■概要
人数:5人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
勝則(かつのり)
拓也(たくや)
真奈美(まなみ)
その他
■台本
バンとミットにボールが入る。
審判「ストライク! バッタアウト! ゲームセット!」
勝則「よしっ!」
拓也「よっしゃー! 勝ったぞ勝則!」
勝則「やったな! 拓也!」
ワーッと歓声が響く。
場面転換。
バンとミットにボールが入る。
勝則「よし、いいぞ、拓也、その調子だ」
拓也「へへ!」
勝則「この調子なら、甲子園だって、ゆめじゃねえな」
拓也「だろ?」
女子生徒1「キャー! 拓也くーん!
女子生徒2「格好いい!」
拓也「へへ! よし、いくぞ、勝則!」
勝則「拓也、一回、深呼吸しろ。力抜け」
拓也「いくぞ!」
勝則「バカっ!」
シュッとボールを投げる音。
そして、勢いよくミットにボールが入る。
拓也「いよっしゃ!」
勝則「……」
場面転換。
勝則「……監督。明日の試合ですけど……学校から応援が来るんですよね?」
監督「ああ。もう準決勝だからな。今年は本気で、甲子園を狙えそうだ」
勝則「あの……学校からの応援を止めてもらうことってできませんか?」
監督「なぜだ?」
勝則「いや、その……拓也は、応援されると、調子が崩れそうで……」
監督「そうか?」
勝則「ええ。今日も、女子から応援があったときに……」
監督「俺も見ていたが、スピード出てたぞ。思いが乗って、力が増したんだろ」
勝則「監督……。思いなんか乗せても、力なんて増しませんよ」
監督「応援が力になることだってある。とにかく、明日は全校応援だ」
勝則「……」
場面転換。
真奈美「拓也君。私を甲子園に連れてってね」
拓也「おう! 任せとけ!」
勝則「お、おい! なにやってんだ!」
勝則が走って来る。
拓也「な、なんだよ? 人の恋路を邪魔するなよ」
真奈美「そ、そうよ」
勝則「おい、真奈美! もし、甲子園に行きたいなら、お前、明日は応援に来るな」
真奈美「えっ!」
拓也「何言ってんだよ!」
勝則「お前の為に言ってるんだよ」
拓也「はあ? それなら、来てくれた方がいいだろ。こういう応援っていうか、真奈美への思いが球に乗るんだ!」
勝則「いや、思いなんか乗せなくても、お前は十分凄い。っていうより、思いを乗せても力なんか増さないからな。幻想だ」
拓也「ふざけんな! 真奈美。気にするな。明日はお前の為に投げる! 見ててくれよな」
真奈美「うん」
勝則「はあ……」
場面転換。
野球場。
試合中で、賑わっている。
勝則「ここを乗り切れば、絶対にこっちに流れが来る。落ち着けよ」
拓也「はあ、はあ、はあ。分かってる」
勝則「いいか。肩の力を抜け。ピンチの時こそ、リラックスだ。いいな」
拓也「わかってる……」
勝則「よし……」
勝則たちがポジションに戻る。
審判「プレイ!」
勝則「リラックスだ……。いいな」
真奈美「拓也君、頑張って!」
拓也「……真奈美。よし!」
勝則「バカっ!」
拓也「いくぞ! うおおおお!」
シュッとボールを投げる音。
カキンと打たれる音。
審判「ホームラン!」
拓也「な、なんで……。思いを乗せた俺のボールが……」
勝則「……思いを乗せたら、力んで棒玉になるんだよな……。思いを乗せれば力が増すなんていうのは、幻想だよ……」
終わり。