■概要
人数:5人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、シリアス
■キャスト
アラン
セシリア
その他
■台本
剣がぶつかり合う音。
そして、剣が弾かれる音が響く。
アラン「あっ!」
セシリア「ふふふ。私の勝ちね、アラン」
アラン「くっ! もう一回! もう一回、勝負してよ」
セシリア「ダーメ。そろそろお城に戻らないと、怒られるわよ」
アラン「お願い、セシリア! もう一回だけ!」
セシリア「アランには剣の才能がないんだから、指揮する方で頑張ればいいじゃない。大体、皇子が剣を握って戦う事なんてないんだからさ」
アラン「僕は強くなりたいんだ! なにがあっても、みんなを守れるように! セシリアのことだって、守って見せるよ」
セシリア「うーん。私より弱いのに、私を守るって言われてもなぁ」
アラン「だから、セシリアよりも強くなるもん! だから、もう一回、勝負して!」
セシリア「はいはい……」
場面転換。
10年後。
剣で打ち合う音。
そして、剣が弾かれる音が響く。
アラン「くっ!」
教師「アラン様、今日の稽古はこのくらいにしておきましょう」
アラン「まだだ、まだまだやれるぞ」
教師「アラン様……。正直に申し上げて、あなたには剣の才能はございません。ですので、政(まつりごと)の方に力を振るってくださいませ。国王様もそれを望んでおります」
アラン「……」
教師「では、失礼いたします」
教師が去っていく。
アラン「……」
セシリア「ぷぷぷ。相変わらずね、アラン」
アラン「セシリア……」
セシリア「だから、言ってるでしょ。アランは戦いには向いてないんだからさ。それに私たちがいるんだから、強くなんてならなくたっていいじゃない」
アラン「……俺は、セシリアなんかに守ってもらわなくたって……」
セシリア「あらあら、言うじゃない。近衛兵で一番と言われる私に対して」
アラン「セシリア。君は本当にいいのか? その、女性なのに……」
セシリア「私はこの国の誰よりも強い。だから兵士をしているの。自然なことでしょ?」
アラン「そんなんじゃ、嫁の貰い手がなくなるぞ」
セシリア「大きなお世話ですー。別に、結婚する気ないし。ずーっと、アランを守ってあげるわよ。幼馴染としてね」
アラン「……」
セシリア「ま、いざとなったら、アランが貰ってよ」
アラン「なっ!」
セシリア「なーんてね。そもそも、身分が違うんだからさ。それより、あんたこそ、早くどこかの綺麗どころのお姫様、貰いなよ。いい年なんだからさ」
アラン「……今は諸国の情勢が不安定だからな。うかつには動けないよ」
セシリア「王子も王子で大変ね」
場面転換。
城が攻められている。
アラン「セシリア!」
セシリア「アラン! なにしてるの! 敵はもうそこまで来てるのよ! もう、城はもたないわ! 早く脱出して!」
アラン「セシリア、君も一緒に!」
セシリア「ここで敵を食い止めなきゃ!」
アラン「ダメだ! 一緒に来い!」
セシリア「アラン……」
アラン「言っただろ。ずっと俺を守ってくれるって……。だから、来い」
兵士1「アラン様! 城壁が破られました。時期にここに敵が流れ込んできます」
セシリア「……ごめん。その約束、守れない」
セシリアが走って行く。
アラン「セシリア! セシリア!」
場面転換。
アランと兵士が歩いている。
兵士1「アラン様。お気を付けください。この崖を越えれば、村に辿り着けます」
アラン「……ああ」
ゴーン「ふふふふ。アラン。ようやく見つけたぞ。王の命令だ。お前の首を貰うぞ」
兵士1「アラン様、お逃げください! うおおお!」
兵士1が剣を抜いて、ゴーンに斬りかかる。
ゴーン「邪魔だ!」
兵士1「ぐあっ!」
ゴーンに斬られる兵士1。
ゴーン「さあ、アラン。素直に首を差し出せ」
アラン「条件がある。俺の首の代わりに、城の者達を見逃せ」
ゴーン「却下だ。王には全滅させろと言われている。今後の遺恨を残さんようにな」
アラン「なら、ここから飛び降りるぞ」
ゴーン「好きにしろ。別に首がなくても、死んだとわかればいい」
アラン「……」
ゴーン「ま、斬られるか、ここから落ちて死ぬか、好きな方を選べ」
アラン「……一思いに斬ってくれ」
ゴーン「潔し!」
セシリア「待ちなさい!」
ゴーン「ん?」
アラン「……セシリア? その恰好は?」
ゴーン「ほう。これはこれは。美しい姫がいるなどとは聞いていないがな。侍女か、何かか? 実に美しい。どうだ? 俺の元に来ないか? 城にいれば、死ぬだけだ」
セシリア「条件があるわ。……アランを見逃して」
ゴーン「……断ったら?」
セシリア「ここから飛び降りる」
ゴーン「ふむ。まあ、いい。王にはアランが崖から落ちて死んだと報告しよう」
アラン「ダメだ、セシリア!」
セシリア「……言ったでしょ。守るって」
ゴーン「さあ、こちらへ来い」
セシリア「ええ……」
アラン「うあああああ!」
アランが剣を抜き、ゴーンに斬りかかる。
セシリア「アラン!」
ゴーン「くっ!」
ゴーンがアランを斬る。
アラン「あぐ……」
セシリア「アラン!」
ゴーン「ちっ! 思わず斬っちまった」
アラン「うう……」
よろけたアランが、崖から足を踏み外す。
セシリア「アラン! 危ない」
アラン「う、うわああ!」
アランが落ちていく。
ゴーン「ふん、勝手に落ちていきやがった」
セシリア「アラン! アランー」
セシリアが崖に自ら飛び込んでいく。
ゴーン「あ、くそ! ……後を追いやがったか。仕方ない。上玉だったが諦めるか。……城内のせん滅を進める。ついて来い」
兵士たちの足音が響く。
場面転換。
アランとセシリアが川へ勢いよく落ちる音。
場面転換。
アランとセシリアが歩いている。
セシリア「……アラン、もう少しよ。頑張って」
アラン「ああ……」
セシリア「たく、無茶ばっかりして」
アラン「約束、守ってもらわないとな」
セシリア「え?」
アラン「守ってくれるんだろ? 俺を」
セシリア「うん。だから、死ぬんじゃないわよ」
アラン「……貰ってやるよ」
セシリア「え?」
アラン「約束守ってくれるなら……。セシリアを貰ってやる」
セシリア「いや、だから身分が……」
アラン「はは。もう、王族でもなんでもないさ」
セシリア「……そう、だったね」
アラン「それでもいいのか? それでも……守ってくれるか? 王族でもない俺を」
セシリア「もちろんよ。幼馴染として約束したんだから」
アラン「……ありがとう」
終わり。