【声劇台本】私のコンプレックス

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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
向坂 綾乃(さきさか あやの)
美沙(みさ)
その他

■台本

綾乃(N)「私には小さい頃からのコンプレックスがある。そして、このコンプレックスのせいで、割と不便な生活を強いられている」

綾乃が歩いていると後ろから美沙がやって来る。

美沙「おっはよー、綾乃。今日も寒いねー」

綾乃「おはよう。……寒いって言う割には、美沙って軽装備だよね」

美沙「なーに言ってんの。あたし達、花の女子高生よ。露出してナンボってもんでしょ。綾乃が重装備過ぎんのよ」

綾乃「そうかな? 私、寒いの苦手だからさ。これくらいじゃないと無理だよ」

美沙「むむ。そりゃー、綾乃は可愛いから、露出少なめでも、男達からガン見されるでしょーけど」

綾乃「なっ! ちょ、止めてよ、美沙」

美沙「せめてさー、この悪趣味な耳掛けくらいは外したら? 今どきいないよ? 高校生で耳掛けしてるの」

綾乃「無理。今は、特に無理!」

美沙「えー、なんで?」

綾乃「それより、何気に悪趣味って酷いよ。これ、お気に入りなんだけど」

美沙「うーん……。綾乃は可愛いのに、悪趣味なのが玉に瑕なのよね。……いや、返ってそこがギャップなのか?」

綾乃「だから、可愛いとか言うの止めてってば!」

美沙「その照れた顔も、かーわいー」

綾乃「本気で怒るよ?」

美沙「あはははは。それより、綾乃、随分と髪伸びたよね。年明ける前に切ったら?」

綾乃「うーん。どうしようかなー?」

美沙「ねえ、今回は思い切ってバッサリいってみたら? 綾乃ならショートも似合うと思うんだよね」

綾乃「ショート? いや、絶対無理!」

美沙「えー、なんで?」

綾乃「えっと、あー、ほら、今、冬でしょ? 短くしたら寒いから」

美沙「マフラーしてるんだからいいじゃん」

綾乃「よくない。切ったとしても、毛先を揃えるくらいかな」

美沙「ううー。綾乃の髪型が、呪われた日本人形のようにドンドン延びてくよー」

綾乃「もう、大げさなんだから」

美沙「そんなんだから、変な噂立つんだよー」

綾乃「……変な噂?」

場面転換。

教室内。

綾乃「……」

男子生徒1「あのー、向坂さん」

綾乃「え? あ、はい。なんでしょうか?」

男子生徒1「写真部なんですけど、一枚いいですか? 文芸集の表紙にしたくて」

綾乃「ええ? いや、なんで私なんか……。他の人にしてください」

男子生徒1「そんなこと言わないでくださいよ。向坂さんって、ミステリアスで校内でもかなり人気なんですよ」

綾乃「うう……。止めてください」

男子生徒1「お願いします。一枚だけ!」

綾乃「わ、わかりました。一枚だけ……ですよ。あと、できれば表紙は恥ずかしいので」

男子生徒1「では、この本を持ってください。読んでる感じで」

綾乃「こう……ですか?」

男子生徒1「そうそう。あ、それで、髪を耳にかける仕草でお願いできますか?」

綾乃「え? 耳に? だ、ダメです! 絶対!」

教室内がザワッとなる。

そこら中から、ささやき声の噂話が聞こえてくる。

男子生徒2「やっぱり、耳だ。耳に秘密があるんだよ」

男子生徒3「ああ。絶対に耳は露出しないもんな。

男子生徒2「冬は耳掛けして、夏はヘッドフォンだし、きっとなにかあるんだよ」

男子生徒4「もしかして、エルフ耳とか?」

男子生徒5「あー、何となく似合いそうだよな」

男子生徒6「向坂の耳、見てみてーな」

勢いよく立ち上がる綾乃。

綾乃「し、失礼します!」

ダダダと走り出す綾乃。

場面転換。

息を切らせて立ち止まる綾乃。

綾乃(N)「うう……。耳を隠してるのがバレたぁ。今までうまく隠してたと思ってたのに……」

美沙「あーやーのー」

綾乃「ひぃ! み、美沙?」

美沙「やっぱり、耳に何か秘密があるのね?」

綾乃「ないない。なんにもないよ?」

美沙「あーあ。ショック。綾乃とは親友だと思ってたのになぁ」

綾乃「え? 美沙とは親友だと思ってるよ」

美沙「それなら、教えてくれるよね? 耳の秘密」

綾乃「……いやー。その……大した秘密じゃないよ。きっと聞いたらガッカリすると思う」

美沙「そう言われると逆に聞きたくなるよ」

綾乃「うう……」

美沙「さあ、観念して見せなさい!」

バッと髪を跳ね除ける美沙。

綾乃「あっ!」

美沙「……んー? なによ。綺麗な耳じゃない。別におかしなところはないよ」

綾乃「いや、これは……その……」

美沙「ん? んんー?」

綾乃「あんまり見ないでー」

美沙「あー、ものすごい赤くなっていく」

綾乃「うう……。私、恥ずかしくなると、物凄く耳が赤くなるの。だから、恥ずかしくて言えなかったんだ」

美沙「そっか……。ごめん。でも、その赤くなった耳もすごい可愛いと思うけどな」

綾乃「止めてよ。うう……」

美沙「おお! さらに赤くなっていく」

綾乃「怒るよ、もう!」

美沙「ははは。ごめんごめん。でも、そういうことならわかった! このことは、私と綾乃だけの秘密にしておいてあげる。みんなには、私から上手く言っておくよ」

綾乃「ありがとう、美沙」

場面転換。

ひそひそと噂話が聞こえてくる。

男子生徒2「……ってことは、けも耳ってことか?」

男子生徒3「ああー、それはそれでそそられるな」

男子生徒4「……想像がつかないよな」

男子生徒5「返って、謎が深まったな」

綾乃「……ねえ、美沙」

美沙「なあに?」

綾乃「みんなにはなんて言ったの?」

美沙「ふっふーん。直接言わないで、ヒントって感じで伝えておいた」

綾乃「なんて言ったの?」

美沙「綾乃はうさ耳ですって」

綾乃「……え? なんで、うさ耳?」

美沙「へ? ウサギのように赤くなる耳を略してうさ耳」

綾乃「いや、それだと、長いイメージじゃない?」

美沙「へ?」

ひそひそと噂話が聞こえてくる。

男子生徒2「ウサギのように長い耳かー」

男子生徒3「見てみてー!」

男子生徒4「よし、こうなったら、みんな協力して、なんとしてでも耳を見てやろうぜ」

男子生徒5「よし! 乗った!」

綾乃「もう! 返って悪化したじゃない!」

美沙「あははは……。どんまいどんまい」

綾乃(N)「ううー……。みんなが期待のまなざしで見ている。これじゃ、赤くなるなんて地味なオチだなんて、言えないよー」

終わり。

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