■概要
人数:3人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、コメディ
■キャスト
ウォーレン
コール
キャロル
■台本
山の中を歩く、ウォーレンとコール。
ウォーレン「なあ、コール」
コール「ん?」
ウォーレン「道に迷ってないか?」
コール「あははは。ウォーレンは心配性だなぁ。だーいじょうぶだって。もうすぐだよ、もうすぐ」
ウォーレン「お前、それ2時間くらい前から言ってるぞ」
コール「ダメだよ、ウォーレン。美味しいものを食べるためには、苦労が必要なんだよ」
ウォーレン「いや、材料を取りにいくとかなら、そのセリフはわかる。けど、お店に行くんだろ? なんで、その店はこんな場所に建てたんだ?」
コール「んー。聞いた話によると、山奥にお店を出してるのには意味があるらしいよ」
ウォーレン「ホントか? こんな場所だと客が来づらいだろうし、デメリットしかないだろ」
コール「そうだなぁ。きっと、ここまで来るまでにお腹が減るでしょ? 空腹は最高のスパイスってね!」
ウォーレン「空腹っていうか、疲れすぎて、逆に食欲無くなってこないか?」
コール「あ、あったよ!」
ウォーレン「……ホントにあった」
コール「えーと、山猫庵って書いてあるから、ここで合ってるね」
ウォーレン「山猫庵? なんか聞いたことあるような……」
コール「まあ、隠れた名店だかね」
ウォーレン「隠れてるなら、聞いたことないはずなんだけどな」
コール「あ、何か書いてある。んーっと、イケメン大歓迎だって! 僕たち超イケメンだから、歓迎されちゃうね!」
ウォーレン「……自分で言うなよ。残念な奴だと思われるだろ」
コール「おじゃましまーす!」
ウォーレン「おい! 先に行くな!」
ドアを開けて、中に入るウォーレンとコール。
コール「あれ? 変わったお店だなぁ。何もない部屋だ」
キャロル「いらっしゃいませだにゃん!」
ウォーレン「うおっ! どこからしゃべってるんだ?」
キャロル「魔力だにゃん! 嘘だにゃん」
ウォーレン「なんで嘘付いたんだよ!」
キャロル「山猫庵の店長、キャロルだにゃん。お客様、イケメンでとっても嬉しいにゃん」
ウォーレン「……なんで、イケメンだと嬉しいんだ?」
キャロル「イケメンは、私の大好物だにゃん。じゅるり」
コール「ねえねえ、僕たち、お腹減ったんだけど料理食べさせてくれないかな?」
キャロル「もちろんだにゃん。でも、そのためにはお客様に色々やってもらわないとならないにゃん」
ウォーレン「やること?」
キャロル「まずは二人とも、身を清めてほしいにゃん。ここまで来るのに、汗をかいただろうし、土だらけになってるにゃん。だから、奥の部屋にあるお風呂に入ってほしいにゃん」
ウォーレン「は? 風呂? なんで、飯を食べるために風呂に入らないといけないんだ?」
コール「まあまあ。僕たち汗かいたんだし、お風呂入ってさっぱりしてから食べた方が美味しいよ、きっと」
ウォーレン「……」
場面転換。
大浴場で湯船に浸かっている二人。
コール「あー、いい湯だなぁ。疲れが取れるよ。極楽極楽」
ウォーレン「……」
コール「どうしたの? そんな難しい顔して」
ウォーレン「なあ、コール。この店、やっぱり怪しくないか?」
コール「怪しい? なんで?」
ウォーレン「……普通、料理店で、こんな大浴場とかないだろ」
コール「粋な計らいだよねー」
ウォーレン「いや、そうじゃなくて……」
コール「あ、見てよ、ウォーレン。このお風呂、ゆずが浮かんでるよ。どおりで良い匂いがしてると思ったんだよねー」
ウォーレン「……」
キャロル「ゆずは疲労を取る効果があるにゃん」
ウォーレン「うおっ! お前、どこから話してるんだ?」
キャロル「魔力だにゃん。嘘だにゃん。覗いてるわけじゃないにゃん」
ウォーレン「……」
キャロル「それから、ゆず湯に、あと五分浸かってほしいにゃん」
ウォーレン「なぜだ?」
キャロル「お肉が柔らかくなるにゃん」
ウォーレン「肉が……柔らかくなる?」
キャロル「あー、いや、間違ったにゃん。肩こりとかが治るにゃん。体をほぐしてから食べるにゃん」
コール「あはは。お気遣い、ありがとう。至れり尽くせりだね」
キャロル「風呂から上がったら、しっかり体を洗ってほしいにゃん。垢を全部落としてほしいにゃん」
ウォーレン「注文が細かいな」
キャロル「美味しく食べるための秘訣にゃん」
コール「それなら仕方ないねー」
ウォーレン「……」
場面転換。
コール「いやー、いい湯だった」
キャロル「体を拭いたら、そこの桶の中にある塩で体を清めてほしいにゃん」
ウォーレン「……なんで、そこまでする必要がある?」
キャロル「塩は皮膚を引き締める効果があるにゃん。お客様の玉のような肌を、さらにピカピカにするためにゃん」
コール「あははは。玉のような肌だってー。照れるね。じゃあ、塩で体を清めよっか」
ウォーレン「……」
キャロル「ちゃんと隅々まで練り込んで欲しいにゃん」
場面転換。
キャロル「次は爪を切って、髪形を整えてほしいにゃん。あ、整髪料はそこにある、豚の油を使ったポマードを使ってほしいにゃん」
コール「へー、こだわりの逸品だね」
ウォーレン「おい、ちょっと待て! 料理を食べさせるのに、なんでこんなことまでさせる?」
キャロル「私の料理は一級品にゃん。その料理を食べるんだから、それなりのマナーが必要にゃん!」
コール「そうだよねー。ほら、ウォーレン、駄々こねてないで、言う通りにするよ」
ウォーレン「コール、やっぱり怪しいぞ、この店」
コール「何言ってるの! 僕、もうお腹ペコペコだよ。早く準備して料理食べたいんだから。ほら、さっさとする!」
ウォーレン「……」
場面転換。
キャロル「次に、ナイフとか銃を持ってたら、この部屋に置いていって欲しいにゃん。そんなものは料理を食べるのに必要ないにゃん」
ウォーレン「……」
コール「大丈夫! そんな物騒な物、最初から持ってないよ」
キャロル「それなら安心にゃん。それじゃ、最後に目の前のローブを着て欲しいにゃん。あ、下着は履かないで、直で着て欲しいにゃん」
コール「うわー、いいローブだね。……って、ウォーレン、どうしたの? 青い顔して」
ウォーレン「コール。これ、ヤバいやつだ」
コール「は?」
ウォーレン「逃げるぞ! 殺される……」
コール「何言ってんの? これで最後なんだから、さっさと着替えていくよ」
ウォーレン「止めろ! 離せ―!」
場面転換。
キャロル「ここまで指示に従ってくれて、ありがとうにゃん」
コール「あー、店長さん、やっと顔を見せてくれたね。可愛い人だなー」
キャロル「ありがとにゃん。お客様もホント、イケメンで嬉しいにゃん。じゅるり」
ウォーレン「……ヤバい。これ、絶対、ヤバいやつだ」
キャロル「イケメンは大好物にゃん。はあーはあー。よだれが止まらないにゃん」
ウォーレン「うう……くそ……」
コール「ねえ、僕、お腹減っちゃったよ。早く食べさせてよ」
キャロル「うふふふふ。もちろんだにゃん。それじゃ、さっそく……」
ウォーレン「ヤバいヤバいヤバいヤバい」
コトッとテーブルの上に皿が置かれる。
キャロル「前菜のアボカドとエビのカクテルソースだにゃん」
ウォーレン「いや、普通に料理出すのかよ!」
キャロル「は? なんのことだにゃん?」
終わり。