ピヨちゃんの幸せ

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■概要
人数:2人
時間:5分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス

■キャスト
真白(ましろ) 高校生
東馬(とうま) 小学生低学年

■台本

真白「はい。これ、ホットココア。温まるよ」

東馬「で、でも……」

真白「遠慮しないで。っていうか、間違えて、自動販売機のボタン、2回押しちゃったの。だから、一本貰ってくれる?」

東馬「ありがとう……」

2人が缶のココアを開けて、啜る。

真白「で、君はこんな真冬の夜に、こんなところで何してるのかな?」

東馬「……友達のピヨちゃんが逃げちゃったから、探してるの。でも、見つからなくて」

真白「ピヨちゃん?」

東馬「鳥。僕の手の平くらいの」

真白「飼ってたってことかな?」

東馬「うん」

真白「ってことはセキセイインコかな」

東馬「あ、確か、そんなことお母さんが言ってた」

真白「ピヨちゃんはよく逃げるの?」

東馬「ううん。逃げたのは初めてだよ」

真白「そうなんだ? 心配だね」

東馬「だから、早く探してあげないと……」

真白「よし、じゃあ、お姉ちゃんも一緒に探してあげる」

東馬「え? ホント?」

真白「もちろん! こう見えても、探し物は得意なんだから」

場面転換。

二人で歩いている。

真白「うーん。いないなぁ」

東馬「……どこに行っちゃったんだろ?」

真白「家の近くは探した?」

東馬「うん」

真白「そういえば、家って、どのへん?」

東馬「あっちにあるスーパーの近く」

真白「……え? 結構、歩いて来たね。2キロ以上はあるんじゃない?」

東馬「探し回ってたら、ここまで来ちゃった」

真白「インコって、どのくらい飛べるんだろ? えーっと」

スマホを操作する真白。

真白「あー、10キロとか平気で飛ぶみたいだね」

東馬「でも、ピヨちゃんはそんなに飛ばないと思う」

真白「どうして?」

東馬「カゴから出しても、あんまり歩いたり、飛んだりしないから。それに、最近は全然カゴの中でも動かないんだよ」

真白「え? そうなの?」

東馬「なんかね、ピヨちゃんは、おばあちゃんなんだって。お母さんがそう言ってた」

真白「おばあちゃん……? ああ、結構、年ってことか。ピヨちゃんって、どのくらい前から飼ってたの?」

東馬「わかんない。僕が生まれる前からって、言ってたから」

真白「……」

東馬「どうしたの?」

真白「ねえ、そのピヨちゃんなんだけどさ。君が逃がしちゃったの?」

東馬「違うよ。僕が学校に行ってる間に、お母さんがカゴを掃除してたら、逃げちゃったって」

真白「……そう……なんだ」

東馬「早く見つけてあげなくっちゃ」

真白「……お母さんたちが心配するから、帰ろっか」

東馬「ええ!? どうして? ピヨちゃんが見つかってないのに、帰れないよ」

真白「思うんだけどね。きっと、ピヨちゃんは逃げたんじゃないんだよ」

東馬「え?」

真白「ピヨちゃんは遊びに行ったんだと思う」

東馬「遊びに?」

真白「うん。君は冬休みはずーっと家にいた?」

東馬「ううん。友達の家に遊びに行ったり、おばあちゃんのところに行ったりした」

真白「でしょ? きっと、ピヨちゃんもずっと家にいたから遊びに出たくなったんだよ」

東馬「そうなのかな?」

真白「うん。だから、信じて、家で待っててあげて」

東馬「でも……帰ってきてくれるかな?」

真白「もしかしたら、外の方が幸せに暮らせてるかもしれないよ」

東馬「そんな! ピヨちゃんには僕しか友達はいないんだよ?」

真白「君には、ピヨちゃん以外にも友達、いるんだよね?」

東馬「う、うん……」

真白「なら、ピヨちゃんにも、新しい友達が出来てもいいんじゃない?」

東馬「……」

真白「ピヨちゃんはもう、戻って来ないかもしれない。……でもね、ピヨちゃんとの思い出は、ちゃんと残ってるでしょ?」

東馬「う、うん……」

真白「なら、今度はピヨちゃんの幸せを願ってあげないとね」

東馬「わかった。じゃあ、僕、家で待ってることにする」

真白「一人で帰れる?」

東馬「うん。ありがとう。バイバイ」

真白「バイバイ」

東馬が走っていく。

真白「……これからも、ちゃんと、天国で見守ってあげててね、ピヨちゃん」

終わり。