1回1000円
- 2023.11.07
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:3人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
修一(しゅういち)
吉平(きっぺい)
男
■台本
夜の街中。
多くの人で賑わっている中、吉平と修一が歩いている。
吉平「なあ、もう一軒、行かね?」
修一「ならさ、キャバクラとかにしとく?」
吉平「おおー、いいね」
修一「じゃあ……」
ザワザワと騒がしい。
修一「ん? なんだなんだ?」
吉平「人が集まってるな。行ってみようぜ」
人を掻き分けて、進んでいく修一と吉平。
男「どなたか、いらっしゃいませんかー。1回1000円ですよー」
フラフラと吉平が男に近づいていく。
吉平「なあ、なにが1回1000円なんだ?」
男「ああ。そっか。それを言ってないから、誰も来なかったのか」
修一「あはは。ドジなやつ~」
男「1000円で3分間、殴り放題ってやつです」
吉平「あー、殴られ屋ってやつか」
修一「え? なにそれ?」
吉平「だから、そのまま。1000円で、3分間、好きなだけ殴っていいってやつだよ」
修一「ええー。そんなの1000円じゃ安すぎじゃね?」
吉平「その代わり、殴られる方は手は出さないけど、自由に避けていいんだよ」
修一「あー。なるほど。避けるのが上手いんだな」
吉平「そうそう。だから、元ボクサーとかがやってることが多いんだよ」
修一「へー。あんたも元ボクサーなの?」
男「いえ、違いますよ」
修一「だろうね。だって、悪いけど、そう見えないもん」
男「ははは……」
吉平「ボクサーじゃなくても、避けるのが上手い奴っていうのはいっぱいいるからな」
修一「じゃあ、1000円払っても、1発も殴れないで終わることもあるってことか?」
吉平「そりゃあるだろうね。っていうか、ほとんど、そうなるんじゃねーの?」
修一「えー。それじゃ、1000円払って、疲れるだけじゃん」
吉平「だから、1000円くらいでちょうどいいんだよ」
修一「うーん。2000円出すから、その場から動かないとかなら、やってもいいけどな」
吉平「いや、それはさすがに……」
男「いいですよ。それで」
修一「嘘! いいの?」
吉平「あー、わかった。あれだろ。顔しか殴っちゃダメってルールなんだ。だから、その場から動かなくても避けれるんだよ、きっと」
修一「あー、なるほど。腹とか殴っちゃダメなのか」
男「別に顔だけじゃなくてもいいですよ」
吉平「おいおいおい、マジか!」
修一「じゃあさ、じゃあさ、3000円出すから、避けないとかあり?」
吉平「さすがにそれはないだろ」
男「いいですよ」
修一「えー、ホントに?」
吉平「あんた、ホントにいいの?」
男「ええ。そちら側が良ければ」
修一「じゃあ、やるよ、やるやる! 俺、一度でいいから人を殴ってみたかったんだよ」
吉平「なら、俺もやろうかな」
男「わかりました。では、お二人ともやるということで」
修一「ああ」
吉平「やるよ」
男「それじゃ……」
男がガサガサとポケットを探る音。
男「はい、3000円ずつ、どうぞ」
修一「え?」
吉平「へ?」
終わり。
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