【声劇台本】ネクスト

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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス

■キャスト
井手野 宗太(いでや そうた)
編集長
刑事
その他

■台本

大雨の音と雷が鳴り響く音。

宗太「……やったぞ。最高のアイディアを手に入れることができた! これで俺は……世間を見返すことができる」

場面転換。

ガリガリと漫画を描くこと。

後ろからテレビのニュースも流れている。

宗太「……あと3ページ。漫画大賞の締め切りまでなんとか間に合わせないと……」

アナウンサー「一週間前から行方不明の漫画家、みやしろう氏の遺体が川から……」

宗太「……縁起悪いなぁ」

ピっとチャンネルを変える。

タレント「ネクスト? なんですか、それ?」

司会「今、流行りの都市伝説です。なんでも、自分より一足先を生きているという人間のことです」

タレント「自分より一歩先?」

司会「こういう経験はありませんか? いいアイディアを思いついたときに、ちょうどそれが商品化された、とか」

タレント「……そうですね。何回かは」

司会「それは、自分と同じ魂を持った存在が少し先を生活しているというものです。つまり、何か思いついても、その、ネクストの方が先に思いつくので、自分のアイディアは二番煎じになってしまう、ということですね」

タレント「はあ? よくわかりませんね」

司会「つまりですね……」

ピッとテレビを消す宗太。

宗太「くだらない……」

また、ガリガリと漫画を描き始める宗太。

場面転換。

スマホが鳴る。

すぐに取る宗太。

宗太「はい! 井手野です! ……はい! はい……はい……。え? 同じ内容? はい、はい、……わかりました」

スマホを切る、宗太。

宗太「……どうなってるんだ?」

場面転換。

編集部の部屋の中。

ドアが開き、編集長が入って来る。

編集長「井手野さん、すみませんね。編集部まで来ていただいて」

宗太「それは構いません。それより、どういうことなんですか?」

編集長「それが……ですね。井手野さんの漫画ですが、会議で大賞に選出させていただきました」

宗太「……それが、なんの問題があるんですか?」

編集長「実は……2日前に、ほとんど同じ内容の漫画が持ち込まれました」

宗太「……どういうことですか?」

編集長「それは、こちらが聞きたくてですね……。つまり、同時期に、同じ漫画がうちに送られてきたというわけです」

宗太「……」

編集長「正直に申し上げまして、我々は盗作の疑いがあると思っています」

宗太「それなら、あっちが盗んだんですよ! 僕の方の原稿が先に到着したはずです」

編集長「確かに、あなたの原稿の方が先にうちに着きました。ですが、持ち込みはその数時間後なんです。どちらが盗作したかの証明にはならないんですよ」

宗太「……どうなるんですか?」

編集長「我々としては、盗作の疑いがある作品を載せるわけにはいきません。どちらも見送るしか……」

宗太「冗談じゃない! あれは僕の最高傑作だ! あの漫画に人生をかけてる! そんな理由で見送られたら、たまったもんじゃない!」

編集長「……ですが」

宗太「もういいです! 他のところへ持っていきます」

編集長「失礼ですが、どこに行っても同じだと思いますよ。こういう情報は流れるのも早いですから」

宗太「……そんな。くそっ! くそっ! こんなことが……」

編集長「……」

宗太「そうだ! その持ち込みをしたやつに会わせてくれませんか? そいつが盗作したに決まってるんだ! 僕が話を付けますよ」

編集長「申し訳ありませんが、会わせるわけにはいきません。揉める可能性が高いですからね」

宗太「……じゃあ、どうすればいいんだ」

編集長「それでですね。我々としては、さすがにどちらも見送りというのも気が引けます。漫画の内容としては本当に良いものですからね。あれが世に出ないというのは、編集部としても本意ではありません」

宗太「……どうするんですか?」

編集長「そこで、続きを描いていただけませんか?」

宗太「続き?」

編集長「はい。あの漫画の続きです」

宗太「冗談じゃない! あれは読みきりだ! あれで完璧に完結しているお話です! あれ以上を描いたら、完全に駄作になります!」

編集長「それはこちらもわかっています。ですが、そのような条件で続きを描いてもらい、面白かった方を採用しようと思います」

宗太「冗談じゃない! こんなのは冒涜だ」

編集長「……では、あちらの漫画を採用します。あなたの作品に関しては、破棄させていただきます」

宗太「なんで、そうなるんだ!」

編集長「あちらはこちらの条件を飲んでくれ、続きを描いていただけるとのことですから」

宗太「……あっちは、続きを描くって言ってるんですか?」

編集長「はい」

宗太「……わかりました。僕も描きます」

場面転換。

ガリガリと漫画を描いている宗太。

宗太「くそ! ダメだダメだダメだ!」

原稿をぐしゃぐしゃに丸める。

宗太「ちくしょう! なんで、こんなことに……。どうして、僕の漫画が外に漏れたんだ? あり得ない!」

回想。

司会「いいアイディアを思いついたときに、ちょうどそれが商品化された、とか」

回想終わり。

宗太「……まさか、ネクスト? はは、そんなわけないよな。とにかく、続きを描かないと。あれは僕の作品だ」

場面転換。

編集部の部屋のドアが開き、編集長が入ってくる。

編集長「お待たせしました」

宗太「どうですか!?」

編集長「……残念ですが、あちらの漫画を採用させていただきます」

宗太「そんなバカな!」

編集長「あちらの漫画は伏線もしっかり回収され、実に素晴らしいオチがついていました。ですが、井手野さんの方の漫画は、単に同じキャラを使った別の物語でしかない」

宗太「……」

編集長「……失礼ですが、井手野さん。あの応募してきた作品、本当にあなたが考えたんですか?」

宗太「……え? な、何言ってるんですか?」

編集長「今回、井手野さんが描いてきた作品ですが、どう見ても、同じ作者が描いたようには見えません」

宗太「なっ! 失礼なことを言わないでください! 不愉快だ! 僕は帰らせていただきます!」

編集長「……実は、あちらの漫画家ですが、みやしろうさんの息子さんなんです」

宗太「……え?」

編集長「知ってますよね? 漫画家のみやしろうさん」

宗太「……」

編集長「生前、父親であるみやしろうさんから、新たな漫画の構想を聞いていたそうです。ですが、事故に遭って亡くなった。それで、息子さんがその聞いていた漫画の内容を自分で描き起こして持ち込みをしたそうです」

宗太「……し、知りません! 失礼します」

ガチャリとドアが開き、刑事が入ってくる。

刑事「おっと、帰すわけにはいきません」

宗太「な、なんだ、あんたは?」

刑事「警察です」

宗太「け、警察……?」

刑事「井手野さん、あなた、みやしろう氏が行方不明になった、台風の日、どこで何をしていましたか?」

宗太「……」

刑事「色々と調べさせていただきました。あの日、みやしろう氏は誰かに呼び出されたそうです。そして、橋の上であなたとみやしろう氏が一緒にいたという目撃もあります」

宗太「し、知らない! みやしろうなんて漫画家なんて知らない!」

刑事「……あと、みやしろう氏の家からあなたの指紋が出てきました。みやしろう氏のことを知らないのに、家の中にあなたの指紋があるのはどうしてですか?」

宗太「う、うう……」

崩れ落ちる宗太。

宗太「僕はただ、デビューしたかっただけなんだ……。別にいいだろ! みやしろうはたくさんヒット作を出してるんだから! 一つくらい、僕にくれたって……」

編集長「他人の漫画でデビューしたところで、意味はないです。あなたはすぐに売れなくなるでしょう。現に、あの続きの漫画はつまらなかったです」

宗太「うわあああああああああ!」

刑事「暴れるんじゃない!」

宗太「くそっ! 離せ! 僕は……僕は天才なんだ! 理解できないお前らがおかしいんだ!」

刑事「井手野宗太。殺人の容疑で逮捕する」

終わり。

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