■概要
人数:3人
時間:10分程度
■ジャンル
ボイスドラマ、童話
■キャスト
かめ
うさぎ
きつね
■台本
ナレーション「昔々、あるところに、うさぎとかめがおりました。うさぎは足が速くて、ジャンプ力があり、そして、面倒見が良い性格なのでみんなの人気者でした。逆にかめは足が遅く、何をするにも失敗ばかりで、すぐに何でも諦めてしまう性格で、誰も友達がいなかったのです。そんなかめに、うさぎはいつもからかってばかりいたのでした」
かめが道を歩いている。
その後ろから、うさぎがやってくる。
うさぎ「よお、かめ。みんなが集まって遊ぶのはお昼からだぞ。こんなところにいて、間に合うのか?」
かめ「ああ、うさぎさんか……。いいんだよ、別に。行かないから」
うさぎ「おまえなぁ……。少しはそういうところに顔出したらどうだ? そんなんだから、友達ができねーんだぞ」
かめ「……別に。友達なんかいらないから」
そこにきつねがやってくる。
きつね「あれ? うさぎさんとかめじゃん。てか、なんで、かめなんかがうさぎさんと一緒にいんの?」
かめ「……単にうさぎさんに話しかけられただけで、一緒にいたわけじゃないよ」
きつね「ふーん。そんなことよりさー、うさぎさん。早くいこーよ。もう、みんな集まってんじゃね?」
うさぎ「そうだな。少し急ぐか。……なあ、かめ、一緒に来るか?」
きつね「いやいや。かめなんかと一緒だと、着くの明日の昼になっちゃうから」
かめ「そうだよ……。僕なんかに構ってないで、行きなよ」
きつね「だってさ。行こ」
うさぎ「あ、ああ……」
きつねとうさぎが行ってしまう。
かめ「……別に羨ましくないし。僕には僕の楽しみがあるんだから」
かめが歩き出す。
川の流れる音。
そこにかめがやってくる。
かめ「ふう、やっとついた。川原で石並べ。最高の贅沢だよね。一人でいるほうが気軽だし、好きなことできるし、みんなと合わせるなんて、疲れるだけだからね。僕は一人でいるのが一番楽しいんだ。さてと、さっそく始めようかな」
かめが川原の石を積み始める。
少しの間。
カラスの鳴き声。
かめ「うわっ! もうこんな時間。ちょっと集中し過ぎたかな」
そのとき、うさぎときつねがやってくる。
きつね「いやー、今日はめっちゃ楽しかったねー。うさぎさんのジャンプ、超サイコーって、あれ? かめじゃん?」
かめ「あ、うさぎさんと、きつねさん」
きつね「こんなとこで、なにやってんの?」
かめ「いや……別に」
うさぎ「なあ、この石の柱、お前が積み上げたのか?」
きつね「まっさかー。かめなんかが、こんなに高く積み上げられるわけないじゃん」
かめ「う、うん……。最初から積んであったよ」
うさぎ「ホントか?」
かめ「う、うん……」
うさぎ「……ふーん」
うさぎが石の柱を叩いて崩す。
かめ「ああっ! 崩すなんて、何するんだよ」
うさぎ「別にお前が積み上げたわけじゃないんだろ? なんで怒るんだよ」
かめ「そ、それは……」
きつね「なに? この石の柱に恋でもしてたとか? きゃはは!」
かめ「……」
うさぎ「ん?」
かめ「な、なんでもない……」
うさぎ「なあ、ホントはこれ、お前が作ったんじゃないのか?」
きつね「いや、ないない。あんなすごいの、かめが作れるわけないってば」
かめ「そ、そうだよ。僕なんかじゃ無理だよ」
きつね「……俺さ。お前みたいなウジウジしたやつ嫌いだ」
かめ「え?」
うさぎ「お前をみんなの前で恥、かかせてやる。俺と勝負しろよ」
かめ「うさぎさん、何言ってるの?」
きつね「そうだよ、何、熱くなってる系? こんなやつ放っておけばいいじゃん」
かめ「そ、そうだよ。僕のことなんて放っておいてよ」
きつね「いや、お前を見てたら、なんか凄くイライラしてきた。徹底的にやってやるよ」
かめ「そんな……」
きつね「でも、なにで勝負すんの?」
うさぎ「石積みで勝負だ。どっちが高く積めるか」
かめ「え?」
うさぎ「明日の昼から夕方までだ」
きつね「まあ、勝負は決まってっけど、面白そうだから、みんな集めて見に来るね」
うさぎ「ああ。できるだけ多く集めてくれ。みんなの前で、こいつを恥かかせてやる」
かめ「……そんな」
うさぎ「わかってると思うけど、逃げるなよ」
かめ「……無理だよ。僕がうさぎさんに勝つなんて」
うさぎ「そうだな。お前は何をやっても無駄だ。ずっとウジウジしてるのがお似合いだよ」
かめ「……」
うさぎ「じゃあ、また明日な」
フクロウが鳴く声。
夜にかめがつぶやく。
かめ「うう……どうしよう。僕なんかが勝負なんて無理だよ。でも、逃げても絶対に捕まるし……。もう、最悪だよ……」
川の流れる音。
ワイワイと大勢が集まっている。
そこにかめがやってくる。
うさぎ「おう、逃げずに来たな」
かめ「……」
うさぎ「始めるか。きつね、号令、頼む」
きつね「おけおけ。じゃ、石積み勝負、スタート!」
歓声が沸き上がる。
かめ「よいしょ、よいしょ」
かめが石を積み始める。
うさぎ「……ふん」
きつね「あれ? うさぎさん、なんで寝転がるし?」
うさぎ「ん? いや、相手はかめだからな。ハンデだよ、ハンデ」
きつね「なるー。それでも、うさぎさんのあっしょーだよねー」
かめ「うんしょ、うんしょ」
かめが石を積み上げ続ける。
少しの間。
うさぎ「さてと。そろそろ、俺も開始するか……って、まだ、それだけしか積んでないのかよ」
かめ「うんしょ、うんしょ」
うさぎ「まあいいや」
うさぎが石をすごい勢いで積み始める。
きつね「おお! さすが、うさぎさん! すごい早さで積み上げ始めたー」
かめ「ここから。ここからは慎重に……」
きつね「かめは相変わらずの遅さだし」
かめ「ゆっくり、慎重に……」
うさぎ「ふん!」
うさぎが石を積み続けるが……。
うさぎ「あっ!」
石が崩れる。
きつね「うさぎさんの石が崩れちゃった!」
うさぎ「大丈夫だ、まだ余裕で抜けるって」
きつね「ですよねー」
かめ「うんしょ、うんしょ」
うさぎ「あっ! くそ!」
また、うさぎの石が崩れる。
きつね「急いで、うさぎさん! そろそろ、時間ヤバいよ!」
うさぎ「うるさい! 難しいんだよ!」
かめ「うんしょ、うんしょ」
うさぎ「あ、また!」
うさぎの石が崩れる。
うさぎ「……」
きつね「うさぎさん? どしたの?」
うさぎ「まいった」
かめ「え?」
うさぎ「俺の負けだ。その高さまで積める気がしない」
きつね「これは意外っしょ! なんと、かめの勝ちが確定したっぽい!」
観客たちの歓声が響く。
うさぎ「やっぱり、あれはお前が積んだ石の柱だったんだな」
かめ「……うさぎさん」
うさぎ「お前、すごいな。こんなに高く石を積めるなんて」
かめ「そ、そんなことないよ。僕なんか全然」
うさぎ「おいおい。それなら、負けた俺はどうなんだよ。もっとみじめってことか?」
かめ「え? 別に、そういうわけじゃ……」
うさぎ「なあ、お前、もっと自信持てよ。お前、すごいやつなんだからさ」
かめ「でも……」
きつね「いや、ホント、かめってすごいね! マジ、見直した感じ!」
かめ「え?」
うさぎ「今度、俺にも石の積み方、教えてくれよ」
きつね「あ、それあたしも教えてほしい!」
かめ「う、うん。いいよ」
うさぎ「よし! じゃあ、今度はみんなで石積み大会だ!」
わーっと歓声が上がる。
かめ「……うさぎさん、ありがとう」
うさぎ「ん? なんのことだ?」
ナレーション「こうして、かめはうさぎとの勝負に勝ったことより、人気者になりました。そして、たくさんの友達ができ、毎日をみんなと楽しく過ごしたのでした。めでたしめでたし」
終わり