ストーカー
- 2023.11.15
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:2人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
正樹(まさき)
健斗(けんと)
■台本
朝。通学路。
正樹が歩いていると、健斗が走って来る。
健斗「正樹! 聞いてくれ!」
正樹「……朝から、テンション高いな、健斗は」
健斗「なんと、俺に、ストーカーができたんだー!」
正樹「……」
健斗「あれ? リアクション薄くね?」
正樹「あー、すまん。理解と感情が追い付かなくてな。えーっと、なんだって?」
健斗「だーかーら! ストーカーができたんだよ!」
正樹「……それ、喜ぶところか?」
健斗「バッカだなー! ストーカーだぞ、ストーカー」
正樹「……デメリットの塊だと思うんだが?」
健斗「ふう。正樹は甘いな。ゲロ甘だ」
正樹「甘いもんは好きじゃねー」
健斗「つまり、ストーカーするってことは、それだけ、俺のことを好きってことだろ?」
正樹「んー? あー、まあ、そうか。……そうだよな」
健斗「ってことは、これはもう、彼女が出来たと同義じゃねーかってこと」
正樹「……確かに、相手がお前のことが好きで、お前がオッケーって言えば、付き合うことになるな」
健斗「だろ? うわー、うわー! テンション上がるわー」
正樹「けど、いいのか?」
健斗「なにが?」
正樹「ストーカーするような人間だぞ? 人格が崩壊してる可能性が高いぞ」
健斗「そうかなぁ? 想いが強いだけだろ」
正樹「……ここに予備軍がいたか。けど、お前はずっと見られてて嫌じゃないのか?」
健斗「ぜーんぜん! むしろ、俺のことを好きな子に見られてると思うと、興奮する」
正樹「あー。なるほど。人格崩壊してる同士なら上手くいくかもな」
健斗「可愛い子だといいなぁ」
正樹「ん? 相手の顔、知らないのか?」
健斗「隠れるのが上手くてさー。顔が見れないんだなー、いつも」
正樹「気のせいってことはないのか?」
健斗「ないね。視線をビンビンに感じるし。今も」
正樹「今も?」
健斗「家を出るときから……いや、起きたときから感じるかな」
正樹「すごいな。お前なんかを見るために、そこまでするなんて」
健斗「だろー?」
正樹「……で、どうすんだ?」
健斗「なにが?」
正樹「なにがって……見られてるだけじゃ、付き合えないだろ」
健斗「あ、そっか!」
正樹「……」
健斗「うーん。どうしようかなぁ。見られてるって状況も、興奮するんだけど……。それがなくなると思うと、寂しくもある」
正樹「……あっそう」
健斗「……はっ! 閃いた! 付き合ってからも、ストーキングしてもらえばいいんだ! 俺って頭いいー!」
正樹「……」
場面転換。
教室で一人、日誌を書いている正樹。
そこに、ガラガラっとドアが開いて、健斗が入って来る。
健斗「あっ! やっと見つけた!」
正樹「……騒がしいのが来やがった」
健斗「なにやってんだ?」
正樹「日誌だよ。今日、日直だったからな」
健斗「それより聞いてくれ! 俺のストーカーが誰か、わかったんだ」
正樹「へー」
健斗「隣のクラスの糸井真菜(いとい まな)ちゃんだ! 間違いない! 顔をはっきり見た」
正樹「すごいなー」
健斗「もっと、興味持てよ!」
正樹「持てるか! 変態同士の話なんて」
健斗「ってことで、真菜ちゃんの教室に突撃するから付き合ってくれ」
正樹「えーっと、色々突っ込みたいけど、今行ってもいないだろ」
健斗「ふっふっふ。ストーカーしてる相手から、自分が知らないうちに机とか見られるのって興奮しないか?」
正樹「……ストーカにストーカーし返すのか。すまん。常識的な観点で、どこが興奮するかわからない」
健斗「ってことで行くぞ」
正樹「俺を巻き込むな……」
場面転換。
ガラガラとドアを開く音。
健斗「よし、誰もいないな」
正樹「けど、どこの席かわからなくないか?」
健斗「その辺はリサーチ済みだ」
正樹「なんなんだよ、お前のそういう部分の謎の行動力は」
健斗「えーっと、あ、ここだ!」
健斗と正樹が真菜の席の前に立つ。
健斗「……ここが、ストーカーの……真菜ちゃんの席。はあ、はあ、はあ」
正樹「もう、どっちがストーカーかわからんな」
健斗「さすがに机を舐めるのはヤバいよな?」
正樹「ああ。お前の思考がかなりヤバいよ」
健斗「頬ずりだけにしとくか」
正樹「……こんな変態のどこがいいんだろうな」
健斗「むっ! 見ろ! こ、こ、これは……ノートだ!」
正樹「そりゃ、学校だし、ノートくらいあるだろ」
健斗「見ろよ、このマル秘って文字を!」
正樹「ああ、デカデカと表紙に書いてるな」
健斗「お前、中身見てくれ」
正樹「なんでだよ」
健斗「他人が人のノートを見るのは良くないだろ」
正樹「それを人にやらせようとするなよ!」
健斗「頼む! 何が書いてあるか知りたいんだ!」
正樹「……はあ。なんで、変態の板挟みにあわないとならないんだ」
ノートを手に取り、開く。
正樹「……あー」
健斗「どうした?」
正樹「いや、その、お前のことがびっしりと書かれてるよ」
健斗「マジかー! よっしゃー!」
正樹(N)「そう。確かに、こいつのことがびっしりと書かれていた。タイトルに『変態の生態について』とも書かれていたのだが……」
終わり。