■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、童話、コメディ
■キャスト
白雪(しらゆき)
継母(ままはは)
その他
■台本
白雪(N)「あたしの名前は白雪。これでも、ちょっとした大きさの国の姫をやっている。毎日が平和で、ちょっと物足りない気がするけど、あたしは今の生活に不満もないし、このままでいいと思ってる。けど、うちの継母がちょっと……まあ、アレで、困ってる」
継母「鏡よ鏡。この世で一番美しい姫は誰かしら?」
鏡「え? あ、は、はい。白雪姫です」
継母「……」
鏡「……」
継母「だよねー! やっぱりそうよねー。きゃー、白雪! 可愛い! 可愛いわ!」
白雪(N)「……いや、可愛がってくれることは嬉しい。そりゃちょっとウザいけどさ」
継母「それより、鏡。女の幸せと言えば何?」
鏡「あ、はい。えっと、結婚でしょうか?」
継母「その通りよ!」
白雪(N)「時代や価値観によっては危ない発言だけど、まあ、この世界ではそういうことってことで許して欲しい」
継母「ってことで、今日もたくさん、縁談の話を持ってきたわ! さっそく白雪に見て貰わなくっちゃ」
白雪「……はあ」
ガチャリとドアを開ける白雪。
白雪「母さん……」
継母「あら、白雪。ちょうどいいわ。今……」
白雪「言ったでしょ。当分、嫁には行かないって」
母親「そんなこと言わないで見て見て! これ! いい人たちでしょ? みんな大国の王子様よ」
白雪がぺらぺらと紙を見る。
白雪「あー。この王子は良い人だけど年上しか興味ないみたいだし、この王子は見てくれだけのクソ野郎だし、この王子に至ってはまだ5歳じゃない」
継母「ええー。またダメなの? 私は白雪のためを思って言ってるのに」
白雪「母さんの気持ちはわかってるよ。だけど、父さんが亡くなってから6年。まだ隣国との関係を見たら安定はしてない。そんな状況で嫁になんかに行けないって」
継母「あらあらあら。白雪は可愛いだけじゃなくて、なんて情が深いのかしら! 最高の女性だわ」
白雪「……それより、母さんはどうなの? まだ若いんだし、再婚を考えたら?」
継母「私のことはいいの。まずは白雪の幸せよ!」
白雪「……」
白雪(N)「と、まあ、いい人なんだけどね。ちょっとあたしを可愛がり過ぎというか、なんというか。でも、あたしは母さんに幸せになってもらいたい……」
場面転換。
こぽこぽと怪しい薬品が煮えたぎる音。
継母「できた! ついにできたわ! 魔法のリンゴ!」
鏡「おめでとうございます」
継母「これを食べて気を失ってから、目覚めて最初に見た人の言うことをなんでも一つ聞くっていう魔法が込められたリンゴ。これを白雪に食べさせて、結婚しなさいって言うのよ!」
白雪(N)「な、なんつー、恐ろしいもんを作ってるんだ、母さんは。しゃーない。あとで普通のリンゴと入れ替えておこう」
継母「ふふふふ。あとは相手側の国に裏工作しなくっちゃ。嫁いでから白雪が不幸にならないようにしないといけないわ。皇子の弱みを握って……」
鏡「そ、そこまでして大丈夫なんでしょうか?」
継母「おだまり! 私は白雪のためなら、鬼にも悪魔にもなるわ! 今回ばかりは本気よ!」
白雪(N)「……はあ。仕方ないなぁ」
場面転換。
鏡「そ、そんな……。やっぱり結婚を受け入れた方がよろしいかと」
白雪「あたしはまだ結婚したくないの。だからいい? 母さんがいないときに城に賊が入って、あたしは連れ去らわれた。いいわね?」
鏡「で、ですが、そんなこというと地の果てまで賊を追い続けるかと思うのですが」
白雪「だから、途中で暴れて殺されたってことにしておいて」
鏡「……悲しまれると思いますよ? 母君」
白雪「……いいの。あたしがいないほうが母さんは幸せになれるわ。もっと、自分のことを考えてもらわなくっちゃ」
鏡「白雪様……」
白雪「それじゃ、鏡、元気でね」
鏡「ですが、白雪姫。行くところはあるんですか?」
白雪「まあ、アテがあるっちゃあるかな……」
場面転換。
白雪「ってことで、今日から世話になるからよろしく、小人たち」
小人1「いや、よろしくって言われましても」
小人2「食べ物とかどうするつもりで?」
白雪「自分の食べるものくらい、自分で何とかするわよ」
小人1「ベッドがデカいの一つしかないんですが……」
白雪「そっか……この家の大きさならもう一個置くわけにもいかないしね」
小人2「だから帰っていただくしか……」
白雪「あんたたち、7人は床で寝なさい」
小人1「理不尽……」
白雪(N)「こうして、小人たちの家で匿ってもらってから3ヶ月が過ぎた。母さんからの追っ手とかは来てない。……死んだことを信じてもらえたのだろうか。そんな風に油断していた時だった」
コンコンとドアがノックされる。
白雪「はいはい」
ドアを開ける白雪。
継母「こんにちは魔女です。あらあら素敵なお嬢さんね」
白雪「なっ! 母……」
継母「魔女ですよ」
白雪「あ、そ、そう。はいはい。魔女さんね。うちになんのよう?」
継母「リンゴ、いかがかしら?」
白雪「……遠慮しとき」
継母「リンゴ、いかがしかしら?」
白雪「あー……、はい。もらいます。今、お金持って来ますね」
一旦ドアを閉める白雪。
白雪(N)「まさか、母さんが直接くるなんてなー。それに、あれって、あのリンゴだよね?」
歩いて、戸棚をガサガサと漁る白雪。
そして、ガチャと再び、ドアを開く。
白雪「カゴのを全部もらうわ。ありがとう」
継母「ダメよ! 味見してからじゃないと。ほら、これ、食べてみて!」
白雪「……いや、それは……」
継母「ほらほら! 食べて食べて!」
白雪「……はあ。はいはい」
シャリと食べる白雪。
白雪「あ、美味しい」
シャリシャリと食べ続ける白雪。
継母「あれ? なんともない?」
白雪「なにが?」
継母「いや、別に……」
白雪「本当に美味しいわよ。ほら、魔女さんもおひとつどうぞ」
継母「あ、う、うん……」
継母がシャリとリンゴを食べる。
継母「うっ!」
ドサリと倒れる継母。
白雪「ふう。入れ替えておいてよかった」
場面転換。
小人1「……で、なぜ、母君をあんな道の脇に放置してるんですか?」
白雪「もうすぐ、あの王子がここを通るのよ」
小人1「あの王子?」
馬が歩く音。
王子「こ、これは……なんと美しい!」
馬を止める王子。
王子「起きてください! 美しい姫君よ」
継母「う、うーん……。あれ? ここは?」
王子「姫よ! 私と結婚してください!」
継母「え? あ……はい」
小人1「えーっと……どういう展開なんですか、これ?」
白雪「凄い効き目ね、あのリンゴ……」
白雪(N)「こうして、母さんは王子と結婚して、あたしは王女として、国に戻りましたとさ、めでたしめでたし」