■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
真人(まさと)
藍(あおい)
浩太(こうた)
その他
■台本
真人(N)「俺は幼稚園の頃は、親に夜の9時になったら、寝かせられていた。そして、ときどき、怖い夢を見て目が覚めた時は、まだ両親はリビングでテレビを見ていた時間だった」
場面転換。
真人が幼稚園の頃。
真人「……お母さん」
母親「真人、どうしたの?」
真人「怖い夢見た……」
母親「そっか。じゃあ、ソファーの上で横になってなさい。もうすぐお母さんたちも寝るから、そのとき、一緒に寝よ」
真人「うん……」
テレビの音。
女優「好きよ……。覚えていて欲しいの。迎えに来てね……」
真人「……」
母親「あっ! ダメダメ。これは真人には早いドラマよ。違うの見なさい」
母親がテレビのチャンネルを変える。
バラエティに代わる。
芸人「なんでやねーん!」
真人「あはははは」
場面転換。
真人が高校生になっている。
真人と藍が並んで歩いている。
真人「ふわあ……」
藍「……ほら、真人。シャキッとしなさい。危ないわよ」
真人「うう……眠い」
藍「昨日、寝るの遅かったの?」
真人「5時」
藍「は? 朝じゃない。何してたの?」
真人「ゲーム」
藍「……呆れた」
真人「いやあ、子供の頃さ。親に早く寝かされた反動か、高校になったら夜更かしする癖がついちまったんだよ」
藍「……一人暮らしだからって、生活が乱れ過ぎよ。ちゃんとしなきゃ」
真人「碧はホント、うるさいなぁ。俺の親かよ」
藍「親って失礼ね。せ、せめてほら……こ、恋人とか……」
真人「あっ!」
藍「なに? どうしたの?」
真人「あの顔……」
藍「……え? なに? 知り合い? あんたが、あんな可愛い子と?」
真人「いや……知らない」
藍「なんなのよ。……まさか、一目惚れ……とかじゃないでしょうね?」
真人「いや……そうじゃないんだけど……」
藍「じゃあ、なによ?」
真人「……わかんねえ」
藍「なによ、それ」
真人「んー。なんか、引っかかるんだよな」
藍「バカな事言ってないで、ほら、行くわよ。学校遅刻するでしょ」
真人「ああ……」
場面転換。
教室内。
真人「んー……」
浩太「真人、なに悩んでんだ? 珍しい」
真人「浩太はさ、会ったことないはずなのに、会ったことがあるような感覚ってしたことあるか?」
浩太「は? ……なに? デジャブってやつか?」
真人「デジャブ?」
浩太「そういうの、デジャブっていうんだよ。例えば、会話していて、この会話」
真人「ふーん……。それって、何が原因なんだ?」
浩太「さあ? 夢とかなんじゃないのか? あとは……前世の記憶とか?」
真人「なんだよ、その胡散臭い理由は」
浩太「俺に言うなよ」
真人「うーん。夢……夢かぁ。違う気がするんだよなぁ……。あの顔は絶対、どこかで見たはずなんだよ……」
場面転換。
真人の夢。
女の子「……迎えに来てね」
ガバッと起き上がる真人。
朝。スズメの鳴き声。
真人「……思い出した!」
場面転換。
真人と藍が並んで歩く。
藍「――でさ」
真人が立ち止まる。
藍「どうしたの?」
真人「すまん。先に行っててくれ」
藍「なんで?」
真人「昨日の女の子に用がある」
藍「……なに? あの子が通るのを待つの?」
真人「ああ」
藍「声を掛ける気? 止めなよ。絶対相手にされないから。下手したら、訴えられちゃうよ」
真人「そんなんじゃねえ。思い出したんだよ。あの子に会ったときのこと」
藍「はあ? 会った? まっさかー」
真人「いや、本当だよ。かなり昔だけど、約束したんだ」
藍「約束?」
真人「迎えに行くって」
藍「……あんたの妄想もそこまで行くと、笑えるわね。あり得ないわよ。だって、あの子って、あの有名な人の娘……」
真人「あっ! 来た!」
藍「ちょ、待ちなさいよ!」
真人が走り出す。
真人「あの!」
少女「はい?」
真人「遅くなってごめん。迎えに来たよ」
少女「……は?」
真人「やっと思い出したんだ。俺のこと好きって言ってくれたこと、迎えに来て欲しいって約束したこと」
少女「……警察呼びますよ」
真人「へ?」
藍が走って来る。
藍「すいません! すいません! この人、妄想癖があって!」
少女「……迷惑なので、もう話しかけないでください」
真人「ちょっと待って! 思い出してくれって!」
少女「……」
少女が歩き出す。
真人「待って……」
藍「いい加減にしなさい!」
パンと頬を叩かれる真人。
真人「……」
藍「落ち着いた?」
真人「ホントなんだ……。ホントに」
藍「……」
場面転換。
真人「……っというわけなんだ。これは夢なんかじゃない! 顔もハッキリ覚えてる! 絶対にあの子なんだ!」
藍「……なるほどね」
真人「信じてくれるか?」
藍「それ、テレビの中の話じゃない?」
真人「は?」
藍「あの子、ひと昔にブレイクした女優の娘さんなのよ」
真人「……へ?」
藍「かなり、母親にそっくりみたいよ、あの子」
真人「で、でも……」
藍「大体さー。真人が幼稚園ってことは、あの子だって、幼稚園くらいだったでしょ」
真人「……あ」
藍「よかったわね。通報されなくて」
真人「……恥ずかしい」
終わり。