■概要
人数:3人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
亮二(りょうじ)
亮一(りょういち)※亮二と兼ね役
大和(やまと)
翔子(しょうこ)
■台本
亮二(N)「双子。一卵性双生児。容姿はもちろん、身体能力の高さや趣味嗜好も似ていると言われている。実際、俺と亮一もほとんど同一の人間と言っていいほど似ている。ただ、一点を除いては」
学校の教室。
翔子「ねえ、亮二君。亮一君、サッカーで全国大会に行ったってホント?」
亮二「あー、いや……」
大和「翔子。情報が古いぞ。全国大会で優勝して、プロからもスカウト来てるんだよな?」
翔子「ええ! すっごーい! ホントなの?」
亮二「あー、まあ……」
翔子「すごいなー。格好いいなー」
大和「ホント、すげーよな。亮二とはえらい違いだ。双子なのに」
亮二「……うるせーな。大体、小学校までは俺の方がうまかったんだぞ、サッカー」
大和「なに、昔自慢なんかしてるんだよ。重要なのは今だろ、今」
亮二「……」
翔子「違う学校なのに、噂が届くぐらいだもん。有名人だよね」
大和「そりゃ、テレビや新聞とかにも載るくらいだからな」
翔子「ねえ、亮一君って格好いいの?」
大和「そりゃな。テレビとかで持ち上げられるのも顔がいいっていうのもあるんだろうな。女子にもすごい人気らしいし」
翔子「へー。いいなー。会ってみたい」
亮二「ううん! ごほんっ!」
大和「どうした、亮二?」
亮二「双子。一卵性双生児」
大和「ああ、知ってるよ」
亮二「だから、俺と顔はそっくり。亮一がイケメンっていうなら、俺もイケメンってことになるだろ」
大和「はあ……。亮二、お前わかってないな。いいか、よく聞け。健全な精神は健全な肉体に宿るっていうだろ。サッカーっていう過酷な世界を生きてる亮一さんが、毎日ダラダラしてるお前と同じなわけないって」
亮二「いや、亮一さんって……。同い年なのにさん付けかよ」
翔子「あー、わかる。亮二くんって、惜しい三枚目って感じだもんね」
亮二「本人を目の前にしていうことかよ」
大和「それにしても、双子なのになんで、こうも違うかね。生まれたときは同じだったのに、17年で天と地の差がついちまったもんな」
亮二「あのなぁ。俺と亮一の違いなんて、ホント、サッカーできるかできないかの違いだけだって」
大和「んなわけないだろ。性格もすごい良いって聞いたぞ。スポーツマンを絵に描いたような爽やか性格らしいじゃねーか」
亮二「んなもん、取材を受けてるときの外面なだけだよ。どっちかっていうと、亮一の方が性格悪いんじゃねーかな」
翔子「亮二くん。いくら悔しいからって、そういうこと言うの、卑怯だと思う」
亮二「いや……ホントのことなんだけど……」
翔子「そういうことを言う、亮二くんの方が捻くれてると思う。性格がいい人は、人の悪口なんて、絶対言わないもん」
亮二「うっ……」
大和「諦めろ、亮二。お前のいいところは全て亮一さんに吸い取られたんだよ」
亮二「いや、そんなに差はないって」
翔子「イケメンで、サッカーがすごくて、性格がいいなんて、パーフェクトだよね」
亮二「二人とも、幻想抱きすぎだって! 会ったらマジでガッカリするぞ」
翔子「ええー! 会わせてくれるの! やったー!」
亮二「え?」
大和「俺も会いたい!」
亮二「あ、いや……」
場面転換。
亮二「ってわけなんだけどさ」
亮一「あー。パス」
亮二「頼むよ、俺の顔を立てると思ってさ」
亮一「なんで、亮二の顔を立てないとならないんだよ。メンドくさい」
亮二「お前って、ホント、嫌な奴だよな」
亮一「なんとでも言え」
亮二「ホント、頼むよ。絶対に行かせるって言っちゃったんだ。一日、女の子と遊べるなんて、ラッキーだろ」
亮一「その子可愛いの?」
亮二「ま、まあ……」
亮一「ふーん……」
亮二「けど、その……男も一人来るんだけど」
亮一「ぜってー行かねえ」
亮二「いや、ホント、頼むって!」
場面転換。
駅前。
翔子「あー、ドキドキし過ぎて、気持ち悪くなってきちゃった」
大和「俺も緊張してきた。昨日もあまり寝れなったんだよ」
そこに、亮二がやってくる。
亮二「ごめん。お待たせしちゃったね」
翔子「あ、ああ、あのあの、翔子って言います! よ、よろしくお願いします!」
大和「お、俺は大和です! 忙しい中、来ていただいて嬉しいです」
亮二「あははは。二人とも、そんなに緊張しなくていいよ。気軽にいこう。気軽に」
大和「……やっぱり、凄い良い人だ。こんな俺たちに気軽に話していいだなんて」
翔子「あの……亮二くんは、どうしたんですか?」
亮二「ああ。急に熱を出したみたいだから、今日は来れないんだ。ごめんね」
翔子「全然いいですよー! 亮一くんさえ来てくれれば、問題ないです!」
大和「そうですよ!」
亮二「……それにしても、亮二はバカだよな。当日に熱出すなんて。小学生かよって感じだよね」
大和「そうですね! あいつ、学校でもどうしようもない奴で」
翔子「双子なのに、全然違いますよね。やっぱり、亮一くんは素敵だと思います」
亮二「……はは。ありがと」
大和「それじゃ、行きましょうか。……どこか行きたい場所とかあります?」
亮二「そうだなぁ。お腹減ったし、まずは食事でもしない?」
翔子「はい。そうですね。私もお腹減ってたところなんです」
大和「どこ行きます?」
亮二「ラーメンがいいかな。仙楽」
翔子「え? ラーメンですか?」
亮二「あれ? 意外だったかな?」
大和「バカ、亮一さんは気を使ってくれてるんだよ。庶民の俺たちに合わせて」
翔子「あ、そっか! そんな気遣いできるところも素敵です!」
亮二「いや、純粋に食べたかっただけなんだけど」
大和「またまたー。気遣い上手ですね」
場面転換。
亮二「ふー。美味かった」
翔子「……食べてる姿も素敵だったです」
亮二「さて、行こうか。って、あー、しまった。財布忘れちゃったな」
大和「いいですいいです! ここは俺が払いますから!」
亮二「え? いいの? 悪いね」
大和「いえいえ。一緒にラーメンを食べれたってだけで、光栄ですから」
翔子「そうですよ!」
亮二「それじゃ、次に行こうか」
翔子「はい!」
大和「今日はお金の心配はしなくていいですからね!」
場面転換。
駅前。
大和「いやー、今日は楽しかったです!」
亮二「悪いね。色々と奢って貰っちゃって」
大和「恐縮です! 代わりに楽しい思い出を貰えたので、安いものです!」
翔子「ホントにありがとうございました」
大和「それじゃ、俺はこれで失礼します」
亮二「ああ、さよなら」
大和が去っていく。
翔子「あ、あの、亮一くん」
亮二「ん? なんだい?」
翔子「よかったら、その……私とお付き合いしてくれませんか?」
亮二「……え? あ、いや……。急すぎない? たった一日一緒にいただけだよ?」
翔子「一日あれば、亮一くんの良さを知るには十分です」
亮二「あ、あのさ。俺と亮二、あんまり変わらないと思わない?」
翔子「いえ、全然違います! バラと雑草くらい違います!」
亮二「そ、そう……」
場面転換。
ドアが開き、亮二が入ってくる。
亮二「ただいまー」
亮一「あ、亮二、お前、俺の服勝手に着てくなよ!」
亮二「あー、すまん」
亮一「ったく、汚してねーだろうな。その服、高かったんだぞ」
亮二「……なあ、亮一」
亮一「あん?」
亮二「人間てさ、やっぱ、肩書きが全てなんだな」
終わり。