キスを狙え

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■概要
人数:2人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
颯太(そうた)
美優(みゆ)

■台本

颯太(N)「今日は美優ちゃんとの10回目のデート。……今日こそは! 今日こそは! 美優ちゃんとキスまでいくぞーーー!」

場面転換。

颯太が駅前で待っている。

そこに美優が走って来る。

美優「颯太くん、お待たせー」

颯太「美優ちゃん! 俺も今来たところだから、全然待ってないよ」

美優「そっか。よかった。じゃあ、行こっか」

颯太「う、うん」

美優「あはは。どうしたの? なんか、緊張してない?」

颯太「そ、そんなことないよ」

美優「まずはどこに行くんだっけ?」

颯太「水族館だよ」

美優「へー、楽しみー」

場面転換。

水族館を歩く颯太と美優。

美優「あはは。見て見て。変な顔のお魚さん」

颯太「そうだね」

美優「それにしてもさー」

颯太「なに?」

美優「なんか、お客さん、少ないね」

颯太「そそ、そうかな? いつもこんな感じなんじゃない?」

美優「そっかぁ」

颯太(N)「よし。計画通り。客が少ない水族館を選んだのは成功だな。暗いかつ幻想的な雰囲気。キスまで持って行くには絶好の場所だ」

颯太「あ、美優ちゃん。エイだって」

美優「ホントだ。大きいねー」

颯太「……」

美優「……」

颯太「ね、ねえ、美優ちゃん」

美優「なに?」

颯太「今日も、綺麗だよ」

美優「……」

颯太(N)「よし、良い雰囲気! 今だ! いけ!」

美優「あ! ペンギンだってー」

美優が歩き出す。

颯太「……くっ。失敗か」

場面転換。

カフェの中。

そこそこの混雑具合。

美優「へー。おしゃれなお店だね」

颯太「でしょ? 今、人気なんだって」

美優「なんか、カップルが多いね」

颯太「なんか、今、カップル割引やってるんだって」

美優「そうなんだ」

颯太(N)「オシャレなお店で、周りはカップルがいっぱい。そして、結構、色んなところで、キスしてるカップルもいる。ここなら、自然にキスを狙えるはずだ」

颯太「きょ、今日はさ、美優ちゃんとの10回目のデートでしょ?」

美優「そうだっけ?」

颯太「だから、特別なお店に来たかったんだ」

美優「ふふ。ありがと。嬉しいよ」

颯太「……」

美優「……」

颯太(N)「よし、手を握れた。このまま、顔を近づければ……」

美優「あ、この抹茶ラテ、おいしー!」

颯太「そ、そう?」

美優「うん。颯太くんのも、アイス解けちゃうよ」

颯太「そうだね……」

颯太(N)「くっ。失敗。だが、まだまだ策はある。大丈夫だ」

場面転換。

颯太と美優が小高い丘の道を歩いている。

美優「ふふ。もう秋だねー。結構、涼しくなってきたよね」

颯太「そうだね……」

颯太(N)「くそー! 俺の作戦がことごとく失敗する……。なぜだ? まあ、いい。ラストだ。この作戦に全てをかける!」

颯太「あ、見えてきたよ。展望台」

美優「うわーー! きれー!」

颯太「でしょ? ここ、町が綺麗に見えるんだ。夕日の赤も重なって、すごくいい感じでしょ?」

美優「うん! ……ホント、綺麗」

颯太「……美優ちゃん」

美優「……颯太くん」

颯太「……」

美優「……くしゅん!」

颯太「え?」

美優「あはは。ちょっと、寒くなってきたね」

颯太「そ、そうだね……」

美優「そうだ。さっき、自販機で温かいココア買ったんだった」

颯太「そういえば、買ってたね」

ガサガサとココアの缶を取り出し、開けて飲み始める美優。

美優「はー。温まるなぁ」

颯太「……」

颯太(N)「ここでもダメだった。あとはもう帰るだけ。……今日もキスは無理か……」

美優「はい。颯太くんも一口。温まるよ」

颯太「ありがとう」

受け取って、一口飲む。

颯太「あ、ホントだ。温まるね」

美優「でしょ」

颯太が美優にココアを返す。

美優「私、このココアすごく好きなん……あっ!」

颯太「どうしたの?」

美優「颯太くんと間接キスしちゃった」

颯太「……」

颯太(N)「美優ちゃんとキスはできなかったけど、これはこれでよかったかな」

終わり。

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