■概要
人数:2人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、ラブコメ
■キャスト
白雪 姫乃(しらゆき ひめの)
桜治(おうじ)
■台本
姫乃(N)「借りを作ったら、必ず返す。それが私の、モットー。つまり、やられたら、やり返すってこと。まあ、倍にして返すってほどじゃないけど、とにかく、やられっぱなしは絶対に嫌。この物語は、私がある人物に仕返しをするものだ」
場面転換。
学校のチャイム。桜治が走って来る。
桜治「白雪先輩―! お待たせしましたー……あっ!」
桜治が転ぶ。
姫乃「ちょっと、何やってるのよ。大丈夫?」
桜治「あうう……。痛かったですぅ」
姫乃(N)「……くっ。涙目を浮かべてる顔も、可愛いわね」
姫乃「ほら、涙拭いて。立てる?」
桜治「はい……」
立ち上がる桜治。
姫乃「それにしても、桜治くん。遅かったわね。何してたの?」
桜治「すいません。掃除当番だったので」
姫乃「もう、そういう時はメール送りなさいって言ってるでしょ。心配したじゃない」
桜治「す、すいません……」
姫乃(N)「よし、ここであっさりと許してあげることで、優しさと年上の余裕というのを見せつけてあげるわ。さあ、私にメロメロになりなさい!」
姫乃「まあ、仕方ないから許してあげるわ。でも、次からは気を付けるのよ、いいわね?」
桜治「はい!」
姫乃「ふふ。いい返事ね」
桜治「えへへ。優しい白雪先輩、大好きです」
姫乃「……」
姫乃(N)「うわーー! その笑顔、可愛い過ぎるのよ! 私の攻撃にカウンターを合わせてくるなんて、ズルい! ズルいわ!」
姫乃「そ、それじゃ、行くわよ」
桜治「はい」
二人が歩き出す。
桜治「今日はどこに行くんですか?」
姫乃「加賀見(かがみ)公園の裏にある森よ。あそこなら、珍しい花がたくさんあるからね」
桜治「僕、頑張って、綺麗な花、集めますね」
姫乃「文化祭までもう時間がないからね。今回で10種類以上は採取しておきたいわ」
桜治「……部員、入ってきますかね?」
姫乃「どうかしらね。押し花部なんて、マニアックなところに入りたいなんて人、いないと思うわよ」
桜治「……先輩。ごめんなさい」
姫乃「ん? なにが?」
桜治「僕……。先輩と二人きりのままの方がいいって思っちゃってます。だから、部員、増えないといいなって……」
姫乃「……」
姫乃(N)「うわー! 可愛い! 不意打ちなんて卑怯よー! くっ! こうなったら」
姫乃「そうね。私も、桜治くんがいれば、それでいいわ」
姫乃(N)「どう? かなりのサービス台詞よ! これは効いたでしょ?」
桜治「先輩、手を繋いでいいですか?」
姫乃「へ? あ、うん。いいけど……」
桜治「ありがとうございます」
スッと手を繋いでくる桜治。
姫乃(N)「えええー! 私の台詞にリアクションなし? しかも、手を繋ぐって……。しかも、恋人繋ぎじゃない! ううっ! 心臓がどきどきし過ぎて、もたないわ」
場面転換。
小川が流れる音と森を歩く音。
桜治「先輩、足元、気を付けてくださいね」
姫乃「あ、ありがと」
桜治「あ、ここなら、川を飛び越えられそうですよ。……よっと!」
桜治がジャンプして、小川を飛び越える。
姫乃「へえ。桜治くん、結構、運動能力高いわね。……私、飛べるかしら」
桜治「大丈夫です! 僕が受け止めますから、全力で飛んでください」
姫乃「……」
姫乃(N)「くぅ……。桜治くん。可愛い顔で華奢な体つきに見えて、結構、筋肉あるのよね。ギャップ萌えを仕掛けてくるなんて、ズルいわよ」
姫乃「じゃ、じゃあ、行くわよ! ……えい!」
姫乃がジャンプするが、ズルと滑る。
桜治「あっ!」
姫乃「きゃあっ!」
桜治「危ない!」
バシャと二人が川に落ちてしまう。
桜治「先輩! 怪我はありませんか?」
姫乃「う、うん。大丈夫。……それより、ごめんなさい。私のせいで濡れちゃったわね」
桜治「僕のことはいいんです。先輩に怪我がなくて、よかったです」
姫乃「……」
姫乃(N)「うう……。濡れた桜治くんは、なんかいつもと違って、格好いい……。しかも、何気に私を受け止めてくれるとか……。もう、ホント、なんなのよー!」
場面転換。
服を絞ぼって、水が落ちる音。
桜治「川が浅くてよかったですね」
姫乃「そ、そうね……くしゅっ!」
桜治「先輩、大丈夫ですか? ……タオル、持ってくればよかったですね」
姫乃「……」
姫乃(N)「は、恥ずかしいけど、これはチャンスよ。さすがの桜治くんでも、耐えられないはず。さあ、顔を真っ赤にして、私に胸キュンするのよ!」
バッと、制服の上を脱ぐ姫乃。
桜治「え? せ、先輩?」
服を絞る姫乃。
姫乃「こ、これで、少しは乾くのが早くなればいいんだけど……」
姫乃(N)「ど、ど、ど、どうかしら? さすがに、女の子の下着姿には動揺を隠せないでしょ?」
バサっと服を姫乃の肩に羽織らせる桜治。
桜治「僕のシャツです。大分、乾いてると思うので、着てください」
姫乃「あ、ありがとう……」
姫乃(N)「うう……。渾身の一撃だったのに、上手く躱された上に、反撃されたわ」
桜治「あ、そうだ、先輩。お腹減りませんか?」
姫乃「え?」
桜治「おやつ持ってきたんです」
カバンをガサガサと漁る桜治。
桜治「よかった。袋に入れてたから濡れてなかったです」
姫乃「……アップルパイ?」
桜治「はい。先輩が食べたいって言ってたので、焼いてきたんです」
姫乃「え? これ、桜治くんが作ったの?」
桜治「はい!」
姫乃「凄いわね。桜治くん、いいお嫁さんになりそう」
桜治「えへへ。それじゃ、先輩、お婿に来てください」
姫乃「……」
姫乃(N)「うわーん! またやられたー! 私ばっかり、胸キュンするのズルい―! 私も、桜治くんを胸キュンさせたいー! 桜治くんを私に惚れさせて、骨抜きにしたいー! ……はあ。桜治くんにはやられてばっかりね。でも、私は諦めない。絶対に桜治くんに仕返ししてみせるわ!」
終わり。