■概要
主要人数：2人
時間：10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
間宮 天斗（まみや たかと）
夏奈（かな）
■台本
天斗（Ｎ）「たぶん、それは、一目惚れだったんだと思う」
ドンという衝撃音。
天斗「ぐあっ！」
天斗が倒れる音。
夏奈「私の勝ちです。それじゃ、守ってもらいますからね。約束！」
場面転換。
天斗「はあああ！ はっ！ はっ！」
夏奈「やっ！ たっ！ はっ！」
天斗と夏奈の攻防が続く。
夏奈「やあああ！」
天斗「ぐおっ！」
夏奈の攻撃を食らい、天斗が吹っ飛ぶ。
天斗「くっ……。参った」
夏奈「ありがとうございました！」
天斗「くそー。やっぱ、部長は強いな」
夏奈「いやー、間宮先輩も、随分と良くなってきてますよ」
天斗「そうかぁ？ 全然、実感はねーけどな」
夏奈「多分、私としか手合わせしてないからじゃないですかね。試合とかに出れば、きっと自分の成長を感じられると思いますよ」
天斗「試合ねぇ……。って、中国拳法の試合なんてあるのか？」
夏奈「あるに決まってます！ ……ただ、高校生だけだと人数が足りなくて、一般と合同になりますけど……。まっ、それでも規模は小さいんですけどねー」
天斗「ふーん。部長は出るのか？ 試合」
夏奈「親父……師範に、お前が出るとみんなのやる気がなくなるから、試合に出るなって言われるんですよねー」
天斗「……強すぎるのも考えものだな」
夏奈「はは……。ですね」
天斗「うーん。試合かぁ。出てみようかな」
夏奈「是非！ 間宮先輩なら、優勝、行けちゃうんじゃないですかね？」
天斗「身内びいきし過ぎだ。あんまり、持ち上げるなよ」
夏奈「そうですかねー？ 色眼鏡無しの評価だったんですけど」
天斗「だから、持ち上げすぎだって。……それに、お前に勝てなきゃ意味ねーし」
夏奈「え？ 今、何か言いました？」
天斗「いや、なんでもない。……っと、そろそろバイトの時間だ」
夏奈「あれ？ 間宮先輩、バイト、始めたんですか？」
天斗「ああ。いつまでも、ジャージじゃ格好付かないだろ。せめて、練習着が欲しくてな」
夏奈「あの、間宮先輩は、本当は嫌だったりしませんか？ 私と練習するの」
天斗「……確かに、きっかけはお前との約束だ。だけど、今は本当に、面白くて続けてるんだ」
夏奈「えへへ。そう言って貰えると嬉しいです」
天斗「俺はさ、毎日がつまらなくて、少し喧嘩が強いからって粋がって、弱い奴から金を巻き上げて……。ホント、どうしようもない奴だったよ」
夏奈「ですねー」
天斗「……改めて、肯定されると、凹むな」
夏奈「あ、すいません」
天斗「いいさ。ホントのことだったしな。けど、ある日、お前が現れて、俺に勝負を仕掛けて来た。……勝った方の言うことをなんでも聞くってルールでな」
夏奈「懐かしいですねー」
天斗「まさか、更生するまで、練習に付き合えなんて言われるとは思わなかったな」
夏奈「あはは……。今、考えると凄いこと言ってますよね。おこがましいというか、なんというか……」
天斗「けど、もし、俺が約束を破って、逃げたらどうするつもりだったんだ？」
夏奈「そうですね……。ボコって、無理やり練習に参加させたんじゃないですかね」
天斗「怖ぇな」
夏奈「約束は絶対ですから。私、約束にはうるさいんです」
天斗「よかったよ。逃げなくて」
夏奈「あの勝負を受けたこと、後悔してますか？」
天斗「いや、そんなことはない。まあ、最初は面倒くさいと思ったけどな。けど、そのおかげで、真っ当になれたからな」
夏奈「武道は、心も鍛えられますからね」
天斗「そういえば、お前。もし、負けたらどうするつもりだったんだ？」
夏奈「え？ そのときは間宮先輩の言うことを聞いてましたよ。そういう約束でしたから」
天斗「いや、危険すぎるだろ。ろくでもない不良の言うことを聞くなんて」
夏奈「んー。どうですかね？ あの時は、どちらにしても、私の得だと思ってましたから」
天斗「どういうことだ？」
夏奈「私はこう見えて、結構、我がままってことです。欲しいものは力づくでも奪いたいって思うくらいに」
天斗「おいおい。お前、さっき、武道は心が鍛えられるって言ってなかったか？ 全然、自制心、鍛えられてないじゃないか」
夏奈「あー、じゃあ前言撤回します。武道で心は鍛えられません」
天斗「そっちを撤回するのかよ……って、いかん。そろそろ、時間だ。じゃあな！」
夏奈「はい。さよならです」
場面転換。
天斗「はあああ！ はっ！ はっ！」
夏奈「やっ！ たっ！ はっ！」
天斗と夏奈の攻防が続く。
夏奈「やあ！」
天斗「ぐあっ！」
夏奈の攻撃を受けて、崩れ落ちる天斗。
天斗「うーむ。全然、勝てん」
夏奈「あの、間宮先輩。ちょっと、相談に乗って貰えないでしょうか？」
天斗「ああ、別にいいけど」
夏奈「もうすぐ、文化祭じゃないですか」
天斗「あれ？ そうだっけ？」
夏奈「知ってますか？ 文化祭を好きな人と回ると、成就するって」
天斗「へー。そんな都市伝説みたいな話があるのか……って、ん？ もしかして、お前……一緒に回りたい奴がいるのか？」
夏奈「はい。実はというか、なんというか。私、好きな人がいるんですよ」
天斗「へ、へー……そ、そうなんだ」
夏奈「間宮先輩は好きな人、いるんですか？」
天斗「……い、いや、いないな」
夏奈「そうなんですか……」
天斗「……で、相談って？ もしかして」
夏奈「はい。好きな人に、どうアプローチすればいいかなって思いまして」
天斗「……普通に、告白すればいいんじゃないか？」
夏奈「それが……どうやら、上手くいく可能性が少なそうなんです」
天斗「そうなのか……」
夏奈「だけど、諦めるつもりはないんですよね。こういう場合、どうすればいいんですか？」
天斗「そう言われてもな。とにかく、真剣だってことを伝えないと始まらないんじゃないか？」
夏奈「どうやって、伝えたらいいですかね？」
天斗「えっと……ベタだけど、屋上とかに呼び出す、とか？」
夏奈「なるほどです。場所が重要なんですね」
天斗「ああ……」
夏奈「……ですが、やっぱり、少し怖いですね。拒絶されたらと思うと……」
天斗「お前でも、そんな風に思うことがあるんだな。……けど、まあ……その、なんだ。もし、ダメだったら……俺が付き合ってやるよ」
夏奈「……約束ですよ？」
天斗「ああ。……さてと、俺はバイトがあるから帰るわ。じゃあな」
夏奈「はい。さよならです」
歩き出す天斗。
天斗（Ｎ）「くそ。こんなことなら、さっさと告白しておけばよかった。あいつに勝ったら、なんて、変なルールなんか決めないで……。いや、でも、フラれるくらいなら、これでよかったのかもな……」
場面転換。
ガチャリとドアを開けて、天斗がやってくる。
天斗「……よう、部長。……どうだったんだ？」
夏奈「間宮先輩」
天斗「……」
夏奈「好きです。付き合ってください」
天斗「へ？ な、な、なに言ってんだよ！ なんの冗談だ？」
夏奈「あれ？ 先輩が言ったんですよ？ 真剣だって伝えるなら、屋上がいいって」
天斗「……え？ ほ、ホントに俺なのか？」
夏奈「さっきから、そう言ってるつもりなんですけど」
天斗「……そっか。真剣なんだな？」
夏奈「はい」
天斗「じゃあ、俺も真剣に答えるな」
夏奈「……」
天斗「ごめん」
夏奈「え？」
天斗「……その答えは、お前に勝ってから言わせてくれないか？ 先輩として……男として……お前に勝って、俺からお前にいいたんだ。……その、ごめん。つまらないプライドなんだけどな」
夏奈「えっと、じゃあ、私はフラれたってことですかね？」
天斗「いや、フラれたって言うか、保留？」
夏奈「んー。私の告白に対して、間宮先輩は一旦、断ったってことですよね？」
天斗「えーと。まあ、そうなるかな」
夏奈「わかりました」
天斗「ごめん。どうしても、俺の方からいいたいんだ」
夏奈「それじゃ、付き合ってくれるんですね」
天斗「は？ いや、お前、俺の話聞いてた？」
夏奈「先輩が言ったんですよ。フラれたら、付き合ってくれるって」
天斗「……あっ！」
夏奈「約束は絶対です！」
天斗「えっと……先輩としてのプライドはどうなるんだ？」
夏奈「さあ？」
天斗「……」
終わり。