■概要
人数:3人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
駿介(しゅんすけ)
翠来(みら)
その他
■台本
スマホで動画を見ている駿介。
動画主「いつも、チャンネルを見てくれてありとう! 今日の都市伝説の内容は、現代に現れたヴァンパイア! という内容だよ。一週間前、一人暮らしをしている男子高校生が自宅で倒れているのを発見されたんだ。で、病院に運ばれたんだけど、ななんと! 長い期間、血が抜かれていることがわかったんだって! 怖いよねー。しかも、それが首からっていうんだから、ホント、ガクブルだよ。だから、その周りではヴァンパイアに襲われたんじゃないかって……」
駿介「……嘘くせー。まあ、都市伝説チャンネルだからな」
そのとき、ピンポーンとインターフォンが鳴る。
駿介「あ、来た来た! はーい!」
ドタドタと走り、ドアを開ける駿介。
翠来「おっはよー、駿介くん! 今日も、一緒に学校行こ!」
駿介「……翠来ちゃんになら、吸われてもいい」
翠来「ん? なんの話?」
駿介「う、ううん。何でもない、何でもない。それじゃ、行こうか」
場面転換。
駿介と翠来が並んで歩いている。
翠来「……でね、大変だーって思って、通報したんだ」
駿介「……はあ」
翠来「あれ? どうしたの? 翠来の話、面白くなかった?」
駿介「ううん。違う、違う。いや、えっと、最近、なんか疲れが取れなくってさー」
翠来「あー、確かに、目の下にクマができてる……。もしかして、寝不足?」
駿介「いつも早く寝るようにしてるんだけどね」
翠来「駿介くん、ちゃんとご飯食べてるの? 一人暮らしだからって、カップ麺とかばっかり食べてない?」
駿介「うっ! ……最近、小遣いが厳しくて、買い置きのカップ麺に頼ってる」
翠来「ダメだよー。疲れの原因はそれだと思うよ」
駿介「そうだよね……。けど、料理とかできないし、どうしようかな」
翠来「よし! じゃあ、今日から、翠来が駿介くんにお料理作ってあげる!」
駿介「え? い、いや、そんなの悪いよ!」
翠来「何言ってるのよ! 翠来は、駿介くんの彼女なんだから。彼氏が困ってるなら、助けるのが当然だよ!」
駿介「……彼氏。ああ、なんて良い響きなんだ。まさに、今が人生を絶好調。うう……もう、死んでもいい」
翠来「こら! 冗談でもそんなこと言わない! 翠来、駿介くんが死んだら嫌だよ。ずっと元気に翠来と一緒にいて欲しいな」
駿介「……翠来ちゃん」
場面転換。
ピンポーンとインターフォンが鳴る。
駿介「はーい」
歩いて、ドアを開ける。
翠来「えへへ。材料買ってきたよ」
駿介「ええ! ほ、ホントに、ご飯作りに来てくれたの?」
翠来「あったり前だよー。翠来は約束は守るんだから」
駿介「翠来ちゃん……ありがとう」
翠来「なーんて、実は、料理を作るのを口実に、駿介くん家に入りたかっただけでしたー」
駿介「か、可愛過ぎる……。俺、今死んでも後悔はないよ」
翠来「だーかーら! そういうこと言わない! メッ! だよ! もうそういうこと言わない! いい?」
駿介「う、うん。わかった。ごめん」
翠来「えへへへ。分かればよろしい! それじゃ、さっそく、キッチン借りるねー」
場面転換。
翠来がキッチンで料理している。
翠来「ふふふーふーん(鼻歌)」
駿介「……ああ、いいなぁ。幸せだなぁ。まさか、こんな日が来るなんて、一週間前には夢にも思わなかったよなぁ。……って、あれ? そういえば……」
場面転換。
翠来「じゃじゃーん! できましたー! レバニラと、ホウレンソウのおひたし、すっぽん鍋に、ステーキだよ!」
駿介「す、すごい組み合わせだね……」
翠来「あ、ごめんね。好き嫌いとかあった?」
駿介「あ、ううん! ないない! 翠来ちゃんが作ったものなら、ぜーんぶ大好きだよ」
翠来「よかったー。えへへへ。翠来はね、駿介くんが大好きだよ!」
駿介「……翠来ちゃん。俺、もう死んでも……じゃなかった。俺、今、すごく幸せだよ」
翠来「うん! 翠来もだよ! さ、冷めないうちに召し上がれ!」
駿介「それじゃ、いただきまーす!」
駿介が料理を食べ始める。
駿介「……えっと、翠来ちゃん、そういえば聞きたいことがあるんだけど」
翠来「ん? なにかな?」
駿介「俺がこんなこと言うのも、なんだけど……どうして、俺なのかな?」
翠来「んん? なんのこと?」
駿介「あ、いや、その……翠来ちゃんが、俺に告白してくれて……その、付き合うことになったよね」
翠来「うん、そうだね」
駿介「どうして、俺なのかなってさ。ほら、俺って、特に頭を良くないし、スポーツだってダメだし、あんまり友達いないし……そのイケメンってわけでもないでしょ。そんな俺なんかのどこを好きになったのかが不思議でさ」
翠来「もう! 俺なんか、なんて言わないでよ! 駿介くんはとっても素敵な人だよ」
駿介「そ、その……どこが?」
翠来「……」
駿介「……翠来ちゃん?」
翠来「翠来が一人でこの町に来た時、道とか分からなくて、どうしていいか分からなくて困ってたとき、駿介くんが声をかけてくれたの。……覚えてる?」
駿介「え? そ、そうだっけ?」
翠来「そうなの! それが嬉しくて、頼もしくて……そのとき、翠来は、駿介くんに一目惚れしてしまったんだよ」
駿介「そ、そうだったんだ」
翠来「翠来はね、駿介くんのこと、大好きだよ。翠来の好みにドンピシャだったんだ」
駿介「そっか。そう言って貰えて嬉しいよ」
翠来「だから、駿介くんは、もっと自分に自信もって!」
駿介「うん! わかった! 翠来ちゃんに好きになって貰った、俺に自信を持つことにするよ」
翠来「うん、その調子!」
場面転換。
駿介「ぷはー。食べた食べた! 美味しかったよ!」
翠来「よかった。満足して貰えて」
駿介「いやー、久しぶりに栄養のあるものを食べた気がするよ」
翠来「ダメだよー。育ち盛りなんだから。ちゃんと栄養のあるものを食べないと。特にホウレンソウとかの緑黄色野菜は必須だよ」
駿介「うん。これからは野菜もちゃんと食べるようにするよ」
翠来「あと、規則正しい生活も忘れないこと。ちゃんと寝ないと、血がドロドロになっちゃうからね」
駿介「わかった。今日も、早く寝るよ」
翠来「約束だよ! ……よし、それじゃ、帰ろうかな」
駿介「今日はありがとう。美味しかった」
翠来「それじゃ、また来るね。……あ、帰る前に、もう一回、言わせて。翠来ね、駿介くんのこと、大好きだからね」
駿介「……翠来ちゃん。お、俺も翠来ちゃんのこと、大好きだよ!」
翠来「ありがとう。それじゃね」
駿介「うん。バイバイ」
ドアが閉まる。
場面転換。
駿介の寝息。
そこに、カラカラと窓が開く音。
翠来「駿介くん。約束通り、また来たよ」
駿介の寝息。
翠来「翠来ね。駿介くんのこと、だーい好き。前の人のも美味しかったけど、駿介くんの血が一番だよ!」
カプと噛む音とチューと血を吸う音が響く。
終わり。