄「つまり、女の子側……店員側の方にも選択権があるってことさ。キャバクラとかだと指名されたら、嫌でもその客と話さないといけないだろ? だけど、このシステムなら、嫌な客だと感じたら、接客しなくていいんだよ。これなら、募集もしやすいだろうな」
正輝「でも、それだと客側が満足できないんじゃないですか?」
孝雄「メニューを見てみろよ。指名料とかが全くないし、値段も安めだ」
正輝「……ホントだ。お酒の高いのでも1万くらいですね」
孝雄「金がない奴とか、口説くのに自信がある奴なら、この店に来るだろうな。女の子と話すことができるのは、自分の腕次第ってわけだ」
正輝「なるほど……」
孝雄「あとは……あれだな」
孝雄がある張り紙を指差す。
正輝「あれ?」
首を傾げながら、孝雄の指差す方を見る。
その張り紙には『お触り厳禁。罰金1万円』と書かれている。
正輝「……もしかして」
孝雄「ああ。わざと触らせて、罰金と取るという方式かもな」
正輝「……絶対、触っちゃダメですよ」
孝雄「……お前の方が心配だよ」
〇同
飲み物とおつまみを持って、ミヤビがやってくる。
ミヤビ「お待たせしましたー! ミヤビでーす」
ミヤビが孝雄と正輝の前に飲み物を置き、二人の間にちょこんと座る。
孝雄「あれ?」
ミヤビ「どうかしましたー?」
孝雄「てっきり、一回目の注文くらいじゃ、持ってきて終わりだと思ったよ」
ミヤビ「あははは。他の子はそうしてるみたいですね。でも、私は成績悪いから、もう、気に入った人なら、一回目で座っちゃうんです」
孝雄「いやいや。成績が悪いわけないでしょ。ミヤビちゃんならトップ狙えるんじゃない?」
ミヤビ「そうですかあ? 嬉しいな」
ミヤビが胸元が空いた服で、孝雄に寄り掛かる。
孝雄「うっ!」
正輝「神田さん、ダメですからね」
孝雄「わ、わかってるよ。とにかく、ミヤビちゃんもなんか飲みなよ」
ミヤビ「いいんですかぁ? うれしいですー」
〇同
大分酔っぱらっているミヤビと楽しそうに話している正輝と孝雄。
ミヤビ「あははは。神田さん、冗談、おもしろーい」
孝雄「いやいや、本当なんだって!」
正輝「信じられないですよ。昔、アメフトやってたなんて。今、ヒョロガリじゃないですか」
孝雄「ちげーって。実はこう見えて、まだ筋肉残ってるんだぞ」
ミヤビ「ホントですかぁ?」
ミヤビが孝雄の胸をさわさわと触る。
ミヤビ「ホントだー。かたーい!」
孝雄「うっ!」
正輝「ダメですからね!」
正輝が親指で『お触り厳禁』の張り紙の方を指す。
孝雄「わ、わかってるって」
ミヤビ「あれぇ? もしかして、あっちもガチガチになっちゃったんじゃないんですかぁ?」
ミヤビが孝雄の内ふとももを撫でる。
孝雄「う、うう……」
正輝「我慢ですよ、我慢」
孝雄「……っ!」
ミヤビ「ねえ、私って、魅力ないですかぁ?」
胸元の空いた服の隙間から、ブラが見える。
孝雄「うぐぅ……」
正輝「ダメですよ! ダメですから!」
ミヤビ「あれぇ? でも、神田さんの乳首はビンビンですぅー」
ミヤビがシャツの上から孝雄の乳首を撫でる。
孝雄「――っ!」
正輝「ダメですってばー!」
〇同・レジ前
孝雄が虚ろな目をしている。
正輝が店長に伝票を渡している。
店長「……ああ。お触り厳禁って言ってるのに。こりゃ罰金だね」
孝雄「ちょ、ちょっと待ってくれ! 俺は耐えたぞ! ギリギリだったけど、耐えたんだ……」
ミヤビ「ごめんなさい、店長」
正輝「え?」
店長「すみませんねぇ。この子、酔うと、すぐお客さんにお触りしちゃって」
正輝「お触り厳禁って……」
孝雄「店員の方かい!」
終わり。