【声劇台本】ホラーハウス

〈前の10枚シナリオへ〉  〈次の10枚シナリオへ〉

〈声劇用の台本一覧へ〉

■概要
主要人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
いっちー
もも
将也(まさや)
健太(けんた)
室長(しつちょう)
その他

■台本

賑わっている遊園地。

長蛇の列に並んでいるいっちー。

いっちー(N)「遊園地にある、ホラーハウス。ここの、夏限定のホラーハウスは、本当に怖いということで、とても人気がある。僕もこのホラーハウスのファンで、毎年、必ず通っている。ふふふ。今年はどんなのかな? 凄く楽しみだ」

もも「よお! いっちー! やっぱ、お前も来てたか」

いっちー「ああ、ももくんも初日から来てるんだね」

もも「あったりめーよ。ここのホラーハウスが一年の楽しみだからな」

いっちー「わかるわかる。って、ももくん、横入りはダメだよ。ちゃんと並ばない」

もも「いいじゃん。どうせ、気付かないし」

いっちー「だーめ! ちゃんと並び直して」

もも「……はあ。相変わらず、いっちーは真面目だなぁ……」

場面転換。

室長「今年も、俺たちの季節がやってきた。お客様はここのホラーハウスを楽しみにして来てくれているんだ。このメンバーの中にはいないと思うが、一切、一瞬でも気を抜くなよ。常に最大限のパフォーマンスでお客様を驚かせるんだ! いいな!」

一同「はい!」

室長「ここのホラーハウスの売りは、本気の恐ろしさを提供することだ。どんなものでも、全力で驚かせて、怖がらせる。例え、子供でもだ。トラウマを植え付けるつもりでやれ」

将也「……あのー、室長。ホントに、その、いいんでしょうか? あとで、親から苦情がきたりは……」

室長「馬鹿者! お客様は、うちの、本気の怖さを楽しみに来てると言ってるだろ! つまり、全てをわかってきている。ここに子供を連れてきているということは、それを覚悟した上ということだ。そんな覚悟を決めた者に、子供だからと言って手を抜くなんてことは、返って失礼だ」

将也「も、申し訳ありません!」

室長「わかればいい。よし、それじゃ、30分後にオープンだ。各自、入念に最終チェックをしておけ」

一同「はい!」

場面転換。

将也「……」

健太「なんだ、将也。緊張してるのか?」

将也「健太か……。誘って貰って悪いけど、まさか、ここまでガチだと思わなかったよ。正直、自信、無くなってきた」

健太「大丈夫だって。練習通りやればいいんだって」

将也「わかってるけどさ……」

健太「いいか、将也。こういうときはなりきるんだ。お前は人間じゃない。妖怪だ」

将也「妖怪……」

健太「そうだ。妖怪は人を驚かせるのが仕事……いや、本能だ! いいか。お前は驚かせるためだけに存在してるんだ」

将也「……本能。驚かせるためだけに存在してる……」

健太「ま、今のお前は特殊メイクで、暗がりで見るだけで失神するくらいの出来だ。なりきって、脅かせば、相手のトラウマくらいにはなれるさ」

将也「ありがとう、健太。俺、やれそうな気がする」

健太「おう! お互い、頑張ろうぜ」

場面転換。

将也「おおおお……」

男の客「うわああああ!」

女の客「きゃああああ!」

二人が走り去っていく。

将也「よし! だいぶ慣れて来たぞ」

ダダダダと走る音が近づいてくる。

将也「お、次のお客さんが来たな。よし!」

ドンドン足音が近づいてくる。

将也「おおおおおー!」

健太「ぎゃああああー」

将也「うああああああ!」

健太「あ、ああ、なんだ、将也か。暗がりで見ると、ホントヤバいな」

将也「健太こそ。危うく、トラウマになるところだったよ」

健太「お互い様だ」

将也「それより、お前、なに持ち場離れてるんだよ? 怒られるぞ?」

健太「ああ、そうだ! そんなこと言ってる場合じゃない!」

将也「……なんかあったの?」

健太「出たんだよ!」

将也「なにが?」

健太「妖怪が!」

将也「……そりゃ、ここ、ホラーハウスだからね。他のスタッフさんが……」

健太「いや、そうじゃなくて! 本物だよ、本物!」

将也「本物?」

健太「そうだ。顔に、目が一つしかなかったんだ」

将也「……見間違いじゃない?」

健太「いーや! 絶対、見間違いなんかじゃない! あれは……本物だ! うう……このホラーハウスは呪われてしまったんだ」

将也「とにかく、室長に報告して置こうよ」

健太「そ、そうだな……」

場面転換。

室長「馬鹿者! 勝手に持ち場を離れるとは何事だ!」

健太「ですが、室長。本物ですよ? 本物が出たんです!」

室長「いいか、健太。俺たちの仕事はなんだ?」

健太「……驚かせることです」

室長「そうだ! 俺たちの前に現れた者は誰であろうと、なんであろうと驚かせるだけだ。それが例え、本物でも、だ!」

健太「……室長。俺、間違ってました。俺の前に立ったら、全部お客さんです。お客さんを驚かせるのが、俺の仕事でした」

室長「そうだ! そのことを忘れるなよ!」

健太「はい!」

室長「将也。お前も、その覚悟を持って、持ち場に立って欲しい」

将也「はい! わかりました!」

室長「よし! それじゃ、2人とも持ち場に戻れ」

健太・将也「はい!」

場面転換。

将也「そう……俺は、今、妖怪だ。俺の前に来たものを驚かせる。そのことに集中するだけだ」

徐々に足音が近づいてくる。

将也「よし、次のお客さんだ。全力で驚かせるぞ」

目の前まで足音が来る。

将也「うおおおお……」

もも「ぎゃあああああ!」

将也「うわああああああ!」

場面転換。

いっちーとももが歩いている。

もも「いやー! やっぱり、今年も最高だったなー」

いっちー「うん。すごかったね。すっかり、肝が冷えちゃったよ」

もも「俺さ、怖すぎて、変身解けそうになったもんな」

いっちー「ええ? それ、ヤバいよ!」

もも「大丈夫大丈夫。解けそうになっただけだって」

いっちー「本当? もう、ももくんは、目が百個あるんだから、気を付けないと」

もも「いっちーはいいよな。目が一つしかなくて。隠すの楽そう」

いっちー「そんなことないよ。大きいから隠すの大変だよ」

もも「そりゃ、そっか。……にしても、あそこのホラーハウスはすげーよ。俺たちよりも、怖いんだもんな」

いっちー「そうだよねー。あ、そうだ。また明日も行かない?」

もも「お、いいねー!」

いっちーとももが談笑しながら歩いて行く。

終わり。

〈前の10枚シナリオへ〉  〈次の10枚シナリオへ〉