■概要
人数:6人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、異世界、コメディ
■キャスト
宇佐美 冥土
アリア(店長)
ルナ
クレイ
客
■台本
店内には大勢の女性客が賑わっている。
女性客「クレイ様! 紅茶をお願いします」
クレイ「かしこまりました」
アリア「宇佐美くん、これは……」
冥土「ど、どういうことだ?」
ルナ「クレイの仕業ですわ。町で大規模な広告を打ちましたの。女性をおもてなしする店があるっていう内容を」
アリア「ちょっと待ってよ! それじゃ、クレイさん目当ての人ばかりってことじゃない」
クレイ「言いがかりはやめてください。私は女性をもてなすとしか言ってません。私が、とは書いてません。勝負はフェアじゃなければ意味がありませんからね」
アリア「宇佐美くん、今日は私がフォローするから、宇佐美くんはご主人様を奉仕して」
冥土「わ、わかった」
場面転換。
冥土「こ、こんにちは、ご主人様」
女性客「え? あ、はい、こんにちは」
冥土「……」
女性客「……」
冥土「えっと、いい天気ですね」
女性客「え、ええ。そうですね。……あの、あちらの人とのトークタイムをお願いしたいんですけど……」
冥土「くっ……」
クレイ「ご主人様、ご指名ありがとうございます。お近づきの挨拶に手にキスをさせていただけますでしょうか」
女性客「きゃーー! 素敵―」
場面転換。
アリア「4日間で、クレイさんが40人で、宇佐美くんは……1人よ」
冥土「く、くそ……まずいな」
場面転換。
大勢の女性客で賑わっている店内。
冥土「こんにちは。冥土です。お、お近づきの挨拶に、キスを……」
女性客「い、いえ……遠慮します」
ツカツカとルナがやってくる。
ルナ「お兄様、ちょっといいですの?」
冥土「すまない。俺は……」
ルナ「いいから、来てください」
冥土「……え?」
場面転換。
ルナ「いいですの、お兄様。クレイの真似をしても勝てないですわ。第一、慣れないことで、殺気が出てますわよ」
冥土「だが……」
ルナ「お兄様はお兄様の魅力で勝負するんですの」
冥土「俺の魅力?」
ルナ「お兄様は自然体でいいんですの。何も考えず、いつも私にしている奉仕をするんですの、いいですわね?」
冥土「……わかった」
場面転換。
ルナ「お兄様、食べさせてくださいませ」
冥土「ご主人様。子供じゃないんだから、自分で食べてください」
ルナ「じゃあ、自分で食べますわ……あっ」
冥土「まったく、何をしてるんだ。ほら、こっち向け。口を拭ってやる」
ルナ「ねえ、お兄様、悩みがあるんでの」
冥土「聞いてやるけど、気の利いた答えは出せないぞ」
ルナ「いいんですの。聞いてくださるだけで」
女性客「あ、あの……いいですか?」
アリア「はい、なんでしょう?」
女性客「あの人とトークをお願いしたいんですけど」
アリア「え? あ、はい! 喜んで! 宇佐美くん、3番のご主人様から指名です」
冥土「え?」
ルナ「いいですの、お兄様。あの人を私だと思って接してください」
冥土「……ん? わかった」
場面転換。
大勢のお客で賑わっている店内。
女性客1「冥土さんとチェキお願いします」
女性客2「冥土さんとトークお願いします」
クレイ「くっ!」
冥土「はい、喜んで」
アリア「ねえ、ルナさん。これってどういうこと?」
ルナ「お兄様の武器は、Sなところがありつつも、面倒みがいいところですわ。普段は冷たそうな感じなのに、何かあったら優しく面倒を見てくれる。女性はそんなギャップに弱いものですわ」
アリア「あー、確かに……」
場面転換。
アリア「では、結果発表です。クレイさんは51人。宇佐美くんは……52人です!」
ルナ「やりましたわ!」
冥土「ほっ……」
クレイ「見事です、冥土さん。私の完敗です」
冥土「いや、あんたのおかげで、俺のメイドの強みがわかった。感謝してる」
クレイ「ふふふ。あなたは懐が深い。お嬢様が気に入られるのもわかります」
ルナ「ふふん。当然ですわ」
場面転換。
アリア「宇佐美くん、こっちの仕込みお願い」
冥土「ああ……」
その時、ドアが開く。
クレイ「遅れてすみません」
アリア「あれ? クレイさん、どうしたんですか? まだ、開店前なんですけど」
クレイ「約束です」
アリア「約束?」
クレイ「私が負けたらこの店に人を派遣すると言ったはずですが」
アリア「ああ、そういえば……」
冥土「まさか……」
クレイ「ええ、私が今日からこの店で働かせていただきます」
アリア「ええ!」
冥土「どういうつもりだ?」
クレイ「いえ、私もまだまだ奉仕道が甘いようです。あなたの元で色々勉強させてもらいますよ」
冥土「……」
アリア「……」
冥土(N)「人手の問題は解決したが、また面倒な問題ができたようだ……」
終わり。