怖い話
- 2023.11.02
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:2人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
亨(とおる)
茉莉(まり)
■台本
茉莉「ねえ、怖い話してあげようか?」
亨「急だな」
茉莉「もう、夏も終わりだし、最後ってことでどう?」
亨「そうだな。じゃあ、お願いしようかな」
茉莉「これは私が小学生のときの話」
亨「え? 実際の話なのか?」
茉莉「小学生の時に聞いた話」
亨「……」
茉莉「クラスの中に、割と貧乏な家の女の子がいたの」
亨「……もしかして、イジメられてた、とか?」
茉莉「ううん。逆に避けられてたの」
亨「それはそれで、イジメっぽいけどな」
茉莉「避けられてた理由は貧乏ということじゃなかったの」
亨「というと?」
茉莉「その子、いつも白いワンピースを着てたのよ」
亨「白いワンピースなんて、珍しくもないだろ」
茉莉「それがね、ノースリーブ型のワンピースだったのよ」
亨「……普通だろ」
茉莉「いつも、着てたの」
亨「だから、普通だろ」
茉莉「冬も」
亨「……いや、それ、怖い話じゃなくて、寒い話だろ」
茉莉「なによ!? その言い方だと、私が滑ったみたいじゃない!」
亨「滑ったんだよ。盛大に」
茉莉「まあ、ここまでは前菜よ。いわばジャブね」
亨「……別に、そういうのはいらないんだけどな」
茉莉「冬にノースリーブのワンピースを着てることもそうなんだけど、他にも避けられてる理由があったの」
亨「……なんだ?」
茉莉「そのワンピースなんだけど、いつも真っ白なの」
亨「だから、普通だろ」
茉莉「カレーうどんを食べても、雨の日に泥の道を通っても、怪我をして血が出たときも、真っ白だったのよ」
亨「……それは、なんていうか、汚れを避ける能力が高いとかじゃないのか?」
茉莉「ううん。それがね、服が汚れたのを確認した子がいるんだけど、いつの間にかその汚れがなくなってるんだってさ」
亨「いつの間にか?」
茉莉「そう。カレーが付いた時も、泥が付いた時も、血が付いたとも、気づいたら白くなってたらしいの」
亨「……すぐに洗ったとか、じゃないか?」
茉莉「それなら、服が濡れてたりするだろうし、なにより、血とかカレーとか、ちょっと洗っただけで汚れが取れると思う?」
亨「……確かに、難しいな」
茉莉「だからね、クラスの人たちは、その子が幽霊なんじゃないかって噂を始めたの」
亨「……いやいや。だって、学校のクラスメイトだろ? 昼に学校にいるなら、幽霊じゃないだろ」
茉莉「まあ、ね。考えれば、わかりそうなことだけど、小学生だからね。面白がってっていうのもあるけど、とにかく、幽霊じゃないかって噂はなかなか消えなかったの」
亨「……まさか、この話にオチがなくて、怖いとか言うんじゃないよな?」
茉莉「ああ、大丈夫。安心して。あるとき、クラスメイトの一人がその理由を突き止めたのよ」
亨「へー。なんだったんだ?」
茉莉「それはね……」
亨「……(ゴクリ)」
茉莉「同じ服を持ってたんだって」
亨「……は?」
茉莉「だから、同じノースリーブの服を持ってて、汚れたら着替えてたってわけ」
亨「なるほど……。って、あれ?」
茉莉「どうしたの?」
亨「これのどこが怖い話なんだ? どちらかというと、クイズっぽい感じじゃないか?」
茉莉「大丈夫。ちゃんとオチがあるって言ったでしょ」
亨「なんだ?」
茉莉「あのね、その子……同じ服を持ってたって言ったけど、2枚とか3枚とかじゃないのよ」
亨「……何枚なんだ?」
茉莉「100枚」
亨「……す、すごいな」
茉莉「ここで思い出して欲しいんだけど、その子の家、貧乏なのよ」
亨「……あっ!」
茉莉「貧乏なのに、同じ服を100枚買ったってこと。冬だって、そのワンピースを着てたくらいよ」
亨「……確かに怖い話だな」
茉莉「でしょ?」
終わり。