■概要
人数:5人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
颯太(そうた)
幸介(こうすけ)
一華(いちか)
占い師
女生徒
■台本
颯太「なあなあ、一華。今度の土曜日に映画観に行かね?」
一華「は? なんで、あんたと行かないといけないのよ」
颯太「映画代、奢るから。な? な?」
一華「嫌よ。奢られたりなんかしたら、何を要求されるか、わかったものじゃないわ」
颯太「いやいや。一華と一緒にいられればそれでいいんだよ。だから、別に要求とかはしないって」
一華「会うのにお金がかかるって……。変な噂が立ったら嫌なんだけど」
颯太「うっ……」
一華「いくら明日は暇だからって、あなたと会うことはあり得ないわね」
颯太「がーん!」
トボトボと歩く颯太。
幸介「おめでとう、颯太」
颯太「……幸介。おめでとうってなんだよ」幸介「今ので、デートを断られたの、ちょうど50回目だ」
颯太「うるせー」
幸介「いい加減、諦めたらどうだ? アイスクイーンを落とすなんて無理だって」
颯太「氷の女王か。そんな冷たい奴じゃないと思うんだけどな」
幸介「……50回、フラれて、よくそんなこと言えるな」
颯太「俺たちはまだ1年生だ。卒業までまだ2年以上ある。気長にやってくよ」
幸介「お前さあ、せっかくの高校生活を棒に振る気か? アイスクイーンを攻略するくらいなら、他の子にいった方がまだ、確率があると思うぞ」
颯太「別に誰でもいいってわけじゃねーよ」
幸介「けど、お前、ハーレム作りたいっていってたじゃねーか」
颯太「……それは野望だ。恋とはまた別の話だろ」
幸介「なんだそりゃ? けど、恋……か。なあ、颯太。今日の学校の帰り、ちょっと寄ってかないか?」
颯太「どこに?」
場面転換。
街中を歩く、颯太と幸介。
颯太「占いって……。うさんくせー」
幸介「恋愛系の占いは、すげー当たるらしいぞ。アイスクイーンを攻略できそうか、占ってもらえば?」
颯太「占いねぇ……。女子じゃねーんだから」
幸介「じゃあ、行くの止めるか?」
颯太「……行く」
場面転換。
占いの館内。
占い師「つまり、その恋が成就するかどうかを知りたいということですね?」
颯太「お願いします!」
占い師「……では、少しだけ未来を見てみましょう」
颯太「……」
占い師「……」
颯太「……ど、どうですか?」
占い師「……あなたの努力次第、といったところでしょうか」
颯太「なんだよ、そりゃ! 意味ねー!」
占い師「未来が凄く虚ろな状態です」
颯太「あーあ。一気に冷めた。もういいや」
占い師「……もし、相手の気持ちがわかる方法があるとしたら、知りたいですか?」
颯太「……そ、そりゃ知りたいけど。そんなの無理だろ」
占い師「この水晶は感情を真逆にすることができます」
颯太「感情を逆に?」
占い師「はい。あなたのことが好きだった場合は嫌いになります」
颯太「……嫌いだった場合は好きなる、ってこと?」
占い師「そうです。効果は1日しか持ちませんが、相手の気持ちを知るには十分でしょう」
颯太「胡散臭いな。どうせ高いんだろ? その水晶」
占い師「3日間、無料でお貸ししましょう」
颯太「マジで? 後から金要求しない?」
占い師「しません」
場面転換。
街中を歩く颯太と幸介。
幸介「胡散臭いな」
颯太「まあ、俺もそう思ったけどさ、タダで貸してくれるっていうから、借りてみたんだよ」
幸介「その後、高額な商品を売りつけてくんじゃねーの?」
颯太「そんときは、断るさ……」
ドンと不良とぶつかる颯太。
不良「いてーな、コラ! どこ見て歩いてんだ? ああ!?」
颯太「え、あ、その……すいません」
不良「謝ればいいってもんじゃねーぞコラ! 慰謝料払えや」
颯太「いや、慰謝料って……」
不良「ストレス発散に付き合ってくれるでも、いいんだぜ?」
颯太「あ、あの。これ、見てください」
不良「あん? 水晶がどうした……」
ギュイーンという音が響く。
不良「……ぶつかって悪かったな。痛かっただろ?」
颯太「え? いや、別に、大丈夫です」
不良「しかも、インネンも付けちまったな。本当にごめんな。これで、ジュースでも飲んでくれ」
不良が颯太に千円を渡す。
颯太「……千円」
不良「じゃあ、俺、もう行くな」
不良が歩き去っていく。
幸介「……どうやら、その水晶、本物みたいだな」
颯太「ああ」
場面転換。
学校のチャイムが鳴り響く。
颯太「ふっふっふ。ついにハーレムを作るという野望を叶えるときが来た!」
幸介「どうする気だ?」
颯太「とりあえず、クラスの女子に使う。効果は1日って話だけど、その1日で付き合っちまえばいいんだよ」
幸介「なるほど……」
颯太「今まで日蔭者だった俺だったがな。これからは逆転人生だぜ!」
場面転換。
女生徒1「……話ってなに?」
颯太「ちょっとこれを見てくれ」
女生徒1「……水晶?」
ギュイーンという音が響く。
颯太「俺のこと、好きになったか?」
女生徒1「は? なにそれ?」
颯太「え?」
女生徒1「で、その水晶がどうしたの?」
颯太「……」
場面転換。
颯太「な、なぜだ……。なぜ、誰も、俺を好きにならない! クラスの女子、全員ダメだったぞ!」
幸介「……あ、わかった。これ、逆転させるって話だよな? 嫌いなのを好きに、好きなのを嫌いに」
颯太「ああ、そうだな」
幸介「普通の場合は変わらないんじゃね?」
颯太「……あ、そっか」
幸介「可もなく不可もなくって奴だな。良かったな。嫌われてなくて」
颯太「……この場合、あんまり嬉しくない」
幸介「わざと嫌われるって手もあるけど、1日過ぎたら元に戻るって考えたら、微妙だよな」
颯太「そうだな……」
幸介「結局、使えない水晶だったな」
颯太「いや。これから、本命に向かう。ここからが本番というか、こっちは勝ちが確定してる」
場面転換。
一華「……映画の件は断ったはずだけど」
颯太「まあまあまあ、これ見てくれよ」
一華「……水晶?」
ギュイーンという音が響く。
一華「……」
颯太「なあ、一華。土曜日に映画行こうぜ。っていうか、俺の彼女になってくれよ」
一華「……もう二度と、話しかけないでくれる?」
颯太「……え?」
スタスタと一華が歩き去っていく。
颯太「え? え? え? なんで?」
幸介がやって来る。
幸介「うーん」
颯太「なあ、幸介! なんでだ!? なんでなんだ!?」
幸介「あの態度を見てると、普通ってわけじゃないさそうだよな」
颯太「そうなんだよ! なんか、逆にいつもより冷たいっていうか……」
幸介「……あ! わかった!」
颯太「なんだ?」
幸介「アイスクイーンって、ツンデレなんだ」
颯太「ええええ! じゃあ、さっきのはツンなのか? それとも、嫌われてるからの態度なのか!?」
幸介「うーん。わからん」
颯太「くそーーーー! どっちなんだーー!?」
終わり。