再会は全国で
- 2023.11.12
- 映像系(10分~30分)
■概要
人数:5人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
泰正(たいせい)
雄吾(ゆうご)
優紀(ゆうき)
男1~男2
■台本
〇柔道の道場
泰正(9)と雄吾(9)が柔道で勝負している。
全体の練習自体は終わっていて、他の人たち(年齢はバラバラ。大人もいれば学生もいる)は壁際で2人を見ていたり、話しをしていたりしている。
泰正「うおおおおお!」
雄吾「おらああああ!」
組み合ったまま二人がダダダダと走り、ガンと壁に激突する。
それを見て、周りの人たちが笑う。
泰正「くそ! まだだ!」
雄吾「おりゃあああ!」
必死に組み合っている二人を見て、大人たちがほほ笑みながら見ている。
男1「若いっていいなぁ」
男2「泰正と雄吾は特別でしょ。それに、試合が近いから燃えてるんだろ」
男1「同じ階級なんだっけ?」
男2「ああ。確か、試合での結果が、3勝3敗らしい」
男1「なるほど。次で決着ってわけね」
2人の組合がさらに激しくなっていく。
泰正「おらおらおら!」
雄吾「おうおうおう!」
2人は楽しそうに柔道をしている。
〇学校・教室内
教室内は賑わっている。
そんな中――。
雄吾「どういうことだよ!」
雄吾の声で教室内がピタリと静まり返る。
泰正と雄吾が向かい合っていて、泰正が俯いている。
雄吾は怒った表情。
2人の間を取り持つように、優紀が入って来る。
優紀「まあまあ。泰正くんは悪くないって。親の問題なんだからさ」
雄吾「お前は黙ってろ!」
泰正「……」
雄吾「何とか言えよ」
泰正は苦悶の表情を浮かべるが、顔を上げたときはにやけ顔になっている。
泰正「いやいやいや。んなに怒ることじゃないだろ。引っ越しくらいでよ」
雄吾「はああ? お前、舐めてんのかよ!」
雄吾が泰正の胸ぐらをつかむ。
優紀「ちょ、ちょっと雄吾くん」
雄吾「今度の大会、どうするんだよ! 次で決着って言ってただろ!」
泰正「お前の勝ちでいいよ。不戦勝で」
雄吾「ふざけんな!」
泰正「正直さ、お前の暑苦しさにはうんざりしてたんだよ。次の学校に行ったら、柔道はやめようと思ってたしちょうどよかった」
雄吾「っ! お前、本気で言ってんのかよ?」
泰正「次はもっと格好いいスポーツやるよ。俺は」
雄吾「……勝手にしろ!」
乱暴に手を放して、ズカズカと歩き、教室を出て行く雄吾。
泰正「……」
〇裏庭
泰正が一人で木の前にたたずんでいる。
泰正「くそっ!」
泰正が木に向かって、パンチをする。
そこに優紀がやってくる。
優紀「やっぱり、嫌だったんだね、引っ越し」
泰正「……」
泰正が振り向き、うつむく。
泰正「当たり前だろ」
優紀「……」
泰正「あいつと……雄吾と約束してたんだ。次で決着だって。どっちが勝っても、恨みっこなしだって」
優紀「……4年前からだっけ? 柔道始めたの」
泰正「ああ。周りに、俺と同じくらいの年齢のやつがいなくてさ、面白くなくて辞めようかなって思ってた時にあいつが道場に入って来たんだ」
優紀「……」
泰正「あいつさ、すぐ上手くなって、練習試合でも勝ったり負けたりするようになった」
優紀「ライバルになったってこと」
泰正「ああ。あいつがいたから、俺はずっと柔道を続けられたし、楽しいって思えたんだ」
優紀「……決着、つけられないの、悔しい?」
泰正「当たり前だろ。ずっと……ずーっと、そのために練習してきたんだからさ」
優紀「たぶんね」
泰正「……?」
優紀「雄吾くんも、それを泰正くんの口からききたいんだと思うよ」
泰正「……!」
優紀「雄吾くんだって、わかってるはずだよ。どうしようもないことだって」
泰正「……そう、だよな」
優紀「泰正くんと同じくらい、雄吾くんだって悔しいと思ってるはずだよ」
泰正「……」
優紀「雄吾くんなら、体育館の裏にいたよ」
泰正「ありがとな!」
走っていく泰正。
〇体育館裏
雄吾が一人で打ち込みの練習をしている。
泰正「雄吾!」
雄吾が動きをとめ、振り向く。
雄吾「……泰正」
泰正「ごめん。柔道を辞めるなんて、無理だ」
雄吾がニッと笑う。
雄吾「だろうな」
泰正「なあ、雄吾」
雄吾「ん?」
泰正「全国でやろうぜ」
雄吾「え?」
泰正「俺たちの結着」
雄吾「いや、お前、そんなの……」
泰正の笑みを見て、雄吾がハッとする。
そして、雄吾も二ッと笑顔になる。
雄吾「そうだな。どうせなら、派手に着けたいよな、決着」
泰正「俺はお前と当たるまで、絶対に負けない」
雄吾「俺もだ」
泰正「次会うときは全国大会の会場だな」
雄吾「ああ」
二人がそれぞれ拳を出して当てる。
そして、二人ともが不敵の笑みを浮かべる。
〇教室内
泰正と雄吾が向かい合っている。
泰正は俯いていて、雄吾は無表情。
雄吾「……」
泰正「あー、えっと……親父の単身赴任だったみたい」
雄吾「……ふざけんなー!」
終わり。