【声劇台本】いきなりラストバトル8

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■概要
人数:4人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、学園、ファンタジー、コメディ

■キャスト
蓮(れん)
茉奈(まな)
烈兎(れっと)
女性

■台本

大勢の人々の悲鳴。

魔物の恐ろしい咆哮が響く。

烈兎「蓮! いくで!」

蓮「ああ、任せとけ!」

蓮が走り、ジャンプする。

蓮「はああああ! 烈火斬!」

バシュっと魔物が切れる音。

魔物が断末魔を上げ、倒れる。

烈兎「やったな、蓮!」

蓮「言っただろ、任せておけって」

烈兎「ふふ、さすが蓮や。ワイが見込んだ男なだけあるわ」

蓮「いや、俺の力だけじゃない。烈兎、お前がいてこそだ」

烈兎「ははは。なんか、照れるな」

蓮「これからも頼むぜ、相棒」

烈兎「ああ、任せとき!」

女性が走り寄ってくる。

女性「あの……ありがとうございました」

蓮「礼なんて無用さ。俺は勇者として当たり前のことをしただけだからな」

女性「ああ……。勇者様。素敵」

烈兎「コラコラ! 蓮に惚れたらあかんで。この男はこれから魔王を倒すという使命があるんや。それくらいスケールのデカい男が、一人の女に収まるわけないわ」

蓮「おいおい。何を言ってるんだよ。こんな素敵な女性に対して。……あなたはとても美しい。俺なんかよりも、きっとふさわしい人が見つかるはずさ」

女性「勇者様……。ですが私はあなたに命を救われました。なにかお礼をさせていただきたいのです」

蓮「それじゃ、必ず幸せになってくれ。それが俺にとっての最高の礼になる」

女性「勇者様……」

蓮「さあ、いくぞ、烈兎」

烈兎「ああ」

蓮が歩く横を烈兎が飛んでいる。

烈兎「蓮、あれは逆効果やで。ありゃ、完全に蓮に惚れたぞ」

蓮「そうか?」

烈兎「ったく、ホンマ、蓮は天然のタラしやで」

蓮「そんなことはどうでもいいから、早く行くぞ。今も、魔王は暴れているんだ。一刻も早く、倒さないといけないんだろ」

烈兎「ああ、その通りや」

烈兎(N)「平和のひと時。それは魔王の復活により、あっさりと崩れ去ってもうた。魔王軍の侵攻は素早く、学生だった蓮の生活は地獄に日々に変わったんや。彼女だった、茉奈が目の前で殺されたことで、蓮は魔王に復讐を誓い、あれほど嫌がっていたワイとの契約も驚くほど自然に受け入れくれた。今の蓮を動かすのは、魔王への憎しみや。茉奈の仇を討つためなら、命さえも平気で投げ出すやろ。……けど、そんなことはさせん。ワイは絶対に蓮を死なせへんで。必ず、二人で平和を取り戻すんや!」

蓮「んなわけねーだろ!」

蓮が烈兎の頭を掴み、アイアンクローをする。

烈兎「ぎゃー! 潰れる! ホンマ、ヤバいって! あ……あかん、気持ちよくなってきた。これガチで逝くやつやで」

蓮「人様の夢の中で好き勝手やりやがって、なんのつもりだ?」

烈兎「いやいやいや。ほら、あれや! 一日勇者体験ってやつやで。どや? 案外悪くないやろ?」

蓮「余計、嫌気がさした。絶対に、契約はしない。もう諦めろ」

烈兎「そんなこと言うなや。な? ちょっと、契約してくれるだけでいいんや。こんなこと頼めるの、蓮しかおらんのや」

蓮「っていうか、お前、宇賀神だっけ? そいつと、もう契約してるだろ」

烈兎「……あれは契約やない。支配や。ワイは奴隷として、日々、こき使われてるんやで」

蓮「日頃の行いだな。まあ、自業自得じゃないのか?」

烈兎「あれは違法な契約なんや。だから蓮と正式な契約を結べば、不履行になって、ワイは解放されるっちゅーわけやで」

蓮「なるほど。わかった」

烈兎「おお、わかってくれたんやな」

蓮「尚更、契約はしない。逆に言うと正式な契約さえしなきゃ、お前はあいつに縛られてるってことだろ?」

烈兎「鬼! 悪魔! 変態!」

蓮「何とでも言え。とにかく、契約する気はない。さっさと俺の夢から消えろ」

烈兎「ふっふっふ。今回ばかりは絶対に契約を結んでもらうで」

蓮「俺の話を聞いてたか? 絶対にしない」

烈兎「ま、ええ。気長に待つわ」

蓮「いくら待ったところで、気は変わらないぞ」

烈兎「果たして、ホンマにそうかな? 1、2年も待てばさすがの蓮でも気が変わるんやないか?」

蓮「……ちょっと待て。まさか……」

烈兎「そのまさかや。蓮の夢はワイが支配しとる。つまり、ワイは蓮の夢に居座り続けられるんや」

蓮「そんなの、目を覚ませば済むことだろ?」

烈兎「できるもんならな」

蓮「目覚めろ、俺。目覚めろ目覚めろ目覚めろ……。あれ?」

烈兎「あかんあかん。言うたやろ。夢を支配しとるって。夢の中におる蓮が現実の自分に干渉できへんようにしてあるんや」

蓮「貴様……」

烈兎「さあ、さっさとワイと契約するんやな。それとも、三年寝太郎ってあだ名になりたいんか?」

蓮「卑怯だぞ」

烈兎「今更何を言っとるんや。初めからワイは卑怯やで」

蓮「確かに……」

烈兎「さあ、ワイと契約するんや! さあ! さあ! さあ!」

蓮「くっ!」

烈兎「そろそろ、学校の時間やで? 遅刻してもいいんか?」

蓮「……急に脅しの規模が小さくなったな」

烈兎「ワイと契約して、バラ色のモテモテハーレム勇者人生を歩もうや」

蓮「いや、俺は……」

そのとき、ドンと衝撃が走る。

蓮「うおっ!」

烈兎「あっ!」

ブツとなにかが途切れるような音。

茉奈「おっはよー。蓮ちょん、ガッコ―行こ!」

蓮「……茉奈か。はあ……。助かった」

茉奈「ん? なんの話?」

蓮「実は……」

場面転換。

茉奈「なるほどねー。じゃあ、私は蓮ちょんの命の恩人ってわけだね?」

蓮「少し大げさな気がするけど、まあ、そうなるかな」

茉奈「じゃ、デート」

蓮「……何の話だ?」

茉奈「デートして!」

蓮「なんでだよ」

茉奈「命の恩人のお願いをきけないっていうの!」

蓮「それはお願いじゃなくて脅しだ!」

茉奈「やーだー! やーだー! デートするのー!」

蓮「駄々をこねるな! ……っていうか、お前、なんで普通にここにいるんだ?」

茉奈「何の話?」

蓮「俺の部屋の中に、なぜ当然のようにいるんだ?」

茉奈「だって、彼女だし?」

蓮「面倒くさいから突っ込まないぞ。どうやって入った?」

茉奈「え? ピッキングで普通に開けたけど」

蓮「普通じゃねえし、犯罪だ! 罰として、助けてくれた分は相殺だ」

茉奈「えええーー!」

蓮「えええ、じゃねえ!」

蓮(N)「はあ……。俺の平和な日常がドンドン壊されていく。俺にとっては普通通りの日常が一番なんだが……」

終わり。

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