■概要
人数:3人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
■キャスト
西田 正志(にしだ まさし)
西田 清(にしだ きよし)
高坂 陽菜(こうさか あきな)
■台本
ジリジリと照り付ける太陽とセミの鳴き声。
通学路を歩く、正志と陽菜。
正志「うう……暑い。ヤバい、溶ける……」
陽菜「気を抜けた声を出さないで、ちゃんと歩きなさいよ」
正志「しょうがない。また週末に、海水浴ごっこするしかないな……。陽菜も来るか?」
陽菜「止めて! あの話はしないで! ……うう、なんであんな恥ずかしいこと、やっちゃったんだろ……」
正志「それにしても、フラフラするな。やる気も出ないし、完璧に夏バテだな」
陽菜「夏バテ? あんたが?」
正志「なんだよ、馬鹿がひかないのは風邪だろ? 夏バテくらいはしてもいいだろ」
陽菜「馬鹿の自覚はあるのね……。って、そうじゃなくて、あんたが夏バテするなんて珍しいなって思って」
正志「そうか? 毎年、暑いって言ってダラダラしてるだろ」
陽菜「いや、あんたがダラダラしてるのは年中でしょ。そうじゃなくて、食欲魔人のあんたが、食欲がなくなるなんて、信じられないわよ」
正志「あん? 食欲はあるぞ」
陽菜「え? あるの?」
正志「もちろん。朝も、飯、3杯食ったぞ。朝飯、生姜焼きだったからな」
陽菜「朝から濃いもの食べてるわね。っていうか、おばさん、朝から生姜焼きって凄いわ……」
正志「うう……飯食ったのに力が出ない」
陽菜「まさか、水分不足ってわけじゃないわよね?」
正志「ああ。朝に牛乳一本飲んできた」
陽菜「……」
正志「早く、秋になってくれねーかな」
陽菜「まだ、夏が始まったばかりじゃない。って、あれ? 正志、ニキビできてるわよ」
正志「ん? んー。ホントだ。痛いと思った」
陽菜「よく見たら、あんた、肌荒れしてるじゃない。あのツヤツヤ肌はどうしたのよ?」
正志「どうしたって言われてもな―」
陽菜「……ねえ、正志。夏バテの症状って、他にどんなのあるの?」
正志「えーっと……。まず、やる気が出ない。疲れやすい。あと、妙にフラフラする」
陽菜「……それプラス肌荒れか。ねえ、正志、あんたのそれ、夏バテじゃなくて、野菜不足じゃないの?」
正志「野菜不足? 不足も何も、野菜なんて食べる必要ねーだろ」
陽菜「あるに決まってるでしょ!」
正志「今まで野菜とか食ってこなかったぞ」
陽菜「呆れたわ。まあ、今までのことは置いておいて、これからはちゃんと野菜も食べなさい」
正志「俺、野菜嫌いんだよ」
陽菜「子供みたいなこと言わないの!」
正志「俺、まだ子供だから」
陽菜「うん。脳みそは10歳くらいだもんね」
正志「しかしなー。野菜っつっても、何喰えばいいんだ?」
陽菜「色々あるでしょ。例えば、玉ねぎとか」
正志「無理」
陽菜「大根」
正志「嫌いだな」
陽菜「キャベツ」
正志「焼きそばとかに入れないで欲しいよな」
陽菜「トマトは?」
正志「食えないわけじゃないけど、好きじゃないな」
陽菜「そうなんだ。そういえば、トマトは果物か野菜か論争があるのよね」
正志「興味ないなー。っていうか、野菜に分類されたら、余計食べたくなくなるな」
陽菜「なによそれ」
正志「いや、野菜って聞くと、どうしてもマズイってイメージがするだろ」
陽菜「そう? 美味しいと思うけどな、野菜」
正志「うえ……。思い出したら、気持ち悪くなってきた」
陽菜「そこまで?」
正志「とにかく、野菜は食う気はない。まあ、野菜何か食わなくても、肉食ってれば大丈夫だろ」
陽菜「いや、それは早死にするわよ」
正志「野菜食べるくらいなら本望だね」
陽菜「ダメよ! あんた、私を未亡人にする気? そんなの困るわよ!」
正志「ん? なんで、俺が野菜食わないとお前が困るんだよ?」
陽菜「お、おほん! とにかく、これからはちゃんと野菜を食べること! いいわね」
正志「んー……。そう言われてもな」
陽菜「しょうがないなぁ。私が何とかしてあげるわ」
正志「何とかって?」
陽菜「ふふ。野菜なんて、工夫次第で食べれるようになるわよ」
場面転換。
ドンとテーブルに皿を置く、陽菜。
陽菜「野菜サラダよ!」
正志「……いや、ドストレートじゃねーか」
陽菜「ふふふ。これはただの野菜サラダじゃないわ。野菜を薄く切って、マヨネーズと黒コショウのソースなの。味的には食べやすいはずよ」
正志「……けど、野菜だろ? 無理だって」
陽菜「とにかく、食べてみてよ」
正志「……うう」
パクっと食べる正志。
正志「うえっ!」
陽菜「ええ!? 美味しくなかった?」
正志「いや、野菜を食べるってなったら、体が拒否反応を起こしたみたいだ」
陽菜「うーん。野菜嫌いって意識に刷り込まれてるみたいね」
正志「すまん。無理だ」
陽菜「……それじゃ」
場面転換。
ドンと皿をテーブルに置く。
陽菜「これならどう?」
正志「野菜スティックって、さっきよりダメだろ」
陽菜「ふふふふ。これは、チーズフォンデュよ! これなら、野菜って言うより、おやつを食べてる気にならない?」
正志「……チーズだけ食ったらダメか?」
陽菜「ダメに決まってるでしょ!」
場面転換。
陽菜「これならどう? 野菜をスープにしたの。原型がなくなるくらい煮込んだから、大丈夫なはずよ!」
正志「お、おう……」
スプーンですくって、スープを飲む正志。
正志「ごはっ!」
陽菜「……ダメ?」
正志「すまん。どうしても、野菜が入っていると思ったら、拒絶反応が出る」
陽菜「うう……。じゃあ、こうなったら」
場面転換。
陽菜「はあ……はあ……はあ……」
正志「う、うう……」
陽菜「知ってる限りの料理法を試したのに……」
正志「すまん。俺は、きっと、野菜を食べられない病なんだよ」
陽菜「そんな病気あるわけないでしょ」
そのとき、ドアが開き、清が入ってくる。
清「ただいま……。って、あれ? 陽菜ちゃん、いらっしゃい」
陽菜「うん。お邪魔してるよ」
清「ん? 正兄ぃに手料理でも作ってたの?」
陽菜「まあ……色々あって」
正志「おい、清! それより、お前が持っているものはなんだ!」
清「ああ、これ? メロンだよ。武田のおばさんにもらったんだ」
正志「うおー! メロンだ! 食べるぞ!」
清「まあ、2つあるし、1つは食べてもいいかな」
陽菜「じゃあ、私が切り分けるね」
場面転換。
メロンを頬張る正志。
正志「うめー! やっぱ、メロン最高!」
陽菜「ホントだ。甘くて美味しい」
正志「やっぱ、野菜より果物だよなー。俺、果物ならいくらでも食えるよ」
清「知ってる、正兄ぃ。メロンって野菜なんだけど」
正志・陽菜「……え?」
場面転換。
ジリジリと照り付ける太陽とセミの鳴き声。
通学路を歩く、正志と陽菜。
陽菜「……それで、野菜嫌いが治ったと」
正志「おう! メロンと同じものだと考えたら、凄く美味しく感じてさ! いやー、最近は野菜にハマっちまってな。今週末は野菜パーティを開く予定だ! 陽菜も来るか?」
陽菜「……はあ。私の努力って一体……」
終わり。