■概要
人数:3人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
美里(みさと)
鉄也(てつや)
光一(こういち)
■台本
美里(N)「鉄也と光一はいつも喧嘩をしている。仲が悪いっていうと、そうでもない気もする。だって、そこまで仲が悪いなら、いつも一緒にいないと思う。なんだかんだ言って、仲がいいのかな。ほら、喧嘩するほど仲がいいっていうでしょ?」
鉄也「おらあ、光一! てめえ、そのメット、俺んだろうが! 気に入ってんだぞ、それ! 返せ、こらぁ!」
光一「っざけんな! 自分で買ったもんだっての!」
鉄也「嘘付け! それ、限定品だぞ!」
光一「だーかーら! めっちゃ手に入れるの大変だったんだって!」
鉄也「うっせー! いいから返せ!」
光一「だから、俺んだっての!」
殴り合う鉄也と光一。
美里「光一、鉄也、いい加減にしなさい!」
鉄也「げっ! 美里!」
美里「なにが、げっ、よ! 失礼ね」
光一「お前には関係ねーだろ」
美里「家の前じゃなかったらね。うるさくてかなわないんだけど。他でやってくれない?」
鉄也「そうだ、ツーリングに誘おうって思ってたんだった。なあ、美里、ツーリング行こうぜ」
光一「っざけんな! 俺が先に誘おうとしたんだぞ! お前はどっか行けよ」
鉄也「はあ? ざけんな。美里は俺と行くに決まってんだろ。光一、お前が帰れ」
光一「お前が帰れ!」
鉄也「やるか、こらぁ!」
光一「おう、やってやらあ!」
鉄也と光一が殴り合う。
美里「……だ、か、ら! いいかげんにしろー!」
ゴン、ゴンと二人の頭を殴る美里。
鉄也「ぐあ!」
光一「ぎゃあ!」
美里「ったく。近所迷惑になるでしょ!」
鉄也「すまん……」
光一「ごめん……」
鉄也「なあ、美里、ツーリングは……?」
美里「行かない!」
バンとドアを勢いよく閉める美里。
美里「はあ……」
美里(N)「小さい頃はあんなに仲がよかったのに……。なんで、あんなに喧嘩するようになったんだろう。昔みたいに三人で仲良くしたいのになぁ……」
場面転換。
鉄也「明けましておめでとう、美里」
光一「おめでとう、美里」
美里「うん、明けましておめでとう、鉄也、光一」
鉄也「でさ、美里。俺と一緒に初詣行かね?」
光一「ざけんな! 俺が美里と一緒に行くんだよ!」
鉄也「は?」
光一「あ?」
鉄也「やんのか、こら」
光一「おう、やってやるよ!」
美里「止めなさい!」
鉄也「うっ!」
光一「……」
美里「三人で行けばいいでしょ。ね? 行こう」
鉄也「……美里と二人がいいんだけどな」
光一「俺も……」
美里「はあ……。なんで、二人とも、こんなに仲が悪くなっちゃったのよ。前はすごく仲が良かったじゃない」
鉄也「……いつの話だよ」
光一「そうだよ。それに、俺は昔からこいつのことは気に入らなかったんだよ」
鉄也「あ、俺も!」
光一「は? 真似すんな」
鉄也「真似じゃねえよ。ホントにそう思ってたんだよ!」
美里「三人で行かないなら、私、行かない」
鉄也「……しゃーね。今回だけは三人でもいいよ」
光一「俺も……」
場面転換。
神社が賑わっている。
美里「うわー、すごい人ね」
鉄也「美里、はぐれないように手を繋ごうぜ」
光一「は? 何言ってんだよ、俺と繋ごうぜ、美里」
美里「うーん。じゃあ、こうしよう」
ギュっ、ギュっと二人の手を握る。
美里「こうやって二人の間に入って、二人と手を繋げばいいんじゃない?」
鉄也「……」
光一「……」
美里「ふふ。さ、お前り行こ!」
場面転換。
パンパンと手を合わせる音。
美里「二人は何をお願いしたの?」
鉄也「……秘密」
光一「俺も」
美里「なによ、つまんなーい」
光一「美里は何をお願いしたんだよ」
美里「私? 私は鉄也と光一が仲良くできますように、って」
光一「……」
鉄也「……」
美里「あ、おみくじだ。引いていこう!」
場面転換。
美里「あははは。三人とも中吉だって。それはそれで凄いね」
鉄也「えーっと、恋愛のところは……一年の目標を立てて……」
光一「それを守ること」
美里「ふーん。じゃあ、ここで、一年の目標を決めようか。おみくじの裏に書いておこうよ」
鉄也「……そう、だな」
場面展開。
美里「二人とも、書いた?」
鉄也「ああ」
光一「俺も書けた」
美里「じゃあ、これはちゃんと見せ合おうよ。……私は、これ! 鉄也と光一を喧嘩させない!」
鉄也「……」
光一「……」
美里「二人は?」
鉄也「俺は……光一と喧嘩しない」
光一「俺は……鉄也と仲良くする」
美里「やったー。三人とも一緒だね! これなら、今年の目標も達成できそうね!」
鉄也「ああ」
光一「そうだな」
美里「うん、うん。今年は三人で仲良く過ごそうね。あ、見て、甘酒出してる。飲んでかない?」
鉄也「そうだな」
光一「飲んで行こうか」
三人が歩き出す。
美里「きゃっ!」
美里が転ぶ。
鉄也「大丈夫か、美里」
美里「いたっ……」
光一「……足、痛いのか?」
美里「うん。くじいたみたい」
鉄也「……歩けないなら、肩貸すぞ?」
美里「ごめんね。ありがとう。それじゃ、甘えちゃおうかな。どっちかお願いしてもいい?」
鉄也「……」
光一「……」
鉄也「うおおおお!」
光一「はあああああ!」
鉄也と光一が殴り合いを始める。
美里「えええ! なんで!?」
美里(N)「こうして、立てた今年の三人の目標は、数分で破られたのだった……」
終わり。