■概要
人数:5人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
翔(しょう)
茜(あかね)
その他(男3人)
■台本
翔と茜が6歳の頃。
翔が走って来る。
茜「ちょっと、やめてよ」
少年1「うへへ。うっせー」
翔「うおおお! 茜ちゃんをイジメるな」
茜「翔ちゃん!」
場面転換。
少年1「くそ、覚えてろよ」
茜「べーっだ! もう来ないでよね」
翔「うえーん」
茜「もう、なんで、助けに来た翔ちゃんの方が泣くのよ」
翔「うう……ごめん」
茜「あはは。でも、それが翔ちゃんっぽくていいよね」
翔(N)「茜ちゃんは、優しくて、強くて、僕と一緒にいてくれる。……茜ちゃんは僕の持ってないものをたくさんもってる。……茜ちゃんは、僕にとっての理想なんだ」
場面転換。
空手の練習している翔。
翔「はっ! はっ! はっ! あっ……」
バランスを崩して転ぶ、翔。
翔「いてて……」
茜「相変わらず、ダメダメだね、翔ちゃんは」
翔「うるさいなぁ……。これから強くなるんだから、放っておいてよ」
茜「翔ちゃんは運動神経がないんだから、格闘技とかは無理だよ」
翔「無理でもいいの」
茜「頑固なところも相変わらずだよね」
翔「……」
茜「それより、翔ちゃん、宿題やったの?」
翔「あっ……」
茜「あとで、見せてあげよっか?」
翔「ううん。自分でやる……」
翔(N)「毎日、僕は頑張ってるつもりだ。でも、茜ちゃんには全然かなわない。でも、僕はやめるつもりはない。だって、茜ちゃんは僕の理想だから。いつか、僕は茜ちゃんのようになるんだ」
場面転換。
少年1「よし、みんな、行くぞ。茜に仕返しだ」
少年2「3人もいれば、絶対に勝てるよね」
翔「待て!」
少年1「あん? なんだよ、翔。文句あるのか?」
翔「えっと……その……。たくさんで茜ちゃんに仕返しに行くなんて、卑怯だよ」
少年2「うっせーな」
少年3「お前で憂さ晴らししてもいいんだぞ」
翔「や、やってみろ! 僕が全員、やっつけてやる」
少年1「おもしれえ、やってみろ!」
翔「うわああああ!」
場面転換。
翔が殴られて、倒れる。
翔「うわあ!」
少年1「へっ! 弱いくせに粋がりやって」
翔「うう……」
茜が走って来る。
茜「おりゃああああ!」
少年1「げっ! 茜!」
茜「とりゃー!」
少年1「うげっ!」
茜が少年1を蹴り飛ばす。
茜「えりゃー!」
少年2「痛いっ!」
茜が少年2を殴る。
少年3「覚えてろよ!」
少年1「お、おい、待てって置いてくなよ」
少年2「待ってー」
少年たちが逃げていく。
茜「翔ちゃん、大丈夫?」
翔「ありがとう、茜ちゃん」
茜「もう、翔ちゃん、なんで、いつも無茶ばっかりするの? 翔ちゃんは弱いんだから、喧嘩なんかしちゃダメだよ」
翔「僕は……茜ちゃんみたくなりたいんだ」
茜「え?」
翔「茜ちゃんは僕の理想なんだ」
茜「ぷっ、あははははは」
翔「もう、なんで笑うのさ! 僕は本気なんだよ!」
茜「私の理想は翔ちゃんなんだよ」
翔「え?」
茜「ビックリした? 私は翔ちゃんみたくなりたくて、頑張ってるんだよ」
翔「嘘だよ! だって、僕、茜ちゃんよりすごい所なんてないもん」
茜「そんなことないよ。翔ちゃんは勝てないって思っても、私のためなら、立ち向かおうとするじゃない?」
翔「……」
茜「これって、すごいことだと思うよ。勝てないってわかってる相手に、立ち向かうなんて……」
翔「……そうかな?」
茜「そうだよ。やっぱり、気付いてなかったのか……」
翔「でも、僕はやっぱり、茜ちゃんのようになりたいな」
茜「ねえ、翔ちゃん。翔ちゃんは私にはなれないし、私は翔ちゃんにはなれないよ」
翔「……」
茜「私は私にしかなれないし、翔ちゃんは翔ちゃんにしかなれない」
翔「……」
茜「だから、誰かになろうとするんじゃなくて、昨日の自分より少しだけ強くなればいいのかもしれないね」
翔「昨日の自分よりも、か。……うん、それなら、僕らしく頑張れるかも」
茜「私も、私らしく頑張ることにするよ」
翔(N)「あれから僕は、他の人と比べんじゃなく、ずっと自分に立ち向かっている。僕の理想を目指して」
終わり。