■概要
人数:4人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
颯真(そうま)
隆志(たかし)
麗香(れいか)
■台本
颯真「好きです! 付き合ってください!」
女の子「ごめんなさい!」
颯真「ぎゃー! そんなー!」
拍手をしながら隆志がやって来る。
隆志「ぎゃっはっはっは! 颯真、フラれた人数50人達成、おめでとう!」
颯真「うっせー! うわーん! ちくしょう! 次こそは!」
走り出す颯真。
隆志「あっ! 逃げた」
場面転換。
教室内。
颯真「はあ……。冬だな……」
隆志「12月だからなー」
颯真「春は来るんだろうか……」
隆志「4月くらいだろうな。暖かくなるのは」
颯真「いや、ちがくて。俺の話。俺の心の話」
隆志「ああ。そういうことか。まあ、お前の場合は冬っていうより、氷河期だろ」
颯真「さすがの恐竜並みの俺のメンタルも絶滅しそうだ」
隆志「まだ絶滅してないのが驚きだけどな」
颯真「はあ……。恋はコリゴリだよ。しばらくは趣味にでも没頭するかなー」
隆志「お前……その台詞、1週間前にも言ったよな?」
颯真「うっせー。今度こそは本気なんだ、俺は」
隆志「まあ、そう言うなって。気持ち切り替えて、次に行こうぜ、次に」
颯真「お前な―。他人事だと思って勝ってなこと言いやがって」
隆志「おいおい。他人事だなんて心外だな。俺はお前の100連敗に賭けてるんだ。3ヶ月分の小遣い、全部な」
颯真「ハッ倒すぞ!」
隆志「まあ、今のは半分冗談として」
颯真「半分本気なのかよ」
隆志「隣のクラスの青手木とかどーよ? 結婚届書けば、付き合えるみたいだぞ」
颯真「お前さあ、もしかして、俺が誰にでも告白してると思ってないか?」
隆志「……違うのか?」
颯真「なんだよ、その心底意外そうな顔は! 俺はちゃんと、好きになった相手にしか告白してねえ!」
隆志「じゃあ、お前、今まで告白した50人全員好きだったのか?」
颯真「当たり前だろ」
隆志「お前と俺の好きの基準は絶対違うと思う……」
颯真「今回で完璧に心折れたからな。しばらくは立ち直れねえ」
隆志「そんなこと言うなよ。お前がフラれるのをみんなが期待してるんだぞ!」
颯真「なんでフラれるのが前提なんだよ。それに俺はお前らを楽しませるために告白してるわけじゃねえ! 真実の愛を探し求めてるんだ!」
隆志「なんつーか、お前が愛を語ると途端に軽く感じるな。……まあいいや。けど、実際、お前は詰んでる感じだよな」
颯真「どういうことだよ?」
隆志「いやさ、お前が50人にフラれてるって、全校生徒が知ってるじゃん?」
颯真「何で知ってるんだよ?」
隆志「まあ、俺が言いふらしてるからだけどな」
颯真「3階から突き落とすぞ」
隆志「お前は良くも悪くも有名人だからな。相手にはプレッシャーなんだよ」
颯真「プレッシャー? なんでだよ?」
隆志「お前が告白したとして、もし、OKなんか出そうものなら、その噂は一気に、口内に広がる。つまり、お前と付き合うということは、全校生徒にそのことがバレるということだ。……どうだ? 相手の身になって考えて、OKしやすいか?」
颯真「……ないな」
隆志「そもそもは、お前が次から次へと舌の根も乾かないうちに告白するのは悪いんだけど」
颯真「いや、お前が言いふらすのが元凶だと思うぞ」
隆志「記録になっちまったのが致命傷だな。完璧に、周りは面白がってる。OKなんて出したら、その面白がってる奴を敵に回すことになるからな」
颯真「俺にして見りゃ、そいつらが俺の敵だけどな」
隆志「ま、てなことで、お前の学園生活はみんなへのエンターテイメントの供物として諦めろ」
颯真「ふざけんな」
隆志「で、だ。どうする? 好きな子いないなら、作るしかないけど。どんな子が好みなんだ?」
颯真「え? あー、そうだな。俺とお話してくれる……子、かなぁ」
隆志「お前、めちゃめちゃ恋のハードル低いな」
颯真「そうかぁ?」
隆志「じゃあ、このクラスの女子は大体、好きなんじゃないのか?」
颯真「そうだよ。だから、ほぼ全員にフラれてる」
隆志「ああ……。そっか。いや、お前、すげえな。クラス全員の女子にフラれて、よく毎日、登校できるもんだ」
颯真「いや、全員じゃねえよ」
隆志「え? 誰だ? ……あー、もしかして麗香か?」
颯真「そう」
隆志「意外だな。いの一番で告白しそうな感じなのに。なんでだ? 好きじゃないのか? ……まあ、美人だけど、冷たそうだからな」
颯真「いや。麗香はああ見えて、すげー優しいんだぞ。後輩の相談には親身になってるし、老人ホームのボランティアにも参加してるんだぞ。迷子の子供の親を探すのも必死でやってたしな。クラスの中じゃ、一番、優しいやつなんじゃないかな。あいつ、笑顔も凄い可愛いんだぜ」
隆志「へー。お前、すごい見てるんだな。でも、お前、それでも麗香のこと、好きじゃないのか?」
颯真「いや、好きだよ」
隆志「なら、なんで、告白しねーんだよ?」
颯真「フラれるのわかってるし」
隆志「まーな。お前はフラれた数の記録保持者だけど、麗香はフッた数の記録保持者って噂だからな」
颯真「フラれるのがわかってるのに、告白はできねーよ」
隆志「今更な気がするけどな……」
颯真「おっ! やべえ! 今の話、麗香に聞かれたかも。すげー睨まれてる」
隆志「おう、やべーな。殺気を感じるぜ」
場面転換。
廊下を歩く颯真。
颯真「あー、今日もいい天気だなー」
そこに隆志が走って来る。
隆志「おい、颯真! お前、麗香には告白しないんじゃなかったのかよ?」
颯真「へ? ああ。告白する気はねーよ」
隆志「あれ?」
颯真「どした?」
隆志「いや、お前が麗香に告白してフラれたって噂だぞ」
颯真「は? いやいやいや。なんでだよ? どうして、そんな噂が立つんだ?」
隆志「まあ、周りから見たら、お前が麗香に告白するのも、フラれるのも、あー、やっぱりって感じだからな。実は麗香にフラれたって噂はそこまで盛り上がってない」
颯真「なんだよ、そりゃ! さすがに俺の沽券にかかわる! 麗香に話を聞こう」
場面転換。
麗香「……なに?」
颯真「俺が麗香にフラれたって噂が立ってんだけど」
麗香「そうみたいね」
颯真「でも、俺は麗香にまだフラれてない」
麗香「そうね」
颯真「だから、みんなに誤解だって言って欲しい。俺は麗香にフラれてないって」
麗香「面倒だわ」
颯真「でも、嘘はどうかと思うんだけど」
麗香「はあ……。じゃあ、こういうのはどう? 今から、あなたが私に告白すればいいじゃない。そうすれば、嘘の噂は本当になるわ」
颯真「いや、そうだけどさ……。うーん。フラれるってわかってて、告白するのもなぁ」
麗香「じゃあ、嘘の噂が流れたままになるわね」
颯真「ううー。しゃーない。フラれるのは嫌だけど、嘘の噂が流れてる方がなんか気持ち悪いからな」
麗香「……」
颯真「麗香」
麗香「……」
颯真「好きです、付き合ってください!」
麗香「いいわよ」
颯真「わかってたけど、やっぱりフラれるのは……って、え? 今、なんて言った?」
麗香「だから、いいわよって」
颯真「……あ、いや、あの……」
麗香「あら、ちょっと待って。噂だと、あなたが私にフラれたってなってるのよね。これだと嘘の噂になるわ」
颯真「あ、ああ……そうだな」
麗香「みんなに、あなたと私が付き合ってるって広めないとね」
颯真「え? あ、ちょっと待って」
麗香「なによ? 嘘の噂が流れてるのは嫌なんでしょ?」
颯真「そ、それはそうなんだけど……」
麗香「なら、本当のことを広めないと」
颯真「な、なにがどうなってるんだ?」
麗香「ふふ。今までたくさんの人をフッてきたけど、あなただけよ。私のことを本当に見てくれたのは」
颯真「……」
終わり。