1回1000円

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■概要
人数:3人
時間:5分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
修一(しゅういち)
吉平(きっぺい)

■台本

夜の街中。

多くの人で賑わっている中、吉平と修一が歩いている。

吉平「なあ、もう一軒、行かね?」

修一「ならさ、キャバクラとかにしとく?」

吉平「おおー、いいね」

修一「じゃあ……」

ザワザワと騒がしい。

修一「ん? なんだなんだ?」

吉平「人が集まってるな。行ってみようぜ」

人を掻き分けて、進んでいく修一と吉平。

男「どなたか、いらっしゃいませんかー。1回1000円ですよー」

フラフラと吉平が男に近づいていく。

吉平「なあ、なにが1回1000円なんだ?」

男「ああ。そっか。それを言ってないから、誰も来なかったのか」

修一「あはは。ドジなやつ~」

男「1000円で3分間、殴り放題ってやつです」

吉平「あー、殴られ屋ってやつか」

修一「え? なにそれ?」

吉平「だから、そのまま。1000円で、3分間、好きなだけ殴っていいってやつだよ」

修一「ええー。そんなの1000円じゃ安すぎじゃね?」

吉平「その代わり、殴られる方は手は出さないけど、自由に避けていいんだよ」

修一「あー。なるほど。避けるのが上手いんだな」

吉平「そうそう。だから、元ボクサーとかがやってることが多いんだよ」

修一「へー。あんたも元ボクサーなの?」

男「いえ、違いますよ」

修一「だろうね。だって、悪いけど、そう見えないもん」

男「ははは……」

吉平「ボクサーじゃなくても、避けるのが上手い奴っていうのはいっぱいいるからな」

修一「じゃあ、1000円払っても、1発も殴れないで終わることもあるってことか?」

吉平「そりゃあるだろうね。っていうか、ほとんど、そうなるんじゃねーの?」

修一「えー。それじゃ、1000円払って、疲れるだけじゃん」

吉平「だから、1000円くらいでちょうどいいんだよ」

修一「うーん。2000円出すから、その場から動かないとかなら、やってもいいけどな」

吉平「いや、それはさすがに……」

男「いいですよ。それで」

修一「嘘! いいの?」

吉平「あー、わかった。あれだろ。顔しか殴っちゃダメってルールなんだ。だから、その場から動かなくても避けれるんだよ、きっと」

修一「あー、なるほど。腹とか殴っちゃダメなのか」

男「別に顔だけじゃなくてもいいですよ」

吉平「おいおいおい、マジか!」

修一「じゃあさ、じゃあさ、3000円出すから、避けないとかあり?」

吉平「さすがにそれはないだろ」

男「いいですよ」

修一「えー、ホントに?」

吉平「あんた、ホントにいいの?」

男「ええ。そちら側が良ければ」

修一「じゃあ、やるよ、やるやる! 俺、一度でいいから人を殴ってみたかったんだよ」

吉平「なら、俺もやろうかな」

男「わかりました。では、お二人ともやるということで」

修一「ああ」

吉平「やるよ」

男「それじゃ……」

男がガサガサとポケットを探る音。

男「はい、3000円ずつ、どうぞ」

修一「え?」

吉平「へ?」

終わり。

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