■概要
人数:3人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
廻(めぐる)
三島(みしま)
三田(みた)
■台本
廻(N)「昔は周りに合わせるということが、日本人の在り方、なんてことが言われていたようだけど、今のご時世では多様化が認められつつある。つまり、個人の意見が尊重される時代になったということだ。これは喜ばしい事だと、俺は思っている。今の時代、他人の意見にも耳を傾け、認めることが大事じゃないだろうか」
ガラガラとドアが開いて、廻が教室に入って来る。
三島「だーかーら! それはあり得ないって!」
三田「いやいや、そっちの方がありえーねーから!」
廻「君たち、もう下校時刻は過ぎているぞ」
三島「あ、委員長! 聞いてくれよ、こいつ、マジ、あり得ねえ」
三田「いやいや、さっきから、あり得ないのはお前の方だって言ってんだろ」
廻「もめ事か? 意見の交換は推奨するが、対立は賛同できないな」
三島「あ、そうだ、委員長にどっちが合ってるか、聞いてみようぜ」
三田「ああ。いいぜ。委員長が決めてくれるなら、それで納得できるから」
廻「待て待て。今はなんでも多数決で決まるような時代じゃないんだ。それぞれの意見は尊重するべきだと思うぞ」
三島「いやー。なんつーかさ、こいつの言い分が少しでも理解できるなら俺もここまで言い争いはしないんだけど、あまりにもありえねーから」
三田「いやいや、お前の感覚がズレてるから。お前のそのズレた感覚を普通って考えるなよ!」
廻「わかったわかった。確かにこのままだとラチがあかないな。いいだろう。俺がそれぞれの意見を聞くとしよう」
三島「サンキュー、委員長。えっと、卵についてなんだけどさ」
廻「卵?」
三島「ああ、やっぱり目玉焼き……」
三田「おい! その言い方は卑怯だぞ!」
廻「ん? 目玉焼き? ……ああ、わかった。あれだな。目玉焼きに、かけるのは醤油かソースかってところか? ……いや、待てよ。それなら、言い争いにはならないな」
三島「いや、委員長?」
廻「何か、変わり種、ってことだな? うーん。まあ、他に聞くとなると、塩やマヨネーズ、なんていう意見も聞いたことがある」
三田「委員長? 一旦、落ち着かない?」
廻「とはいえ、そのくらいの変わり種でも、ここまでの言い争いにはならないだろうな。……ふむ。もっと変わったもの……。む? 味噌……か? 目玉焼きに味噌をつけるなんてことはあまり聞かないからな。……いや、待てよ。あり得ない、というほどだから、調味料ですらないのかもな」
三島「おーい、委員長―」
廻「例えばだ、卵かけご飯などでは、一緒に海苔で巻いて食べる、なんてこともあるらしいからな。……いやいや、待てよ。それだと、一周回って、普通か? ふーむ。む? バター? マスタード? この辺りも、そこまで突拍子もないということもなさそうだな」
三田「……」
廻「はっ! わかったぞ! 塩辛だ! 同じ和食であるなら、考えられそうだな。……確かに、目玉焼きに塩辛は変わっているかもしれない。だが、人の味覚というのは、千差万別だ。本人が納得して、かけているのなら、それでいいじゃないか。あー、そうだ。なんなら、試してみてはどうだ? やってみると意外と美味しい、なんてこともあるかもしれない。だから、こういうのは否定するのではなく、受け入れる方向で考えるのだよ。わかったかな?」
三田「あー、いや、そうじゃなくて、お弁当に入れるなら、どっちかって話」
廻「お弁当?」
三島「俺は目玉焼き」
三田「俺は生卵」
三島「いや、生卵はねーって」
三田「いやいや、目玉焼きの方がありえねーって、冷めたら美味しくないじゃん」
三島「はあ? そんなの生卵だって同じじゃん!」
三田「バカ言うなって! 冷や飯に生卵、美味いんだぞ!」
三島「はあああ?」
三田「はあああ?」
廻「……君たち、一ついいか?」
三島「ん?」
三田「なんだ?」
廻「弁当に入れる卵料理なら……卵焼き一択だろ」
三島「はあ?」
三田「いや、ねーって!」
廻「何を言ってるんだ! 卵焼き以外、あり得ないだろう!」
3人の口論が始まる。
終わり。