ピヨちゃんの幸せ
- 2023.10.24
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:2人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
真白(ましろ) 高校生
東馬(とうま) 小学生低学年
■台本
真白「はい。これ、ホットココア。温まるよ」
東馬「で、でも……」
真白「遠慮しないで。っていうか、間違えて、自動販売機のボタン、2回押しちゃったの。だから、一本貰ってくれる?」
東馬「ありがとう……」
2人が缶のココアを開けて、啜る。
真白「で、君はこんな真冬の夜に、こんなところで何してるのかな?」
東馬「……友達のピヨちゃんが逃げちゃったから、探してるの。でも、見つからなくて」
真白「ピヨちゃん?」
東馬「鳥。僕の手の平くらいの」
真白「飼ってたってことかな?」
東馬「うん」
真白「ってことはセキセイインコかな」
東馬「あ、確か、そんなことお母さんが言ってた」
真白「ピヨちゃんはよく逃げるの?」
東馬「ううん。逃げたのは初めてだよ」
真白「そうなんだ? 心配だね」
東馬「だから、早く探してあげないと……」
真白「よし、じゃあ、お姉ちゃんも一緒に探してあげる」
東馬「え? ホント?」
真白「もちろん! こう見えても、探し物は得意なんだから」
場面転換。
二人で歩いている。
真白「うーん。いないなぁ」
東馬「……どこに行っちゃったんだろ?」
真白「家の近くは探した?」
東馬「うん」
真白「そういえば、家って、どのへん?」
東馬「あっちにあるスーパーの近く」
真白「……え? 結構、歩いて来たね。2キロ以上はあるんじゃない?」
東馬「探し回ってたら、ここまで来ちゃった」
真白「インコって、どのくらい飛べるんだろ? えーっと」
スマホを操作する真白。
真白「あー、10キロとか平気で飛ぶみたいだね」
東馬「でも、ピヨちゃんはそんなに飛ばないと思う」
真白「どうして?」
東馬「カゴから出しても、あんまり歩いたり、飛んだりしないから。それに、最近は全然カゴの中でも動かないんだよ」
真白「え? そうなの?」
東馬「なんかね、ピヨちゃんは、おばあちゃんなんだって。お母さんがそう言ってた」
真白「おばあちゃん……? ああ、結構、年ってことか。ピヨちゃんって、どのくらい前から飼ってたの?」
東馬「わかんない。僕が生まれる前からって、言ってたから」
真白「……」
東馬「どうしたの?」
真白「ねえ、そのピヨちゃんなんだけどさ。君が逃がしちゃったの?」
東馬「違うよ。僕が学校に行ってる間に、お母さんがカゴを掃除してたら、逃げちゃったって」
真白「……そう……なんだ」
東馬「早く見つけてあげなくっちゃ」
真白「……お母さんたちが心配するから、帰ろっか」
東馬「ええ!? どうして? ピヨちゃんが見つかってないのに、帰れないよ」
真白「思うんだけどね。きっと、ピヨちゃんは逃げたんじゃないんだよ」
東馬「え?」
真白「ピヨちゃんは遊びに行ったんだと思う」
東馬「遊びに?」
真白「うん。君は冬休みはずーっと家にいた?」
東馬「ううん。友達の家に遊びに行ったり、おばあちゃんのところに行ったりした」
真白「でしょ? きっと、ピヨちゃんもずっと家にいたから遊びに出たくなったんだよ」
東馬「そうなのかな?」
真白「うん。だから、信じて、家で待っててあげて」
東馬「でも……帰ってきてくれるかな?」
真白「もしかしたら、外の方が幸せに暮らせてるかもしれないよ」
東馬「そんな! ピヨちゃんには僕しか友達はいないんだよ?」
真白「君には、ピヨちゃん以外にも友達、いるんだよね?」
東馬「う、うん……」
真白「なら、ピヨちゃんにも、新しい友達が出来てもいいんじゃない?」
東馬「……」
真白「ピヨちゃんはもう、戻って来ないかもしれない。……でもね、ピヨちゃんとの思い出は、ちゃんと残ってるでしょ?」
東馬「う、うん……」
真白「なら、今度はピヨちゃんの幸せを願ってあげないとね」
東馬「わかった。じゃあ、僕、家で待ってることにする」
真白「一人で帰れる?」
東馬「うん。ありがとう。バイバイ」
真白「バイバイ」
東馬が走っていく。
真白「……これからも、ちゃんと、天国で見守ってあげててね、ピヨちゃん」
終わり。
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