あの子の正体は

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■概要
人数:4人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
ルーク
リリーナ
ボブ
執事

■台本

ルーク(N)「僕のクラスに最近、転校してきたリリーナという、学校を休みがちな女の子がいる。色が白くて、とてもキレイで、クラスのみんなからはお嬢様みたいだと人気がある。……でも、僕は騙されない。あの子の正体を暴いて見せるんだ」

場面転換。

学校の教室。

ルークが木を削っている。

ボブ「よお、ルーク。朝から、なに作ってるんだ?」

ルーク「十字架……」

ボブ「は? お前、キリスト教だっけ?」

ルーク「うん。今日、一日だけね」

ボブ「何言ってんだ、お前」

ルーク「ねえ、ボブ。まだ、外曇ってる?」

ボブ「ん? ああ、雨が降るほどじゃないけどな」

ルーク「……じゃあ、今日は来るかも」

ボブ「なにがだ?」

ルーク「リリーナさん」

ボブ「どうだかな。リリーナさんは結構、休みがちだぞ。今日、来るとは限らないんじゃないか?」

そのとき、ガチャリと教室のドアが開く音。

リリーナ「みなさん、おはよう」

教室内がワッと盛り上がる。

ボブ「おお……。すごいな、お前。よくリリーナさんが来るの、当てられたな」

ルーク「うん。だって……」

ノートを出して、ペラペラとめくる音。

ルーク「リリーナさんは曇りの日にしか、学校に来ないんだ!」

ボブ「えー。お前、リリーナさんが来た日をメモってるのか。気持ち悪いな」

ルーク「そ、そんなんじゃないよ!」

ボブ「日付と天気ねぇ。で、それがどうしたんだよ」

ルーク「僕はある仮説を立てたんだ」

ボブ「仮説?」

ルーク「最近さ、クラスで休む人、多くない?」

ボブ「んー? まあ、言われてみるとそうだな。風邪でも流行ってるのか?」

ルーク「違うんだ。休んだ人に話を聞いたら、朝、すごい貧血の状態になったんだって」

ボブ「それが?」

ルーク「きっと、リリーナさんの仕業だ」

ボブ「はあ……。付き合いきれん」

スタスタとボブが行ってしまう。

ルーク「……絶対に尻尾を掴んで見せる」

リリーナ「……」

場面転換。

放課後の教室。

ボブ「ルーク、帰りにサッカーしてこうぜ」

ルーク「ごめん! 今日はちょっと、用事があるんだ」

ルークが走っていく。

ボブ「……なんだあいつ?」

場面転換。

道を隠れながら移動するルーク。

リリーナ「……」

ルーク「よし、まだ、リリーナさんに見つかってないな」

物陰に隠れて進むルーク。

ルーク「それにしても、クラスメイトの家の場所を教えてくれないなんて、先生もケチだよね。個人情報とかなんとか言ってたけど、そんなの関係ないと思うんだけどな」

リリーナがスタスタと歩く。

ルーク「あれ? リリーナさん、森の方へ行ったぞ」

場面転換。

森の中。砂利道を進むルーク。

前をリリーナが平然と歩いている。

ルーク「……まさか、こんなところに家があるのか?」

リリーナがピタリと立ち止まり、門を開けて入っていく。

ルーク「うわー。でっかい。お城みたいな家だな。……でも、やっぱり、僕の仮説は合ってたみたいだ。リリーナさんは……」

後ろから話しかけられる。

リリーナ「私が、なに?」

ルーク「ひゃああ!」

リリーナ「なに? 私になにか用?」

ルーク「り、リリーナさん。どうして?」

リリーナ「私の家の近くに、私がいたら変?」

ルーク「いや、今、家の方に……」

リリーナ「それより、ルークくんだっけ? こんなことして、ただで済むとは思ってないよね?」

ルーク「ううっ……。ほ、本性を現したな! これでも、くらえ!」

ルークがポケットから十字架を出す。

リリーナ「……なにそれ?」

ルーク「え? いや、その……十字架だけど」

リリーナ「私が聞きたいのは、そんなものを出して、何してるのってことなんだけど」

ルーク「なんで? なんで効かないの?」

リリーナ「効かない?」

ルーク「だ、だって、リリーナさんはバンパイアなんでしょ?」

リリーナ「……なんでそう思ったの?」

ルーク「晴れた日は絶対に学校に来ないでしょ。それに、美人で肌も白い。意外と力持ちで、牙もある。それと、コウモリを飼っているでしょ?」

リリーナ「あれ? コウモリを飼ってるの、良く知ってるわね」

ルーク「ペットショップで餌を買ってるのを見たんだ」

リリーナ「へー。……それにしても、よく、私のこと見てるのね」

ルーク「(ドキッとして)そ、それは仮説を立てるためで……」

リリーナ「ふふ。ルーク君にそこまで見られてたなんて、恥ずかしいわ」

ルーク「べ、別にやましい気持ちで見てたわけじゃないよ!」

リリーナ「私のこと、好きだとか?」

ルーク「ち、違う!」

リリーナ「あら、残念。それに、外れよ」

ルーク「なにが?」

リリーナ「まず、私が晴れの日に学校に行かないのは、そういう病気なの。肌が弱くて、日の光で火傷しちゃうのよ」

ルーク「……え?」

リリーナ「日に当たらないから、肌も白い。変じゃないでしょ?」

ルーク「言われてみれば……」

リリーナ「意外と力があるのは、家で運動してるから。学校を休んだ日は暇だから、運動するようにしてるのよ」

ルーク「じゃあ、歯は?」

リリーナ「このくらいは普通じゃない? ほら」

ルーク「うーん。そう言われると……」

リリーナ「コウモリを飼ってるのは、今、ブームなんだよ。知らないの?」

ルーク「そ、そうなの?」

リリーナ「あと、美人なのはお母さん譲りかな。写真見る?」

ルーク「う、うう……」

リリーナ「ふふ。バンパイアじゃなくて、残念だったかな?」

ルーク「……」

リリーナ「だから、この十字架も……」

ルーク「あっ!」

リリーナがルークから十字架を取り上げる。

リリーナ「ほら、この通り、効かない」

ルーク「あ……。その……疑ったりして、ごめんなさい」

リリーナ「ふふ。素直に謝れるのはいい男の証よ。あなたの血はとても綺麗そうね」

ルーク「じゃあ、僕、帰るね」

リリーナ「うん。さよなら。明日も曇りなら学校で会いましょう」

ルーク「バイバイ」

リリーナ「さようなら」

ルークが行ってしまう。

そこに執事が現れる。

執事「……リリーナ様、良いのですかな?」

リリーナ「大丈夫よ。ちゃんと信じてたみたいだし」

執事「リリーナ様、手を治療しませんと」

リリーナ「え? あ、火傷してる。あの子もやるわね」

執事「まさか、あのような子に見破られるとは」

リリーナ「意外とああいう子が敏感なのよね。それじゃ、また、転校の手続き、しておいてくれる?」

執事「はっ。かしこまりました」

終わり。

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