■概要
人数:2人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
渚沙(なぎさ)
透真(とうま)
■台本
渚沙(N)「私はいつも優柔不断で、なにも自分で決めることができなかった。そんな私に、周りはイライラするみたいで、私はいつも孤独だった。一人でいれば、誰かをイラつかせずに済む。優柔不断を治そうと思ったこともあったが、どうやっても治らなかった。だから、私はこの先もずっと一人でいることになる、そう思っていた」
透真「渚沙は俺の言伝(ことづて)だけを聞いていればいいんだ」
渚沙(N)「孤独の中、手を差し伸べてくれたのが、透真くんだった」
透真「俺だって、間違うことはあるさ。けど、間違えて、渚沙に何か災難が迫ったとしたら、絶対に俺が守ってやる。だから、俺を信じろ。俺だけを見ろ。それ以外は悠純不断でいい。俺が全部決めてやる」
渚沙(N)「嬉しかった。こんな優柔不断な私でもいいって言ってくれたこと。優柔不断のままでいいって言ってくれたこと。そして……私を愛してくれたこと」
透真「ははっ! ぜーんぶ、俺に任せておけって。絶対に渚沙を幸せにしてみせるからさ。俺の言伝(ことづて)だけを信じろ」
渚沙(N)「周りは私と透真くんの関係を、歪だと見ていた。私の優柔不断を逆手にとっているとか、私が透真くんに依存し過ぎてるとか、透真くんが私にDVをしてるんじゃないかとか。でも、周りの声なんてどうだっていい。どう思われても構わない。私は透真くんだけを見る。これだけは私の優柔不断じゃないところだ」
透真「思ったことは全部言えよ。迷っていることとか、これがしたいとか、そういうの、全部だ。渚沙は決めなくていい。俺が全部決める。だけど、お前の気持ちは言ってくれ。その気持ちを大事にして、俺も決めていくからさ」
渚沙(N)「周りから見たら、透真くんは強引に見えるだろう。だけど、それは違う。ちゃんと私を見て、私のことを考えてくれている。だから、私は安心して、透真くんに全てを任せることができる。透真くんが決めたことに素直についていける」
透真「俺は、迷ったときは渚沙が笑顔になってくれる方はどれかって考えるんだ。だから、結構、決めやすいんだよ。周りはさ、そんなに即決して大丈夫かって言うんだけど、渚沙が笑顔になってくれるなら、それが正解だからな。だから、断言できるんだ。こっちが正解って」
渚沙(N)「私はこの先も、ずっと透真くんが決めてくれた言伝(ことづて)を守っていく。……そう、信じていた。疑いもしなかった……」
透真「……渚沙。ごめん……。もう……ダメみたいだ……」
渚沙(N)「事故だった。交差点を渡る透真くんに、飲酒運転の車が突っ込んできた。医師たちは、即死しなかったこと自体が奇跡だと話していた」
透真「……渚沙。俺から、渚沙への……最後の……言伝(ことづて)だ。俺のことは忘れろ。……お前が……幸せになれると……思ったら……迷わずに……進め……」
渚沙(N)「それが、透真くんの最後の言葉だった。それを私に伝えるために、必死に生きてくれたのだと思う」
場面転換。
渚沙(N)「これから私は、自分でものごとを決めていかなければならない。もう、透真くんはいないのだから。優柔不断な私が悩みながらでも、進んで行かなければならない。……そんな私が最初に決めたこと。それは……透真くんを忘れること、透真くんからの最後の言伝(ことづて)を……守らないということだ」
終わり。