■概要
人数:4人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、コメディ
■キャスト
リーノ
ネレーオ
ソニア
パウロ
■台本
リーノ「今日から配属になりました、リーノです! よろしくお願いいたします!」
パウロ「うむ。新人とはいえ、我々の仕事は国家の安全に関わるものだ。ミスは許されないぞ。しっかり頼む」
リーノ「はい!」
パウロ「よし、それじゃ、ネレーオ。面倒を見てやれ」
ネレーオ「はいはい。リーノくん、よろしくー」
リーノ「よろしくお願いします!」
パウロ「所属するエージェントの紹介をしたいところだが、あいにく、ほとんど任務に着いていてな。ここにはいない。追々、紹介する」
リーノ「はい! わかりました!」
パウロ「ソニア。お前だけでも自己紹介しておけ」
ソニア「……ソニア」
リーノ「……」
ソニア「……」
リーノ「え、えっと……」
ネレーオ「あー、気にしなくていいんだ。ソニアは口下手でね。必要なこと以外はほとんどしゃべらないんだ」
リーノ「そ、そうなんですか……」
パウロ「ソニア。お前、この任務についてくれるか?」
ソニア「わかりました」
ネレーオ「おいおい。即答かよ。一人で大丈夫か?」
ソニア「はい」
ネレーオ「……ま、困ったことがあったら、相談しな。手伝ってやっから」
ソニア「はい」
ソニアが歩き出し、部屋を出ていく。
リーノ「……」
ネレーオ「おやぁ? どうした、リーノくん、ボーっとして?」
リーノ「あ、いえ。綺麗な人だなと」
ネレーオ「いけないなぁ、エージェントが簡単に色気に釣られるなんて」
リーノ「いえ! そういうわけでは! ……申し訳ありません」
ネレーオ「はは。お前は少し、素直過ぎだな」
リーノ「申し訳ありません」
ネレーオ「ま、この世界にいりゃ、嫌でもかけ引きを覚えていくさ。けど、ま、ソニアは止めとけ。それが、俺からの最初のアドバイスだ」
リーノ「……は、はあ」
パウロ「さて、お前らもおしゃべりは終わりだ。さっそく、この任務についてくれ」
場面転換。
リーノが走っている。
リーノ「ま、待て!」
前を走る男の足音が遠ざかっていく。
リーノ「くそっ! 逃げられる」
そのとき、バンと殴る音。
男「ぐあっ!」
男が吹き飛ぶ。
リーノ「あ……」
ネレーオ「まだまだ甘いな、リーノくん」
リーノ「ありがとうございました。俺一人だったら、逃がしてました」
ネレーオ「ま、新人のミスを助けるのが先輩の仕事だからな。気にするな」
リーノ「……」
ネレーオ「そんなに落ち込むなって。新人はミスして当然なんだから。ソニアのような生意気じゃないだけ、マシだ」
リーノ「……え?」
場面転換。
自動ドアが開き、リーノが部屋に入ってくる。
リーノ「任務の報告書です」
パウロ「おお、ご苦労」
そのとき自動ドアが開き、ソニアが入って来る。
ソニア「報告書です」
パウロ「早いな。次はこれをお願いできるか?」
ソニア「はい」
リーノ「……」
自動ドアが開き、ソニアが出ていく。
パウロ「ふう、相変わらず、生意気なやつだな」
リーノ「……」
場面転換。
リーノが走ってソニアに追いつく。
リーノ「あの、ソニアさん」
ソニア「なんですか?」
リーノ「いつも、ソニアさんって任務は一人なんですか?」
ソニア「はい」
リーノ「……それで、成功させるって、凄いですね」
ソニア「ありがとうございます」
リーノ「えっと……」
場面転換。
リーノが歩いて来る。
リーノ「新しい任務です」
「ほいほい。ご苦労様。どれどれ」
リーノ「あの、先輩」
ネレーオ「んー?」
リーノ「ソニアさんなんですけど、どうして生意気なんですか? この前、本部で話したんですけど、生意気とは真逆の印象でしたよ。新人の俺にも敬語を使ってくれますし、他愛のない質問にも嫌な顔一つしないで答えてくれました」
ネレーオ「あー、そのことか」
リーノ「所長も同じように生意気と言ってました」
ネレーオ「ふむふむ。ま、百聞は一見に如かずだな。今から、ソニアんところ行って、任務を手伝ってこい」
リーノ「で、ですが、新しい任務が……」
ネレーオ「いいから、いいから」
リーノ「……」
場面転換。
リーノ「……ということで、任務、お手伝いさせていただきます」
ソニア「わかりました」
リーノ「任務内容を見せてもらえますか?」
ソニア「これです」
リーノ「……え? いやいやいやいや! こんなの無理ですよ! あそこの施設はセキュリティが固くて有名です。誰にも見つからずに機密文書を盗み出すなんて……」
ソニア「……任務ですから」
リーノ「そ、そうですよね。最初から諦めるなんて、エージェント失格です。すいませんでした」
ソニア「……」
リーノ「あの、俺は何をすればいいですか?」
ソニア「……あそこ公園のベンチに座っていてください」
リーノ「……ベンチに? わかりました」
場面転換。
親子連れの遊ぶ声。
リーノ「うーん。もう、1時間になるけど、いつまで座ってればいいんだ?」
そこにソニアがやってくる。
ソニア「お待たせしました。では行きましょう」
リーノ「えっと、もう、施設に侵入するんですか? もっと念入りに作戦を立てた方が」
ソニア「任務は終わりました」
ポケットからディスクを取り出す」
リーノ「……ええええ! ま、まさか今の1時間で侵入してきたんですか?」
ソニア「はい。そうです」
場面転換。
リーノ「ソニアさん、凄い人でした」
ネレーオ「な? 生意気だったろ?」
リーノ「え? いえ、全然、そんなことありませんでしたよ?」
ネレーオ「ソニアはな、エージェントになってから、一度も失敗してないんだ。どんなに難しい任務でもな」
リーノ「……それがどうしたんですか?」
ネレーオ「いいか、もう一度言うぞ。ソニアはどんなに難しい任務でも、たった一人で、短時間でこなしてしまうんだ」
リーノ「……」
ネレーオ「当然だが、任務達成率も、うちの中では断トツだ」
リーノ「は、はあ……」
ネレーオ「まだわからないか?」
リーノ「……はい」
ネレーオ「優秀過ぎるんだよ! 先輩を差し置いてな! 任務でミスして、涙目で謝るのが新人ってもんだろ!」
リーノ「……は、はあ」
ネレーオ「つまり! 完璧すぎて生意気ってんだ!」
リーノ「あー! 嫉妬ですか」
ネレーオ「嫉妬言うな!」
終わり。