■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
勇正(ゆうせい) 8歳
宮本(みやもと) 27歳
田代(たしろ) 8歳
女生徒 8歳
生徒1~4 8歳
■台本
勇正(N)「僕のクラスの担任の宮本先生はとっても人気がある。クラスのみんなも、お母さんたちも、宮本先生はいい先生だと言っている。もちろん、僕も宮本先生はいい先生だと思うし、好きだ。できれば、来年も、宮本先生が担任だと良いなって思ってる」
場面転換。
学校の玄関。
たくさんの生徒を見送っている宮本。
生徒1「宮本先生、さようなら」
宮本「おう、気を付けて帰れよ」
田代「先生、さようなら」
宮本「あ、田代。明日は調理実習だから、エプロン忘れるなよ」
田代「うん、わかったー」
生徒2「せんせー、宿題難しいよー。もっと簡単野にして」
宮本「ははは。わからなくていいから、考える努力をしてみろ。明日、答え合わせするんだから」
生徒2「んー。もう少し宿題減らしてよ」
宮本「やっぱり、そっちが本音か」
勇正(N)「宮本先生はちゃんと生徒、一人一人のことを見てくれている。それがとっても、嬉しい。そして……」
場面転換。
教室内。ホームルーム。
宮本「……昨日、教室内の花瓶が割られてた。皆川が家から持ってきてくれたやつだ」
クラス中がザワザワと騒いでいる。
宮本「おそらく、ボール遊びをしてて割ってしまったんだと思う」
女生徒「なら、男子じゃない?」
生徒3「おい! 決めつけんなよ」
宮本「ちょっと待ってくれ。確かに教室でボール遊びをすることも、花瓶を割ってしまったことも悪いことだ。でもな、一番悪いことは、やってしまったことを隠すことなんじゃないか?」
教室内が静まり返る。
宮本「誰だって、失敗はしてしまうものだ。もちろん、先生だって失敗はする。たくさんな。それで、それを隠したいって思ったりもする。だけどな。黙っていれば、その失敗よりもずっと心の中に残ってしまうんだ。それが罪悪感ってやつだ」
静まり返ったままの教室内。
宮本「先生は、お前たちにそんな罪悪感をずっと持っていてほしくないんだ。先生も一緒に宮川の家に謝りに行く。怒れることなんて、一瞬だ。大丈夫。わざとじゃないなら、許してもらえる。……だから、割ってしまった人は、後からこっそり先生のところに来てくれ。……ってことで、この話は終わりだ。みんなは犯人を捜したりしないでくれ。自分がやられたら、いやだろ?」
勇正(N)「先生はこうやって、真剣に僕たちのことを見てくれる。子供だからってバカにしたりしないし、ちゃんと話を聞いてくれる」
場面転換。
放課後の教室。
生徒と雑談をしている宮本。
宮本「あはははは。それはすごいな」
生徒4「でしょ? 先生もやってみたら?」
宮本「んー。どうしようかな。今月ピンチだからな」
そのとき、ガラガラとドアが開く。
生徒2「せんせー。校長の銅像、壊しちゃった」
宮本「なんだとー!? ったく、だから、サッカーの時は気を付けろって言ったのに……。まあいい、謝りに行くぞ」
生徒2「えー」
宮本「えー、じゃない! 悪いことをしたら謝る。いつも言ってるだろ」
生徒2「うう……」
宮本「大丈夫。ちゃんと謝れば許してくれるさ」
生徒2「わ、わかった」
宮本「よし、じゃあ、行くぞ。……あ、お前は今週一週間、掃除当番な」
生徒2「そんなー」
宮本「悪いことをしたら罰も受けるものだ。ちゃんと覚えておけ」
生徒2「ちぇっ……」
勇正(N)「今では悪いことをしてしまったら、ちゃんと先生に言う人が多い。宮本先生は一緒に謝ってくれるし、ちゃんと罰を決めてくれる。罰が終わったら、なんかすっきりするのだ。まわりのみんなも、罰が終わったら、そのことを言う人はいなくなる。やっぱり、宮本先生は凄い」
場面転換。
ガラガラとドアが開き、勇正が入って来る。
勇正「先生、掃除終わった……。あれ? いない。どこ行ったんだろ?」
キョロキョロとする勇正。
勇正「ん? なんだろ、これ?」
勇正が歩いて、宮本の机のところへ歩く。
勇正「……女の子の人形?」
手に取るが、ポキッと音がする。
勇正「あっ!」
勇正(N)「どうしよう。手が取れちゃった」
勇正「……」
キョロキョロと辺りを見渡し、走って教室を出て行く勇正。
場面転換。
教室内。ホームルーム。
宮本「……昨日、先生のフィギュアを壊した生徒がいる」
教室内がザワザワと騒がしくなる。
宮本「みんな。静かにしてくれ」
徐々に静まり返る教室内。
宮本「みんな。目を瞑ってくれ。そして、やったものは素直に手上げてくれ」
勇正(N)「うう……。どうしよう? でも、先生はいつも言ってた。失敗することよりも黙ってることの方が悪いことだって。大丈夫。先生なら、きっと謝れば許してくれるはずだ」
勇正「……」
宮本「勇正だったか……」
教室内が騒がしくなる。
宮本「勇正、立て」
勇正「え? あ、はい」
宮本「……よくもやってくれたな、勇正」
勇正「ご、ごめんなさい! ちょっと触ったら、折れちゃったんです! 本当にごめんなさい」
宮本がバンと机を叩く。
宮本「謝って済むなら、警察はいらないんだ!」
勇正「ええっ!?」
教室内がわざわざと騒がしくなる。
宮本「いいか! あのフィギュアはな、限定品だったんだ! 限定品だぞ! 限定品! もう二度と手に入らないんだ!」
勇正「あ、あの、ごめんなさい」
宮本「(泣きながら)だから、謝って済む問題じゃないだろ! どーすんだよぉー!?」
勇正「えっと、あの……。明日、ボンド持ってきます」
宮本「くっ付ければいいってもんじゃねーーーー!」
勇正(N)「この後、僕はクラスのみんなの前で1時間くらい怒られた。でも、その後、宮本先生は校長先生に、学校に私物のフィギュアを持ってきたことを怒られてた」
勇正「はあ……(ため息)」
勇正(N)「来年は宮本先生が担任じゃないといいなぁ……」
終わり。