激戦の痕

〈前の10枚シナリオへ〉  〈次の10枚シナリオへ〉

〈声劇用の台本一覧へ〉

■概要
人数:2人
時間:5分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
彩香(あやか)
匠(たくみ)

■台本

朝。通学路。

匠と彩夏が歩いている。

彩香「匠―。なにダラダラ歩いてるの。遅刻するでしょ」

匠「うるさいぞ、彩香。僕の身体はボロボロなんだ。少しは労われ」

彩香「ボロボロ? あー、ついに糖尿病にでもなった?」

匠「内臓がボロボロなわけじゃない! 筋肉痛だ、筋肉痛」

彩香「……うーん。ついに、自分の身体を支えるのすら、辛くなっちゃったのか」

匠「ちげーよ! 大体、僕はデブじゃない! ぽっちゃりだ!」

彩香「まだデブだなんて言ってないじゃない」

匠「まだって……。やっぱり、言う気満々だったってことじゃないか」

彩香「それにしても、筋肉痛だなんて、怠惰なあんたにしては珍しいわね」

匠「ふん。僕だって、戦うべきときは、戦うさ」

彩香「小学生とカードの取り合いとかしたの?」

匠「彩香……。お前とは一度、じっくり話をつけないといけなさそうだな」

彩香「子供相手にイキるのやめた方がいいよ。もう高校生なんだから、痛いだけだって」

匠「だから違うと言ってるだろうが!」

彩香「はあ……。はいはい。で、なにがあったの?」

匠「ふっふっふ。やはり気になるようだな。僕の激闘の話を聞きたいんだな?」

彩香「じゃあ、先に行くね」

匠「あ、ごめんなさい。聞いてください」

彩香「手短にね。三文字で」

匠「三文字!」

彩香「はい。終わり」

匠「昨日、俺はゲーセンに行ったんだ」

彩香「……始まっちゃったし」

匠「本当は脱衣麻雀をしたかったんだよ、僕は」

彩香「……そういうこと、堂々と女の子の前で言わないでくれる?」

匠「だが、お目当ての台は撤去されていた。はあ……。本当に、世知辛い世の中になったものだ」

彩香「今まで堂々と置いてたのが、おかしいと思うんだけどね。あそこって、親子で来る人も多いし」

匠「で、だ。せっかく来たから、違うゲームをしようと思って、店内をウロウロしてたんだ」

彩香「……早く本題に入ってくれない?」

匠「そしたら、小学生が高校生に絡まれてたんだよ」

彩香「えー……。それはちょっと引くね。あんたよりも引くわ」

匠「だから、僕が止めに入った」

彩香「うそ! あんたが?」

匠「小学生が今にも泣きそうだったからな。そこで、僕が人肌脱いだというわけだ」

彩香「やるじゃない。3ミリほど見直したわ」

匠「……それってあんまり見直してなくないか?」

彩香「で? それからどうしたの?」

匠「もちろん、僕が相手してやったのさ」

彩香「……はー。なんだ、妄想の話か」

匠「なんでだよ! 現実の話だよ、ちゃんと」

彩香「そんなわけないでしょ。それなら、なんであんたの顔がボコボコになってないのよ」

匠「……なんで、僕がやられる前提なんだよ」

彩香「当たり前でしょ。あんたの腕力は小学生1年生以下なんだから」

匠「ふざけるな! 3年生くらいはあるわ!」

彩香「とにかく、あんたが勝てるわけないのに、ボコボコになってないのがおかしいのよ」

匠「彩香。お前には黙っていたが、僕は割と強いんだぞ。この辺でも有名なんだ」

彩香「……いやいや、嘘でしょ?」

匠「ふふ。本当だ。まあ、信じられなくても無理はないだろうな」

彩香「……うん。信じられないな」

匠「で、その戦いのせいで、今日は筋肉痛ってわけだな」

彩香「……なにか証拠はないの?」

匠「そうくると思ってたぞ。……これが証拠だ!」

バッと手を広げて、彩香の前に出す。

彩香「……手がなんなのよ?」

匠「よく見ろ。ここ。中指と薬指の間のところにタコが潰れた跡があるだろ」

彩香「あー。うん。あるね。……で、これが証拠?」

匠「はー。わかってないな。いいか? レバーはこうやって中指と薬指の間に挟むんだ。こうやって、動かしてると、タコができて、それが潰れるとこうなるんだよ!」

彩香「……」

匠「どうした?」

彩香「ゲームの話かよ!」

終わり。

〈前の10枚シナリオへ〉  〈次の10枚シナリオへ〉