勉強

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■概要
人数:2人
時間:5分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
彰(あきら)
渚(なぎさ)

■台本

彰の部屋。

問題用紙を前に、唸っている。

彰「うーん……」

そのとき、家のインターフォンが鳴る。

彰「お、来たか」

彰がスマホを手に取り、電話を掛ける。

数回のコール音の後、相手が出る。

渚の声「もしもし?」

彰「開いてるから、入ってきてくれ」

渚の声「あのねっ!」

彰はそれだけ言って、ブツっと切る。

その後、乱暴に玄関のドアが開き、階段を登ってくる音。

そして、バンとドアが開く。

渚「電話じゃなくて、ちゃんと、玄関まで出なさいよ!」

彰「面倒くさい」

渚「人を呼びだしておいて、良い度胸じゃない」

彰「なんだよ。鍵は開けておいたんだから、いいだろ」

渚「そう言う問題じゃない! てか、不用心でしょ!」

彰「じゃあ、なにか? お前にうちの合鍵を作って渡せっていうのか?」

渚「冗談! そんなの恋人みたいでキモイ」

彰「だろ? じゃあ、いいじゃねーか」

渚「私は、呼び出したんだから、あんたがちゃんと玄関まで出迎えろって言ってんの!」

彰「それより、頼みがある」

渚「……あんた、ホント、良い度胸ね」

彰「勉強を教えて欲しい」

渚「……え?」

彰「なんだよ、その顔は?」

渚「いや……。まさか、あんたの口から勉強なんて単語が出てきたのが衝撃的で……」

彰「今回ばかりは本気を出さないとな」

渚「どうしたの? まさか、先生に留年するぞって脅された?」

彰「あー、それはもう、土下座したから大丈夫だ」

渚「全然、大丈夫じゃないと思うんだけど」

彰「金がかかってるんだ」

渚「お金?」

彰「いい点取ったら、小遣いが貰えるんだよ」

渚「あー、なるほど。おばさんも考えたわね」

彰「来月、欲しいゲームが出るんだよ。ってことで頼む」

渚「うーん。動機が不純だけど、まあ、いいか。なんにしてもやる気出してるんだから、この機会を逃す手はないわね。しょうがない。ここは人肌脱いであげる」

彰「お前に脱がれても嬉しくない」

ボコっと殴る音。

渚「殴るわよ」

彰「殴ってから言うなよ!」

渚「……で? なにがわからないの?」

彰「数学なんだけど……」

ペラっと紙を渡す彰。

渚「どれどれ? ……って、なんで、手書き?」

彰「ホントはパソコンで作りたいところなんだけど、今、プリンターのインクが切れてるんだよ」

渚「ちょっと待って。そもそも、この問題って、どこから出てきたのよ?」

彰「この問題集の、ここの問題の数値だけ変えたんだ」

渚「……なんで、そんなことしてるの? 普通に、その問題集の問題、解けばいいじゃない」

彰「いや、この問題集の問題はもう全部解いてあるんだよ」

渚「……なら、数値を変えても解けるんじゃないの?」

彰「違う違う。俺じゃなくて、違うやつが解いたんだよ」

渚「ちょっと待って。意味がわからないんだけど」

彰「だから! この問題集を解いちゃったから、新しい問題を作ろうとして、数値を変えようとしたんだけど、数値を変えたら、答えがわからないから、お前を呼んだんだよ」

渚「待って待って待って! 状況が飲み込めない。ちゃんと説明して」

彰「えっと、親戚の子が、今、勉強で伸び悩んでるから教えてやって欲しいって、その親戚の親が言ってきたんだよ」

渚「なんであんたに?」

彰「その子は中学生だからな」

渚「……ああ。高校生のあんたなら、中学生の勉強を見れると思ったわけね」

彰「そうそう。そういうこと」

渚「なるほどなるほど……って、明らかにあんたの方がバカなのに、教えられるわけないでしょーがっ!」

終わり。

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